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2019年10月7日

2019年7月号

注目の企業に学ぶ

株式会社オリマツ

目利きの“目”と御用聞きの“耳”を持つ、お客さまの“ブレーン”でありたい。

港ヨコハマの食文化を「包み・飾り・運ぶ」ための資材を扱い、創業から百十余年。
株式会社オリマツは食品業界の最前線へ、常に“高鮮度な商品と情報”を届けてきた企業です。
折箱(*)の製造を原点に、卸売、物流、販促支援やコンサルティングと、時代の要請とともに事業の枠組みを変化させ、老舗の看板を守り続けてきた平野孝夫社長にお話を伺いました。
聞き手:伊勢陽子(大同生命保険株式会社 新横浜支社)

*主に食品の簡易容器や化粧箱として用いられる木箱。その起源は西暦600年頃まで遡るといわれる。現在は紙製や発泡スチロール製、プラスチック製なども含めた箱製品の総称として使用されている。

“お客さまのため”を常に考え、動き、提案する。

当社の起こりは、明治40年に初代がはじめた折箱の製造業。創業の地は現在の本社所在地ですが、横浜市中央卸売市場の開設時(昭和6年)から場外に店舗を構え、市場に出入りされる業者の方々にご利用いただいておりました。戦時中、横浜大空襲で一度は店を失うのですが、昭和23年に先代である父が跡を継いで再興しました。ちょうど私が生まれた年のことです。当時は、まだ木製の折箱が主流でした。市場に食材を仕入れに来た地域の魚屋さんやお肉屋さん、八百屋さん、料理屋さんが、それを入れる容器や包材を求めて来店してくださる。仕出しのお弁当や結婚披露宴の料理にも折箱は当たり前でした。

しかし次第に大量生産・大量消費の波が起こり、食品の包装資材は木や紙から、プラスチックやフィルムの時代に変わっていきました。そこで当社は、お客さまの多様な要望に応えるためにはじめていた卸売業を拡大し、徐々に取扱品目を増やしていったのです。

それでも私が入社した70年代は、製造と卸売は両輪の関係でした。軸足が完全に卸売業にシフトした理由も、お客さまの声によるものです。当時は高度経済成長期の真っ只中。店舗を核とした、言うなれば“待ちの営業”だけで手一杯なほどだったのですが、忙しいのはお客さまも同様です。「買いに行けないから配達してほしい」「包装材と一緒に○○も用意できないか」といった声に一つ一つ応えていくために、はっきりと軸足を定めました。以降、食品包装資材や器に限らず、調理器具や衛生用品、業務用洗剤などの各種消耗品、スタッフのユニフォームや店頭のノボリなど、食に携わる人が必要とされるであろう、ありとあらゆるものを取り揃え、現在のアイテム数は6千以上、品番で数えれば10万を超えるのではないでしょうか。

卸売業は“目利き業”ですが、ものを見る“目”と同時に、傾聴する“耳”を持たなければいけません。器一つであっても、お客さまのニーズは様々です。どのような機能を必要としているのか。どのような付加価値を求めているのか。そこにある想いに寄り添い、相応しい器を探し出し、なければ作り出し、提案する。ですから、ある意味では「こうでなければならない」という“こだわり”より、「こうもできるのではないか」という“こだわらないこと”が重要な仕事であるように思います。

時代は常に動いています。消費者の志向も、販売形態や流通の仕組みも、多様化の波も、どんどん変化の速度を増しています。当社も包装資材の卸問屋から専門商社へ、さらには“御用聞き”の性格を有した物流企業へと変容しようとしています。「かつての当社はこうだった」「私の時代はこうだった」と固執していたら、とてもではありませんがお客さまのお役に立つことはできないのです。

もう十年以上、週に一度、通常の会議とは別に常務とみっちり話し合う時間を設けています。その場で、私は一つ一つの事柄に対して「こう考えている」とは伝えますが、「こうしなさい」とは言わないようにしています。そこから何を生み出し、どう昇華していくのか。それは次世代の人材が担う使命だと思いますし、それが私の楽しみでもあるのです。(平野社長談)

横浜中央市場通り商店街の入り口に位置するオリマツ中央市場店。来店客は食関連のプロが中心だが地元の人々も“コンビニ感覚”で利用。エンドユーザーの声も吸い上げるアンテナショップとしても機能している。

我々が目指すのは、独自の価値を提供できるコンサルティング集団です

今、私どもが痛感しているのは「卸売という業態が転換期にある」ということです。そこには当然ながら、インターネット販売がBtoCからBtoB取引にまで浸透したことも大きく影響しています。全く同じ商品であれば、商品単価を比較して、お客さまが個別に注文することもできます。商談の席で「ネットなら幾らで買える」と、交渉される方もいらっしゃいます。はっきり言えば、そこで価格競争に踏み込めないケースもあります。では、我々の役割をどうご理解いただき、どこに価値を見いだしていただくのか。一言で表せば「私どもの“目利き”は、商品価格以上の価値があります。どうぞ存分にお役立てください」ということに尽きます。

購入商品が決まっていてカタログで選ぶだけなら、どこで買っても同じでしょう。一般のご家庭用であれば、それで満足されるかもしれません。しかし、当社のお客さまは“食のプロ”の方々です。食品をどう包装すれば、売り上げに結びつくか。料理をどのような器に盛り付ければ、より美味しく感じられるか。そして、今以上に安全面に配慮した商品はないか。そのような課題に、日々頭を悩ませておられるはずです。食のトレンドの問題もあります。色や形状、大きさや素材の違い、例えば惣菜用の容器に限っても、毎年何千もの商品が新旧入れ替わっています。それらの動きを把握し、星の数ほどある資材の中から最適な商品をご提案するのが我々の役目です。

もっともこれは同業の皆さま、どなたもおっしゃることかと思います。我々の“目利き力”を実感していただくためにも、まずは「オリマツを利用してみよう」と検討していただかなければいけません。そこで、お客さまの目や足の代わりをするだけでなく、ブレーンとなって機能するコンサルティング集団を目指して様々な取り組みに着手してきました。私どもが蓄積してきた食ビジネスの知識と知恵、日夜新陳代謝を繰り返している新しい情報を提供し、お客さまに役立てていただく。具体的にはオリジナル商品の開発や売り場づくり、販促ツールや衛生管理マニュアルの作成、ブランディングの手法まで相談できる“御用聞き”となるのです。

また、当社をお客さまの“倉庫”として利用していただき、必要なものを必要なときに、必要な分だけお届けする「小ロットアソート(少量多品種の組み合わせ)配達」も、現在力を入れていることの一つです。個人経営の飲食店であればデリバリーサービスをはじめやすくなりますし、全国展開するチェーン店では、一括購入した資材を店舗ごとに仕分けて全国各地へ発送する手間を省けます。人的・時間的コストも含めたトータルコストで計算すれば、仕入れ値以上の価値が間違いなくあるはずです。

卸売業が転換期にあるからといって、全く別物として生まれ変わる必要はないのだと思います。お客さまの声とともに“変形”を繰り返していけば、自ずと答えは見つかるのではないでしょうか。そもそも正解は一つではないのですから。(落合常務談)

photo:Nobuhiro Miyoshi

企業DATA

株式会社オリマツ

本社
神奈川県横浜市神奈川区青木町10-2
代表取締役
平野孝夫
常務取締役
落合俊介
創業
1907年(明治40年)
事業内容
食品包装資材の企画・提案、販促ツールの企画・制作等
Webサイト
https://orimatsu.co.jp


代表取締役 平野孝夫 Takao Hirano

1948年、横浜市生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、株式会社オリマツへ入社。店舗運営と経理部門を中心に様々な業務を経験する。’78年、先代である父の急逝により、29歳で代表取締役に就任。ベテラン社員のサポートを得ながら、折箱の製造部門と包装資材の卸売部門に従事する約80人の社員を守るために奔走する。以降、顧客や時代の要請に応じて業態を変化させ、百年企業を守り抜いている。


常務取締役 落合俊介 Shunsuke Ochiai

1974年、横浜市生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、ハウスメーカーへ入社。営業職に4年間従事したのち、独立。ITを活用した新しいビジネスモデルの構築を目指して起業するも道半ばで断念し、約4年で会社を解散する。’04年、株式会社オリマツへ入社。キャリアを活かし、自社サイトの再構築から営業、顧客の販促支援、新業態の運営まで幅広く担当。’11年、実績が認められ現職に就任する。

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