相談される存在であり続けるために、難題にも全力で挑み続けていきたい。

one hour | 2019年10月号 有限会社ピースリー 2019年12月18日

有限会社ピースリーは、自動車部品、コネクター(電線等の接続部品)やスイッチ、計器や半導体部品など、様々な形状の金属に繊細で確実なめっき加工を施す技術者集団です。
大手メーカーが製造拠点を海外に移転するなど、中小製造業にとって厳しいとされる時代に、技術力を裏付けとした“相談力”で道を切り拓く岩附(いわつき)弘二社長にお話を伺いました。
聞き手:小杉明美(大同生命保険株式会社 東京支社 品川営業部)

あらゆる相談を受けられる技術力が最大の強みです。

当社は各種部品の金属表面処理、めっき加工を行なう会社です。自動車や電子機器など、多岐にわたる分野の部品メーカーさまから、金銀銅、ロジュウム、ニッケル、クロームなど、様々なめっき加工のご相談をいただいています。特徴としてまず挙げられるのは、微細な部品をまとめて処理する「バレルめっき」と、一つ一つの部品を冶具(ルビ:じぐ)(部品を固定する作業工具)に掛けて処理する「引掛けめっき」の両方を行なっていること。そして、そのどちらの方法においても“確実性”に自信があるということです。

現在、どのような分野であれ、部品一つたりともぞんざいに扱われることはありません。大量消費を前提として過剰に製造されることはなく、当社で表面加工をする際も、部品メーカーさまがクライアントに納める数量ぴったりで依頼されることも多々あります。つまり、めっき加工の工程で変形や紛失などで一つでも数が揃わなくなると、次工程に進めなくなる可能性が生じてしまうのです。そのため、お預かりした製品を「確実に処理し、確実に納品する」ということは非常に重要です。持つとき、指先に少し力を加えただけで変形してしまう繊細な部品もありますから、現実問題としてその“当たり前のこと”を当たり前にこなすことは、決して容易ではないのです。

日本には多くのめっき加工業者が存在し、それぞれに得手不得手があります。めっき加工する製品の素材、大きさ、ロットによっても、どのような表面処理を施すかによっても、各社に個性があります。当社の場合は、工場の規模としてはそれほど大きくないので、大量生産品や巨大な部品の加工よりも、比較的少量で微細な部品の加工を得意としています。そして試作品のご依頼も数多くいただいていることは、当社の「一つ一つの部品を確実に扱う」という価値をお客さまに認めていただけているからだと思います。

もともと私どもは、めっきをはじめとする表面処理加工の技術力を最大の強みとしてきました。技術的な課題に対する相談事がお客さまから持ち込まれ、それらを解決することで地道な成長を遂げてきました。近年であれば、環境に配慮した製造方法の相談が増えています。特にヨーロッパ向けの輸出製品が顕著なのですが、年々厳しくなっていく基準や規制にどのように対処していくか。例えば従来のハンダ付けでは、めっきの被膜に鉛と錫(ルビ:すず)が用いられていたのですが、鉛の含有量の規制は厳しく、輸出できない可能性があります。このように、使用する金属や薬品の種類はもちろん、製造過程で生じる水処理など、あらゆる場面で環境対策が前提となっています。ものづくりにおける“品質”とは、性能や性質、正確性などといった物質的な良し悪しに加え、環境に低負荷であることが必須の時代になったのだと思います。

めっきの可能性を追求し、技術をより広く役立てたい。

めっき加工の目的は、大きく三つの役割に分けられます。色調や光沢、模様などの美観を整える「装飾性」と、腐食やサビを防ぐ「耐食性」、様々な特性を付加する「機能性」です。当社が得意とし、多くのお客さまからご相談いただくのは、主にこのうちの機能性に当たる処理になります。導電性や磁性、耐摩擦性、接着性など、求められる特性は実に多様で、当然それら複数の要素の掛け合わせもあります。「部品の表面を黒くする」という目的だけでも、驚くほど色々な方法があります。おそらく、一般の方々が想像するよりはるかに多くの「めっきの価値」や「めっき加工することによる付加価値」があり、30年以上この仕事一筋でやってきた私自身、まだまだ「めっきの全容を掴んだ」とは言い切れません。

それほど大きな可能性を秘めた産業であるにもかかわらず、自動化できない“職人技”が業界全体で見ても失われつつあります。ものづくりに携わる方であれば皆さんお分かりいただけると思うのですが、どのような状況や異変にも対応できる“応用力”を身につけるまでには、絶対的に“基礎力”が不可欠です。そして、失敗と成功の繰り返しからしか学べない“経験値”を得るための歳月が必要です。その地味で地道な道のりを、ものづくりの裏方としての誇りを持ち、乗り越え、歩んでくれる人材をどう育てられるか。そして“組織”として、どこまで強くなれるか…。それが、今の私どもの最も大きな課題です。

先代の社長は、常々「技術があれば仕事はついてくる」と言っていました。私が受け継いだ今も、当社の基盤にあるものが、先代の築いてきた“技術力”であることは揺るぎません。実際、これまでは特に営業的な活動をすることもなく、口コミで広がったお客さまとの取引だけで、経営的にはなんとか成り立ってきました。しかしこれからは、もっと攻めの姿勢を打ち出していかなければと考えています。私の中では営業というより“発信”という感覚に近いのですが、ピースリーという“相談役”の存在を知っていただくことが第一歩になるのだと思います。

それは、めっき加工に限定したことではありません。めっきの加工工程には、随所に他用途でも応用可能な技術が存在します。金属を“洗う”という技術も特殊ですし、製品の寸法をめっきで微調整することもできます。まだ模索中で具体的なことは言えませんが、私たちの技術力は、より広く、より多くのお客さまのお役に立てるはずだと確信しているのです。

また、自分たちの技術を発展させ、縦横に展開していくことは、従業員のやりがいにもつながるのではないでしょうか。やはり、仕事に対して夢を持てるかどうかは、若手人材の成長過程に大きな影響を及ぼすと思うのです。それに、どんなに偉そうなことを言ってみたところで、仕事を増やさなければ、仮に志を抱いた人に出会ったとしても雇うこともできませんから(笑)。

今、我々の業界も、試作までは国内でも、生産の段階で海外に流れていく仕事が多くあります。そのような状況下でも、当社の強みを最大限に発揮できれば、充分に生き残るすべはあるように思います。同業の他社さまで解決できなかった難題にも、積極的に取り組んでいくこと。めっき加工技術の可能性をものづくりの付加価値として提案していくこと。どのような相談事にも応えられるように、学びと研鑽の姿勢を忘れないこと。小さな会社ですから一歩一歩しか動けませんが、小さな会社だからこそできる挑戦もあるのだと思います。

photo:Yutaka Iwata

企業DATA

有限会社ピースリー

本社工場
東京都品川区広町1-3-27
代表取締役
岩附弘二
設立
2001年(平成13年)
事業内容
金属表面処理加工業務等
Webサイト
http://p3-plating.jp


代表取締役 岩附弘二 Koji Iwatsuki

1963年、東京都生まれ。関東学院大学経済学部に在学中から東京・大田区のめっき加工会社でアルバイトを始める。卒業後、同社に入社。昼間は電子部品のめっき加工を中心に職人として腕を磨き、勤務後は東京都鍍金(めっき)工業組合の高等職業訓練校でめっきの基礎を学ぶ。入社から約8年後、同社が倒産。当時、工場長だった鈴木周氏とともに、同じ大田区のめっき加工会社へ。2004年、’01年に鈴木氏が設立していた有限会社ピースリーに入社し、現場の最前線を任される。’10年、工場用物件を品川区(現在地)に購入。各種めっき加工設備、公害対策設備等を完備し、’11年より本社工場として稼働。’15年、創業者であり先代の鈴木氏の逝去に伴い代表取締役に就任する。

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