がんのコラム

2017年2月13日

経営者に知ってほしいがんの知識/第1回 がんは『国民病』

がん 健康管理

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コラムを通して知ってほしいがんの知識

当サイトをご覧のみなさん、はじめまして。東京大学医学部附属病院の中川です。早速ですが、私の専門は「がん」です。後ほど詳しく触れますが、われわれ日本人のうち2人に1人はがんになります。

このサイトは「頑張る経営者の応援サイト」ですから、きっと経営者の方々が多く見られていることと思います。経営者の方はご自身の健康のみならず、会社で働く従業員やそのご家族のことも考えなくてはならないでしょう。そのためにも、がんに対する知識を深めていただきたいと思います。また、がんになっても働き続けられる環境づくりも大切です。

このコラムでは、がんという病気について、みなさんにぜひ知っていただきたいことをお伝えしていきたいと思います。

日本人のがんの罹患リスク

がんはわが国の「国民病」です。年間、100万人を超える人が新たにがんと診断され、37万人以上がこの病気で命を落としています。戦前からがん死亡数は一貫して増え続けており、減少に転じる兆しは見られません。一方、欧米では、日本における脳卒中や結核による死亡と同様、すでに峠を越えています。先進国のなかで、がん死亡数が増え続けているのは日本くらいなのです。人口10万人あたりのがん死亡数では、日本は米国より6割も多くなっています。

日本人の死亡原因の約3割が、がんですが、日本人が罹患する確率は50%を超えています。簡単に言えば、日本人の2人に1人以上が、がんになると言えます。

最新のデータでは、日本人男性のがん罹患リスクは生涯で63%、女性でも47%に上ります。しかも、この数字は2012年のものです。日本はがんの罹患情報を集約する「がん登録」制度の整備が遅れており、ようやく昨年(2016年)1月から開始されたばかりで、最新データが4年以上前のものとは、正直、情けない状態です。

この生涯がん罹患リスクは、2010年では男性60%、女性45%、2011年で男性62%、女性46%と年率約1%ずつ増え続けていますから、 2016年では男性67%、女性でも51%程度まで上昇するはずです。つまり、現在、日本人男性の3人に2人、女性でも2人に1人が、がんになる計算です。

発がん原因の半分以上が生活習慣によるものですから、喫煙率や飲酒率などの男女差が、発がんリスクの男女差につながっていますが、54歳までの若い世代では女性の方にがんが多いため、要注意です。また、女性の喫煙率が上昇傾向にある点も気がかりです。

がんはよほど進行しないかぎりは「症状が出にくい病気」です。早期がんでは、症状が出ることはまずありませんから、元気なうちに検査をする「がん検診」が大事です。しかし、がん検診の受診率は3~4割と欧米の半分程度です。

がんの治療でも、手術偏重で、放射線治療も欧米の半分程度にすぎませんし、体と心の痛みをとる「緩和ケア」もおくれています。

世界一の「がん大国」日本は、がん対策の後進国なのです。この連載は月1回となりますが、次回以降も少しでも多くのみなさんに、がんのことをお伝えしたいと思います。この連載が変化のきっかけとなることを願っています。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2017年2月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
東京大学医学部附属病院 中川 恵一(なかがわ けいいち)医師

中川先生

1985年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部放射線医学教室入局。スイス Paul Sherrer Institute へ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師を経て、現在、東京大学医学部放射線医学教室准教授。この間、平成15年から26年まで、東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者/一般向けの啓蒙活動にも力を入れており、福島第一原発後は、飯舘村など福島支援も積極的に行っている。主な著者には『自分を生ききる』(共著)、『緩和医療のすすめ』、『ビジュアル版 がんの教科書』、『がん!放射線治療のススメ』など多数。日経新聞で「がん社会を診る」を毎週連載中。がんの専門家として、人気TV番組「世界一受けたい授業」にも出演。

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