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資金ショートを防ぐための第一歩 資金繰り表の作成

財務力を鍛えたい 2020年12月1日

資金繰りとは

資金調達(投資家からの出資や銀行からの借り入れ)から始まり、その資金を何に使って、どれだけの利益を上げるのか。資金繰りとは、“お金(資金)”がスムーズに回るように一連の管理をすることをいいます。特に新型コロナウイルス感染症の影響で、会社経営を取り巻く環境が大きく変わる中、資金繰りにどのような影響がでるのかをより敏感に把握することが経営者に求められています。

経営が順調なときでも資金の動きを把握して問題の兆候がないかを監視し、資金に余裕が出てきたら設備投資や借入金の返済などを検討することになるでしょう。逆に、経営が不調気味で資金繰りが厳しくなりそうな兆候がみられたら、収益の改善、売掛金の回収、金融機関借入による資金調達などを検討しなければなりません。特に金融機関借入については、事態が本格的に悪化する前に相談することがポイントです。

また、日ごろから総額人件費をしっかり管理し、新規採用はもとより、既存の社員の離職防止をしなければなりません。足元のことだけではなく、中期的な視点で資金を管理することも大切です。

経営において損益計算と資金計画は車の両輪です。基本は“お金(資金)”の流れを管理することですが、「勘定合って銭足らず」という言葉があるように、利益の流れと資金の流れは一致しません。そのため、損益計算上は利益が出ているのに資金はショートしてしまうこともあります。

4つある資金の流れ

会社内に資金が流入する主なルートは次の2つです。

  1. 営業収入:製品の販売代金の回収など、営業活動に対応した資金の流入
  2. 財務収入:金融機関借入など、営業活動と直接関係のない資金の流入

一方、資金の流入と裏表の関係になりますが、会社から資金が流出するルートは次の2つです。

  1. 営業支出:製品の購入代金の支払いなど、営業活動に対応した資金の流出
  2. 財務支出:借入金の返済など、営業活動と直接関係のない資金の流出

 財務収支は、資金調達とその返済などであり、比較的経営者がコントロールしやすい部分です。一方、会社の本業に対応する営業収支については、掛け売りや手形取引などのいわゆる「信用取引」を行うと、利益の流れと資金の流れが一致しなくなります。

そこで、資金繰り表を作成して、例えば「今月の損益計算上の利益は100万円だが、実際に手元に入ってきた資金は80万円」というように、資金を正確に把握することが重要になってきます。

資金繰り表で把握できる資金の流れ

資金繰り表(資金収支表)は、一定期間の資金の流れ(収入と支出)を把握するためのもので、資金繰り実績表と資金繰り計画表に分けられます。資金繰り実績表はこれまでの資金繰りの結果を表し、資金繰り計画表はこれからの資金繰りの計画を示します。そのため、資金繰り実績表を参考に資金繰り計画表を作成するというのが基本的な流れになりますし、実績を入力する際は、計画との乖離(かいり)について分析することも必要です。

本来、資金繰り表は会社内部で利用する資料であるため、決まった様式はありません。ただし、実際には事業計画の進捗報告や新規借入の際などに金融機関から資金繰り表の提出を求められることが珍しくありません。そのため、資金繰り表を作成する場合は、多くの会社が採用している「6分法」にするとよいでしょう。

資金繰り表(6分法)の例は次の通りです。

資金繰り表を見る際の基本は、「1.前月繰り越し」に「4.差引過不足」を加えて営業活動の収支尻を把握し、それを「5.経常外収支」で調整して、どれだけの資金を「6.翌月繰り越し」に回していくか(回していけるか)です。資金の動き方は企業規模や業種業態によって異なるため一概にはいえませんが、3月決算の会社の場合、2月までには次年度の資金繰り計画表を作成しておくのが理想です。

また、先の資金繰り表(6分法)の例は月末の状況を把握するものですが、資金の流出が集中する日(支払いが集中する日)がある会社の場合は、日繰り表(日次で資金の流れが把握できる資料)を作成することで、月中に資金のショートが起こらないかを把握することができます。

資金計画を立てる際に確認しておきたいこと

1)売上計画と経費計画の関係

資金計画を立てる際には、まず売上計画が必要になります。過去の実績や季節変動を加味しながら各月の売り上げを計画します。そして、その次に必要になるのが経費計画です。経費を売り上げの増減によって変動する「変動費」と売り上げの増減に関係なく発生する「固定費」に分類して、売上計画を基にそれぞれの経費の計画を立てます。その際、採用や退職などの人員計画や必要設備などの設備投資計画も一緒に考えるとよいでしょう。

2)回収遅延の防止策

回収遅延は、売掛金の未回収だけではなく、手形割合の増加や手形サイトの長期化などによっても生じます。最悪の場合、多額の債権がある大きな取引先が倒産すると、その影響で連鎖倒産してしまうということもあり得ます。基本は決済サイトを短くするなど、できるだけ利益の流れと資金の流れを一致させることです。資金の流出が集中する日がある会社は、入出金日と手元現金の状況を把握して資金繰りをしなければなりません。この場合、相手にだけ決済サイトの短縮を求めても受け入れてもらえないかもしれないので、こちらの決済サイトも短縮してバランスをとるなどの配慮が必要です。

この他、帝国データバンクや東京商工リサーチといった信用調査機関を利用して取引先の経営状態を定期的に把握し、好ましくない兆候がある場合は取引規模の縮小や債権回収を進めるなどの対応を図る必要があります。

根本的な財務体質の改善を

中小企業の場合、金融機関からの借り入れが一般的な資金調達法になります。ただし、資金調達が必要になった理由や、その時点の会社の財務状態にもよりますが、金融機関が急な融資依頼に応じてくれるとは限りません。必要なときに必要な資金を調達できる環境を整えることは資金繰りの基本であるため、その一環として、日ごろから金融機関と良い関係を築いておくことが大切です。決算説明はもちろん、新製品などを開発した際は金融機関にも知らせて、積極的に会社経営に臨んでいる姿勢を見せましょう。経営者から見ると、金融機関担当者は“怖い”存在かもしれませんが、実は、金融機関担当者も経営者とコミュニケーションをとりたいと考えているのです。

また、会社の資金繰りの状況を把握するために、経営者は次のことを定期的にチェックするとよいでしょう。

  • 本業において十分な収益性が確保されているか?
  • 資金計画があり、資金繰り表を使って状況をチェックしているか?
  • 長期的な安全性を維持するために自己資金は十分あるか?
  • 過大投資となっていないか?
  • 売掛金は回収できているか?不良債権はないか?
  • 売掛金と買掛金とのバランスはとれているか?
  • 在庫水準は妥当か?
  • 金融機関と十分なコミュニケーションがとれているか?

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2020年6月25日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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