貸借対照表を使った財務分析にチャレンジ

財務力を鍛えたい 2020年11月19日

貸借対照表を使って財務分析をしてみよう

財務分析とは、損益計算書や貸借対照表の財務諸表の数値を用いて、会社の「収益性」「安全性」「活動性」「生産性」「成長性」を測ることです。財務分析の方法には「比率分析」と「実数分析」があります。

財務分析によって、企業の特徴を明らかにしたり、問題点を見つけて対策を考えたりすることができます。また、財務分析を行う際には、過去3期分程度の数値を基に、時系列で比較・分析することが大切です。

ここでは、中小企業庁「中小企業実態基本調査」(記事執筆時点で最新データ)を基に、貸借対照表と損益計算書の一部項目で計算できる財務指標に注目し、比率分析をしてみます。モデルとして、全産業の平均的な貸借対照表の値と財務指標を計算してみましょう。全産業の平均的な貸借対照表と財務指標は次の通りです。

1)流動比率(流動資産÷流動負債×100)

流動比率は、会社の安全性の指標の1つとして、流動資産により流動負債をどれだけカバーできるかを表しており、2018年度の値は170.4%となっています。一般的に、流動比率は200%を超えていることが理想とされていますが、100%を超えていれば、流動負債よりも流動資産が多く、会社の支払余力があることを意味します。

3期分の推移を見てみると、ほぼ横ばいとなっています。

2)当座比率(当座資産(棚卸資産等を除いた流動資産)÷流動負債×100)

当座比率は、会社の安全性の指標の1つとして、流動性の高い当座資産により流動負債をどれだけカバーできるかを表しており、2018年度の値は116.4%となっています。流動比率と比べて、現金・預金、売掛金、受取手形などの換金性の高い資産のみを用いて計算するため、より厳密に会社の支払い能力の安全性を判断することができます。当座比率が100%を超えていれば、流動負債よりも換金性の高い資産が多く、会社の返済能力が高いことを意味します。

3期分の推移を見てみると、流動比率と同様のことがいえます。

3)固定比率(固定資産÷純資産×100)

固定比率は、会社の安全性の指標の1つとして、固定資産の原資が返済期限のない純資産(自己資本)でどれだけまかなわれているかを表しており、2018年度の値は114.5%となっています。固定比率が100%以下であれば、固定資産を全て自己資本でまかなっていることになり、財政状態が安定していることを意味します。

固定比率が変動する要因として、純資産のうち、資本剰余金と自己株式の増減が挙げられます。

4)自己資本比率(純資産÷負債および純資産×100)

自己資本比率は、会社の安全性の指標の1つとして、負債および純資産に占める純資産(自己資本)の割合を表しており、2018年度の値は40.9%となっています。一般的に、40%を超えていれば倒産するリスクがほとんどないとされており、自己資本比率が高いということは、調達資金に占める純資産の割合が高く、財政状態が安定していることを意味します。

3期分の推移を見てみると、上昇傾向にあり会社の財政状態が安定しているといえます。

5)棚卸資産回転率(売上高÷棚卸資産)

棚卸資産回転率は、会社の効率性の指標の1つとして、会社がどれだけ在庫(棚卸資産)を保有して、どれだけの売上を上げているのかを表しており、2018年度の値は13.9回となっています。棚卸資産回転率が高いということは、保有している棚卸資産に対して売上高が大きいことを意味します。つまり、会社が余分な在庫を持たず、効率的に売上を上げていることになります。

2018年度は前年度と比べて1.4ポイント上昇しています。売上が上昇し、在庫自体が減少しているといえます。

なお、こうした損益計算書と貸借対照表をまたぐ分析については、期間と時点との関係を揃える必要があることに注意が必要です。

6)総資産回転率(売上高÷総資産)

総資産回転率は、会社の効率性の指標の1つとして、会社がどれだけの資産から、どれだけの売上を上げているのかを表しており、2018年度の値は1.2回となっています。総資産回転率が高いということは、保有している資産に対して売上高が大きいことを意味しています。つまり、会社が保有する資産を効率的に使用して売上を上げていることになります。

3期分の推移を見てみると、ほぼ横ばいとなっています。

7)ROA(税引後当期純利益÷総資産×100)

ROA(Return On Assets、総資産利益率)は、会社の収益性の指標の1つとして、会社の資産に対して税引後当期純利益の占める割合を表しており、2018年度の値は2.9%となっています。ROAが高いということは、資産を効率的に使って利益を上げていることを意味します。

3期分の推移を見てみると、上昇傾向となっています。総資産の増加に対して税引後当期純利益が増加したため、資産当たりの収益性が上がったと考えることができます。

8)ROE(税引後当期純利益÷純資産×100)

ROE(Return On Equity、自己資本利益率)は、会社の収益性の指標の1つとして、会社の純資産に対して税引後当期純利益の占める割合を表しており、2018年度の値は7.1%となっています。ROEが高いということは、純資産を効率的に使って利益を上げていることを意味します。

3期分の推移を見てみると、上昇傾向となっています。純資産の増加に対して税引後当期純利益が増加したため、純資産当たりの収益性が上がったと考えることができるでしょう。

9)資産増加率((当期の資産-前期の資産)÷前期の資産×100)

資産増加率は、会社の成長性の指標の1つとして、資産が前期から当期にかけてどれだけ変化したかを表しており、2018年度の値は-8.9%となっています。資産増加率がプラスの場合、資金調達や資産の取得により事業規模が拡大しており、会社の成長性が高いことを意味します。

財務分析の留意点

ここまで紹介してきた内容はあくまで一例であり、実際に財務分析を行う際には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書などの定量的な情報(量的側面)に加え、会社の経営戦略などの定性的な情報(質的側面)も加味しなければ、会社の財務状況を的確に分析できない点に注意しましょう。

また、財務分析を行う際には業界平均の財務指標と比較することも重要です。自社と業界平均の財務指標とを比較することで、自社の財務指標の推移が、業界全体の傾向を反映したものなのか、それとも自社に特有の理由によって生じているのかを把握できます。

この記事で紹介した、中小企業庁「中小企業実態基本調査」によると、業種別の貸借対照表と財務指標の平均値(2018年度)は次の通りです。

以上
(監修 合同会社gtra and company 代表執行役 公認会計士 朝倉 厳太郎)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年8月7日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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