ABC分析を使って購買の基本を学ぼう
財務力を鍛えたい 2018年6月12日
すべての会社で必要な購買を見直そう
1)購買は身近な業務
購買と聞くと、製造業における原材料の仕入れなどをイメージするかもしれません。しかし、「事業活動で必要となるものを調達すること」と考えれば、購買はすべての会社で必要な業務です。
たとえば、ボールペンや消しゴムといった消耗品を調達することも購買であり、卸売業や小売業における商品の仕入れも購買に当たります。
この記事では、購買を事業活動で必要となるものを調達することと定義して、効率的に行うための基本を紹介します。また、購買の対象を「商品」として説明します。
2)購買には課題がいっぱい
適切な購買を実現するためには、相応の手間や準備が必要です。簡単に思いつくだけでも、次のような点に気をつけなければいけません。
- 自社が求める品質・数量・時期・価格などの条件に応えてくれそうな会社をピックアップし、見積もりを出してもらい、取引先を決定する
- 自社の条件に合う取引先を見つけても、その後も継続的により良い条件の取引先を探して、変更を検討する
- 過剰在庫を招かないよう、発注や購買した商品の在庫管理を適切に行う
また、一口に「商品」といっても、月間の売上高が数千万円ある商品もあれば、数万円しかない商品もあります。このように会社に対する貢献度や影響度が異なる商品について、同じ労力をかけて管理することは現実的ではありません。
そのため、「重要な商品はきめ細かく、そうではない商品は最低限の方法で管理する」といったように、メリハリをつけることが大切です。
商品管理に使えるABC分析とは?
商品ごとにメリハリをつけて管理する時に役立つのが、ABC分析です。これは、重要度の高い順に商品をA・B・Cの3つのグループに分ける方法です。
たとえば、全売上高に占める各商品の売上高を見ると、「二八の法則(20対80の法則)」が成り立っていることが少なくありません。二八の法則は「20%の商品の売上高が、全売上高の80%を占める」といった考え方です。実際の割合は会社によって異なりますが、少数の主力商品が売上高の大半を占めるということは多くの会社で見られます。
ABC分析における商品グループ構成のイメージは次のとおりです。
ABC分析の結果に基づいて、重要度の高いAグループの商品(A1~A4)はきめ細かく管理し、Bグループ(B1~B3)、Cグループ(C1~C5)と重要度が低くなるほど、管理を緩やかにします。
20%の商品をきめ細かく管理するだけで、全売上高の80%分をカバーすることができるようになり、効率的な購買が実現できます。
これはABC分析の一例なので、「重要度を購買金額など別の基準で評価する」「各グループの割合を変える」「A・B・Cに加えてD・Eグループを設ける」といったように、会社の実情に応じて工夫しましょう。
ABC分析の結果に基づく発注方式の考え方
1)発注方式の基本的な種類
発注方式は、発注時期(定期・不定期)と発注数量(定量・不定量)を掛け合わせた、次の4つに分類できます。
・定期定量発注方式
「毎月○日に、50個の仕入れを行う」といったように、発注時期と発注数量をあらかじめ決めておき、それにしたがって定期的に発注する方法です。
・定期不定量発注方式
「毎月○日に、その時必要な数量の仕入れを行う」といったように、発注時期をあらかじめ決めておき、発注数量はその時点の在庫数量や需要予測などに応じて変更する方法です。
・不定期定量発注方式
「在庫数量が○個まで減ったら、50個の仕入れを行う」といったように、あらかじめ決めておいた在庫数量になったら、発注する方法です。
・不定期不定量発注方式
「必要な時に、必要な数量の仕入れを行う」といったように、発注時期や発注数量をあらかじめ決めずに発注する方法です。
上記の4つの方法をより簡便にした、次のような発注方法もあります。
・簡易的な発注方式(ダブルビン方式・定量維持方式(補充方式))
より簡便な発注方式の代表的なものとしては、不定期定量発注方式の一種である「ダブルビン方式」や、不定期不定量発注方式の一種である「定量維持方式(補充方式)」などがあり、いずれも一目で発注時期や発注数量を把握できるのが特徴です。
ダブルビン方式は、2つの同じ大きさの入れ物に商品を入れ、一方の入れ物の商品から使用していってカラになると、入れ物1つ分の数量を発注する方法です。また、定量維持方式(補充方式)は、商品を消費するごとに、同量の商品を発注する方法です。
2)ABC分析の結果に基づく発注方式の基本的な考え方
どの発注方法が適しているかは、各社・各商品によって異なりますが、次のような形で発注方法を決定します。
- Aグループの発注:定期不定量発注方式
- Bグループの発注:不定期定量発注方式
- Cグループの発注:簡易的な発注方式
なお、定期定量発注方式は、需要が安定していることが前提です。そのため、需要変動の激しい現在では、活用できるケースは限られています。
また、不定期不定量発注方式は、需要変動に柔軟に対応することができるメリットがあるので、Aグループの発注などには適していますが、一方で、十分な管理ができないと場当たり的な発注となってしまう恐れがあるので注意が必要です。
3)実際に発注方法を決める時の留意点
実際に発注方法を決める時には、上記の基本的な考え方を参考にしつつ、自社の実情を踏まえて検討しましょう。
たとえば、基本的な考え方は「購買に関する業務の多くをマンパワーに頼って行う」ことが前提になっているところがあります。最近では、販売・購買・在庫などを連動して管理できるようなソフトなどもあります。
もし、こうしたソフトを活用することでB・Cグループの商品もAグループと同様の管理をしても、それほど業務負担が増えないのであれば、きめ細かな管理をするようにしましょう。
発注方式だけじゃない!ABC分析の結果を上手に活用しよう
この記事では、ABC分析を使った発注方式の例を紹介しました。このほかにも、ABC分析の結果は次のような場面で活用できます。
- 商品管理の担当者の有無
(例:Aグループは商品管理をする特定の担当者を決める、B・Cグループは特定の担当者を決めるのではなく、課で管理する)
- 購買先、購入数量、購買条件などの見直し頻度
(例:Aグループは1年に一度、B・Cグループは2年に一度)
- 実地棚卸の頻度
(例:Aグループは1カ月に一度、B・Cグループは3カ月に一度)
- 発注数量を検討する際の基となる需要予測の算出頻度や算出方法
(例:Aグループは1カ月に一度、B・Cグループは3カ月に一度)
購買は効率化に取り組みにくい業務ともいわれますが、ABC分析の結果を活用して、業務内容などを見直し、効率的な購買に取り組んでみましょう。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年4月11日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
執筆者
日本情報マート
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