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コロナ禍の資金調達 ポイントを押さえたコロナ融資の活用法

財務力を鍛えたい 2020年12月25日

コロナ融資の3大メリットとは?

コロナ融資とは、簡単に言うと、新型コロナウイルス感染症の影響により、売上の減少など業況悪化を来している中小零細企業を支援する制度です。そしてコロナ融資制度は大きく分けて2つあります。1つは「日本政策金融公庫」の制度、もう1つは「民間銀行」の制度です。それぞれの制度の内容については、後で詳しく見ていきます。

さて、コロナ融資制度上の3大メリットは何でしょうか?それは

  • 「3年間実質無利子」であること
  • 「返済期間が最長15年」と通常の融資よりも長いこと
  • 「据置期間が最大5年間」あること

です。

コロナ融資を受ける本当の目的とは?

制度上のメリットを実際にはどのように活かしていけばよいのでしょうか?この章では、制度上のメリットを活かすために、コロナ融資の本当の目的を確認していきます。

コロナ融資の本当の目的は2つあります。1つは「1.手元資金を増やすこと」、もう1つは「2.毎月の返済額を減らすこと」です。

「1.手元資金を増やすこと」については、しっかりと認識している人も多くいます。しかし、「2.毎月の返済額を減らすこと」について認識した上でコロナ融資を受けようとする人は、ほとんどいないように思います。

言うまでもなく1.は大事ですが、2.の目的をしっかりと意識しながら取り組んでいくとよいでしょう。

なぜコロナ融資は大チャンスなのか?

「2.毎月の返済額を減らすこと」を強く意識できるようになると、「なぜコロナ融資は大チャンスなのか?」の答えが出てきます。文章だと分かりにくいので、「入りと出のバランス」の図解を一緒に見ていきましょう。

上図はいずれも損益ベースではなく、キャッシュベースでのお金の「入り」と「出」の図解です。一番左側のStep1.【現状】の図を見てください。「仕入+経費+税金」よりも「売上」が大きいので利益は出ています。しかし、利益よりも返済額のほうが大きいため、全体的に「入り」よりも「出」のほうが大きくなっています。これでは資金繰りが楽になることはありません。しかしながら、実際にStep1.【現状】のようになっている中小企業があることは紛れもない事実です。

そのような中小企業は、「コロナ融資」を上手に活用することによって、Step2.【据置期間】とStep3.【返済開始後】のように「入り」と「出」のバランスを整えるようにしていけばよいのです。Step2.【据置期間】とStep3.【返済開始後】のようなバランスになれば、当然、資金繰りは楽になります。この「入り」と「出」のバランスを意識しながらコロナ融資を受けるのが最大のコツです。なぜなら、コロナ融資は、据置期間があり、かつ、返済期間が長いので、「入り」と「出」のバランスを整えやすいのです。「コロナ融資は大チャンス」といわれるゆえんです。

コロナ融資を受ける際の3つのポイントとは?

1)返済期間はできる限り長く!

返済期間が長ければ長いほど毎月の返済額は小さくなっていきますので、まず、できる限り「長く借りる」ということが最大のポイントになります。

2)「追加融資」ではなく「借換(一本化)」が有利

すでに借入があるケースでは、コロナ融資を受ける際は、「追加融資」ではなく、「借換(一本化)」(詳細は後述)をしてください。そのほうが毎月の返済額を小さく抑えることができるからです。この際、「追加融資」をした後で、やっぱり「借換(一本化)」に変更したいと言っても変更できません。そのため、最初から「借換(一本化)」の手続きをするようにしましょう。

3)銀行ごとに行うのがルール

例えば、A銀行からコロナ融資を受けて、B銀行の既往債務を返すということは、基本的にできないことになっています。銀行との関係を良好に保つためにも、銀行ごとに「借換(一本化)」の手続きをしていくのがコツです。

コロナ融資を実際に受けた成功事例!

それでは、弊社クライアントの実際の数字を一緒に見ていきましょう。

公庫と民間銀行、別々にコロナ融資を受けることになります。まずは、下図の「1.公庫」から見ていきましょう。公庫の既往債務2000万円(返済期間あと3年、毎月の返済額55万円)がありましたので、ニューマネーとして1000万円を追加して、既往債務2000万円とニューマネー1000万円を一本化し、3000万円の返済期間10年(うち据置期間2年)で話がまとまりました。これが「借換(一本化)」です。

次に、下図の「2.民間銀行」を見ていきましょう。民間銀行の既往債務5000万円(返済期間あと3年、毎月の返済額140万円)がありましたので、ニューマネーとして1000万円を追加して、既往債務5000万円とニューマネー1000万円を一本化し、6000万円の返済期間10年(うち据置期間2年)で話がまとまりました。

そして、上図の「1.公庫」と「2.民間銀行」の数字を合計したのが下図「3.合計」です。

公庫と民間銀行の「借換(一本化)」をした後、借入残高は7000万円(2000万円+5000万円)から9000万円(3000万円+6000万円)になり、預金残高がニューマネー分2000万円(1000万円+1000万円)増えました。さらに、195万円(公庫55万円+民間銀行140万円)だった月額返済額が、据置期間(2年間)は0円になり、3年目以降に返済が開始される8年間も毎月93万円(公庫31万円+民間銀行62万円)の返済額で済むようになりました。

さらに、会社全体の「入りと出のバランス」の図解に、「返済の年額」を記載してみると下図のようになります。

この事例のバランスのようになれば、資金繰りはかなり楽になるはずです。コロナ融資の本当の目的を達成したといえるでしょう。全ての会社がこの通りになるとは限りませんが、Step3.の返済額がStep1.の半分くらいになるケースはわりと多いのです。

日本政策金融公庫のコロナ融資の概要

1)国民生活事業

  1. 要件:売上5%以上減少
  2. 融資限度額:8000万円
  3. 返済期間:設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)
    運転資金15年以内(うち据置期間5年以内)
  4. 担保:無担保
  5. 利率:4000万円を限度として融資後3年目までは実質無利子、4年目以降は基準利率(令和2年11月2日時点では1.26~1.65%)。

2)中小企業事業

  1. 要件:売上5%以上減少
  2. 融資限度額:6億円
  3. 返済期間:設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)
    運転資金15年以内(うち据置期間5年以内)
  4. 担保:無担保(5年経過ごと金利見直し制度を選択できます)
  5. 利率:2億円を限度として融資後3年目までは実質無利子、4年目以降は基準利率(令和2年11月2日時点では1.11~1.40%)

民間銀行のコロナ融資(実質無利子)の概要

  1. 要件:セーフティーネット4号・5号、危機関連保証のいずれかを利用
  2. 融資限度額:4000万円
  3. 返済期間:10年以内(うち据置期間5年以内)
  4. 担保:無担保
  5. 保証料・金利:
    a)個人事業主については、保証料ゼロ、金利ゼロ
    b)小・中規模事業者については、保証料ゼロ~1/2、金利ゼロ~

おわりに

何も考えずに借りてしまうと、後になって資金繰りがきつくなることが容易に考えられます。資金繰りを楽にするコツは、Step1.【現状】⇒Step2.【据置期間】⇒Step3.【返済開始後】というように3つのステップで考えていくことです。まずは、紙と電卓を用意して、自分の会社のStep1.【現状】⇒Step2.【据置期間】⇒Step3.【返済開始後】の数字を紙に書いてみることから始めることをお勧めします。

新型コロナウイルス感染症の影響で、業績が大きく悪化した企業は少なくありません。こうした状況を乗り越える制度として、コロナ融資の仕組みを知っておくことは極めて大切です。コロナ融資を受けるときのポイントなどを参考にし、今の困難な状況を乗り切る手段として上手に活用してみましょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年11月30日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
株式会社神田どんぶり勘定事務所 税理士 神田知宜

新発田高校卒業、関西大学卒業。1969年生まれ、新潟県出身、千葉市在住。
中小企業の資金繰りの悩みをゼロにする専門家。
「どんぶり大福帳」導入コンサルティング、セミナー講師、執筆を業とする。
大学卒業後、大阪の税理士事務所に勤務。顧問先の社長から「もっと気の利いたアドバイスはできないのか? 全く何の役にも立たないな」と怒鳴られ続けノイローゼに。税理士業界にいる限り、社長との「心の溝」は埋まらないと感じ、税理士会を退会し、税理士業界を一度離れる。
上場会社の経理責任者となるがリーマン・ショックの影響をもろに受け上場廃止に。想像を絶する極限ギリギリの資金繰りを経験し、会社が生き延びるためには決算書や会計の専門知識は何の役にも立たないと絶望。
そのときに、お金の本当の姿を見えるようにしておかないといけないと痛感し、独自の資金繰り予測の体系化に成功。本の出版を機に独立し、神田式・資金繰り予測ツール「どんぶり大福帳」の導入コンサルティングを展開。
「お金の使い方が変わり残高が3カ月で130%に増えた」「人件費300万円のコストダウンに成功」「返済額が50%OFFになり3000万円の特別な借入枠を設定できた」など、全国から喜びの声が届くようになり、「どんぶり大福帳」導入実績は500社を超える。

●株式会社神田どんぶり勘定事務所
●YouTubeチャンネル「どんぶり勘定事務所」
●神田延榮税理士事務所

【著書】
「世界一シンプルでわかりやすい決算書と会社数字の読み方」(日本実業出版社)
「お金が残る「どんぶり勘定」のススメ~会社のお金は通帳だけでやりくりしなさい」(あさ出版)
「面白いほどわかる!!会計とファイナンスの教科書」共著(洋泉社)

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