【勘定科目はどれ?】社員の健康診断にかかる経費の取り扱い

財務力を鍛えたい 2021年7月2日

会計上の勘定科目は福利厚生費が一般的。税務上は少し細かなルールあり。

会社と個人事業者とを問わず、社員には年1回の健康診断を受けさせることが、労働安全衛生法によって義務付けられています。健康診断には法令で定められた法定項目がありますが、実際は会社が社員の健康を考えて、異なる検診メニューを用意したり、オプションの選択ができるようにしたりしています。

健康保険の補助はあるものの、社員数が増えれば、検診費用もそれなりにかかります。会社が負担した社員の健康診断料は福利厚生費(経費)で処理するのが一般的ですが、税務上は押さえておくべきルールがあります。例えば、気をつけなければならないことは、

役員と従業員の健康診断のメニューに差をつけた場合には、税務上は福利厚生費ではなく給与とみなされる

などのポイントです。

この記事では、こうしたポイントも踏まえて、社員への健康診断にかかる経費の取り扱いを紹介していきます。加えて、新型コロナウイルス感染症のPCR検査料を会社が負担した場合など、コロナ禍で生じる社員の健康関連のための支払いに係る取り扱いについても解説します。

なお、健康診断自体の詳細については、下記の記事をご参照ください。

■健康診断の実施は企業に法的義務がある! 対象者や診断項目を解説■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300051/

健康診断の費用を税務上経費と認められるためには?

会社が負担する社員の健康診断料を福利厚生費として認められるためには、次の3つの要件を全て満たす必要があります。

  1. 健康診断の対象者が全ての社員となっていること
  2. 健康診断の範囲が常識的な範囲で、かつ、従業員の健康管理を目的としていること
  3. 健康診断料を会社が医療機関に直接支払いしていること

1)健康診断の対象者が全ての社員となっていること

「全ての社員」とは、従業員だけでなく役員も対象で、正社員に限らず、一定の条件を満たしたパート・アルバイトも含まれます。なお、年齢で受けられるメニューに差をつける場合には、社内規程に明記する必要があります。例えば、

全社員のうち、●歳以上の希望者に対しては人間ドックにかかる費用を負担する

などです。

2)健康診断の範囲が常識的な範囲で、かつ、従業員の健康管理を目的としていること

「常識的な範囲」とは、明確な基準があるわけではありませんが、一般的に実施されている健康診断(会社負担が2~3万円程度)であれば問題ないでしょう。会社によっては人間ドックも健康診断の一環として受診させているケースもあります。人間ドックについても一般的な検診メニューで行われたものであれば、福利厚生費として認められます。ただし、PETのように費用が数十万円程度掛かるものについては、範囲外のものとして福利厚生費として認められない可能性が高いようです。
このような明確な基準がない判断については、事前に税理士など専門家に相談するようにしましょう。

3)健康診断料を会社が医療機関に直接支払いしていること

文字通り「会社が医療機関に直接支払う(注)」必要があります。例えば、会社が先に社員に現金支給をし、社員が後日健康診断を受けて医療機関に支払った場合は福利厚生費として認められません(渡し切りの金銭の支給となるため)。

(注)社員が医療機関での検診後に領収証と引き換えに現金精算をし、その領収証を会社が保管するときは「会社が医療機関に直接支払う」に含まれます。

福利厚生費として認められなかった場合、どのような取り扱いになるのか?

もし、前述した3つの要件に該当しなかった場合、税務上は福利厚生費ではなく、給与となります。そのため、一般社員の場合には給与として経費扱いになりますが、源泉所得税の徴収が必要になります。
問題は役員の場合です。税務上、役員に対する給与(役員報酬)については、支給時期と支給金額が一定である定期同額給与など、一定の方法で支給されたものでなければ、全額経費として認められない上、役員報酬として取り扱われるため源泉所得税の徴収が必要になります。

こんなケースはどうなるか? 健康診断の費用Q&A

1)一人社長の場合は?

社員を雇用せずに一人で経営している会社(一人会社)の場合は、福利厚生費ではなく、役員報酬として取り扱われます。福利厚生は社員に対して行われるものであるため、一人会社の場合には福利厚生費という勘定科目自体が使われることはありません。

2)配偶者や家族の健康診断を会社が負担する場合には?

配偶者や家族分の健康診断の費用は、福利厚生ではなく、給与または役員報酬として取り扱われます。
ただし、近年では健康経営への関心の高まりから、税務上の取り扱いにかかわらず、一定年齢以上の社員の家族に対する健康診断の費用を全額負担する会社も出てきています。

3)外注先のスタッフなどの健康診断の費用を会社が負担した場合には?

建設業などにおいては、業務の都合上、外注先のスタッフに健康診断を受けてもらうことがあります。この健康診断の費用については、一般的に福利厚生費としてではなく、外注費などの勘定科目で処理します。税務上も外注費として経費となります。あくまで、業務を行う上で必要であるなど一定の事情がある場合に限ります。

4)インフルエンザの予防接種やPCR検査の費用を会社が負担した場合には?

インフルエンザ予防接種や、新型コロナウイルス感染症のPCR検査の費用を会社が負担した場合は、福利厚生費になります。もちろん、前述した3つの要件を満たしていることが前提になります。

以上
(監修 税理士 石田和也)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年6月20日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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