経営者としての見識を深めたい

2017年4月17日

小宮一慶の「経営者の条件」/前向き、利他心、反省

リーダーシップ 経営者

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「前向き」なリーダーは人の長所を使える

多くの経営者を見てきましたが、経営者に必要な心構えとして「前向き、利他心、反省」が大切だと思っています。

まず、リーダーは前向きでなければなりません。頭の良い人の中には、とかく批判が先にきて後ろ向きに物事をとらえる人も少なくありませんが、それでは、何事も進めることはできません。前向きに物事をとらえてこそ、難しいことでもやれるのです。いわば「積極思考」です。何も、なんでもかんでもやればいいというわけではありません。松下幸之助さんは、6割やれると思ったらやる、あとは、熱意や努力でカバーするとおっしゃっていますが、ある程度やれると思ったことは思い切ってやってみることが大切です。

さらには、前向きのリーダーは人の良いところが見えやすくなります。人には必ず良いところと悪いところがあります。部下たちの良いところをうまく使えるリーダーと、凡庸なところばかりを使っているリーダーとでは、チームのパフォーマンスが違うのは明らかです。部下の長所を使うには、それらを見つけ出す必要がありますが、積極思考の人は良い面を見るクセがついているので、チームのパフォーマンスを高めることができるのです。

皆さんが積極思考かどうかを簡単に見分ける方法があります。それは、人を心から誉めることができるかどうかです。他人の良い面を見ることができれば、それを誉めることができるはずです。他人をけなしてばかりいるのは、悪いところを見ているからです。

余談ですが、この話をすると「誉めて育てるということですね」と早合点する人がいるのですが、そう単純ではありません。リーダーは人の良いところは良い、悪いところは悪いときちんと言わなければなりません。「誉める」と言うことと「おだてる」というのは違うのです。良いところを評価するのが「誉める」、たいしたこともないことを評価するのが「おだてる」です。おだてると仕事や上司を甘く見ることにもなりかねません。本当に良い点だけを誉めるのです。

大きな「目標」を持つ

前向きになるためには、目標が必要です。それも大きな目標を持つことだと思います。私が好きな言葉に「散歩のついでに富士山に登った人はいない」というのがありますが、人はどのような目標を持つかで行き着くところが違うとつくづく思っています。

ソフトバンクの孫正義社長は、数十年前に福岡で中古のソフトウエアを売るお店を創業しました。アルバイトを2人雇ってビジネスをしていたそうですが、あるときにその2人の前で、「この会社は将来、豆腐を1丁、2丁と勘定するように、1兆、2兆という単位のビジネスをする」と語ったそうです。そのとき2人のアルバイトは、「この人どうかしている」と思って辞めてしまいました。しかし、現実には、ソフトバンクの売上高は10兆円に迫る規模となっています。

目標を持たなくても毎日が無事に過ぎていきますね。毎日、目の前のことを一所懸命にきちんとこなしていくことはとても大切なことです。しかし、それでは、毎日必死に近所を「散歩」しているだけかもしれません。米国のルーズベルト大統領は「足は大地に目は星に」と言っていますが、せっかく一所懸命働くなら、何か目標、それも遠くにある大きな目標を持ってそれに向かって進んでいくほうが、人生がより充実するのではないでしょうか。

自分だけ良ければという人は成功しない

利他心を持つこともとても大切です。自分だけ良ければという経営者は、お客さまや社員から嫌われます。しかし、ここで注意することがあります。「利他心」は「自己犠牲」とは違うということです。私の人生の師匠は禅寺のお坊さんでしたが、「自己犠牲は長続きしない」とおっしゃっていました。同様に、家族も組織も社会も犠牲にしない生き方が大切だとおっしゃっていました。

ビジネスの世界は、良い商品やサービスをお客さまに提供することが主目的です。そこには自己犠牲はありません。お客さまも喜び、働く人もそれに喜びを感じ、会社も潤うという構図です。良い商品やサービスを提供することが利他心そのものだという認識が大切なのです。経営者はそういったビジネスの本質というものを十分に理解していなければなりません。

反省しないと積み重ならない

前向きで利他心のある経営者でも失敗する人は少なからずいます。そういう人は反省しないのです。反省しない人は独善的です。自分の考えは絶対だと思っているのです。だから反省しないのです。

そういう人は、失敗しても反省しないからビジネスも人生も積み重なりません。失敗したら何かをつかまないとダメです。同じ失敗を何度も繰り返してはダメなのです。

うまくいったときも反省が必要です。ひょっとしたらその成功は運が良かっただけで再現性がないことかもしれませんね。論語に「吾、日に吾が身を三たび省みる」とあるように、自分を省みることが大切です。私は寝る前には日記を書きますが、日記を書けば反省を習慣化することができます。いずれにしても、反省するには素直で謙虚であることが大前提です。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2017年3月28日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者 経営コンサルタント 小宮 一慶(こみや かずよし)

小宮一慶

株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役。社外取締役や監査役、顧問も務める。大阪府堺市生まれ、京都大学法学部卒業。東京銀行入行。米国ダートマス大学タック経営大学院に留学、MBA取得。岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現セントケア)を経て、95年小宮コンサルタンツ設立。名古屋大学客員教授。講演、新聞・雑誌への執筆、テレビ出演、著書130冊超。近著『世界一やさしい 経済の教科書1年生』。

 

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