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2016年11月28日

桜井博志の名言。「獺祭(だっさい)」を生んだ“型破り”社長

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桜井博志の名言。「獺祭(だっさい)」を生んだ“型破り”社長

「熱燗でも、冷やでもいける。これって本当に『強み』なのだろうか?」(*)
出所:「逆境経営 山奥の地酒『獺祭』を世界に届ける逆転発想法」(ダイヤモンド社)

国内外を問わずファンの多い日本酒「獺祭(だっさい)」。2016年には銀座に自社商品を扱う直営の路面店をオープンし、2017年にはパリに直営店やレストランが入居する店舗をオープン予定です。獺祭というヒット商品を生み出し、直営店の出店などを展開する旭酒造は、中小企業におけるブランディングの成功例といえるでしょう。

現在は純米大吟醸酒だけを醸造する旭酒造ですが、かつては山口県の中でも小さな蔵元で、大衆的な普通酒を醸造していました。しかし、差別化のためにおいしい酒造りを志向した桜井氏は、管理の難しい大吟醸酒の醸造に進出します。

大吟醸酒造りを始めた当初は、普通酒も並行して醸造していました。しかし、とある機会に大手メーカーの日本酒を口にし、「自社では純米大吟醸酒、一本でやっていこう」と決断しました。どういうことかというと、桜井氏はこの大手メーカーの日本酒を熱燗と冷やの両方で口にし、「さすが、熱燗でも、冷やでもおいしい」と感じたそうです。

しかし、桜井氏は冒頭の言葉にあるように、「どちらでもおいしいというのは、本当に強みなのだろうか」と疑問を持ちます。そして、どちらでもおいしく造らなければいけないのは、ターゲットを絞り込めない大手メーカーの戦略で、旭酒造がやるべきなのはターゲットを絞り込んで、さらにおいしい日本酒を追究することだと考えたのです。その結果、日本酒の醍醐味ともいえる、冷やで飲んだときのおいしさを追究した、獺祭が生まれました。

小さな蔵元である旭酒造が人気蔵元に躍進できたのは、桜井氏の時代を読む先見性があったからです。蔵元でありながら杜氏任せにはせず、自らが積極的に関与し、酒造りの数値化や、冬だけでなく年間を通じて酒造りに取り組んでいます。また、最近ではテレビCMに桜井氏本人が出演していますが、ITを使って山田錦(酒米)の栽培技術を見える化するなど、旭酒造は日本酒業界の常識を次々と破ってきた型破りな酒造りに取り組んでいます。

旭酒造の成功に学ぼうと、工場見学に来る同業者は多いものの、自社が旭酒造のようには酒造りが“できない理由”を挙げ、旭酒造をまねようとはしないそうです。それは常識を破ることが、大きなリスクを伴うと考えているからです。

しかし、小さな組織だからこそ、常識破りともいえるリスクに挑戦することができます。社長の目が届き、社員同士の顔が見える規模であれば、たとえリスクに直面しても、機動的に対応することが可能です。

そして、常識破りな方法とは、「おいしい酒を造り、顧客に喜んでもらいたい」といった顧客の満足を徹底的に考え抜くことによって生まれるものなのです。

【本文脚注】
本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【参考文献】
(*)「逆境経営 山奥の地酒『獺祭』を世界に届ける逆転発想法」(桜井博志、ダイヤモンド社、2014年1月)
「旭酒造社長桜井博志さん―『獺祭』テクノロジーで美味、杜氏置かず通年生産(トップに聞く)(日経MJ(流通新聞)(2014年9月1日付))」(日本経済新聞社、2014年9月)

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年12月21日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
※2016年3月4日公開の原稿に、一部、加筆・修正をしたものです。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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