「論語」で磨く部下力。 仕事を任せたくなる部下になる

経営者としての見識を深めたい 2016年3月9日

あなたは上司から信頼されていますか

日ごろ、部下が担当している仕事のほとんどは上司から直接的、間接的に指示されたものでしょう。そのため、部下が「プロジェクトチームに参加したい!」「新しい仕事に取り組みたい!」など、ビジネスパーソンとして成長したいと考えるならば、上司の信頼を勝ち取り、仕事を任せてもらわなければなりません。ただし、“ゴマすり”をして上司に取り入るというわけではありません。そもそも上司は、自分に媚びへつらってくる部下を信頼しません。上司が信頼するのは、信念を持って仕事に取り組んでいる部下であり、そうした部下と仕事をしたいと考えています。

本稿では、上司から信頼される部下になるための秘訣を紹介します。

上司の真意を理解しよう

1)どうして上司は小言を言うのか

上司は部下に小言を言います。部下からしてみると、「何もそんな細かいところまで指摘する必要はないのに。上司というのは小言が好きだな……」と感じることもあるでしょう。しかし、これは“上司の心、部下知らず”というものです。上司が部下に小言を言うのは、自身の経験上、部下がビジネスパーソンとして相応しくない立ち居振る舞いをしたときや、仕事に向き合う姿勢が間違っているときです。部下は悪意なく行動しているだけでしょうが、ビジネス経験が豊富な上司には、部下の“まずい”言動が目立って見えます。できれば上司は小言を言いたくはありません。小言を言えば部下を傷つけてしまうかもしれないため、それなりに気を使います。また、時間も割かなければなりません。それでも小言をいうのは、ひとえに部下の成長を願ってのことなのです。

一方、部下はそんな上司の親心が分かりません。例えば、始業1分前に出社してきた部下に、上司が「もう少し早く出社しなさい!」と注意したとします。部下は、口では「申し訳ありません……」と言いつつも、内心は「始業時間前に席に着いているのだから、ギリギリセーフでしょ!」と考えているかもしれませんが、これは少々考えが足りません。上司は始業時間ギリギリにきたことだけを注意しているのではありません。始業とは、文字通り仕事を始める時間です。事前にパソコンを立ち上げ、スケジュールや段取りを確認しておかないと、スムーズに仕事を進めることができません。そうした準備を疎かにする姿勢は、ビジネスパーソンとして相応しくないことを教えようとしています。

また、ビジネスでは時間管理ができないと取引先や関係者に迷惑を掛けてしまうため、部下が社内外の人から信用を失ってしまうのを防ごうともしています。

このようにして、上司はさまざまな意味を込めて、部下にアドバイスや注意をしています。これが少しでも理解できれば、部下の言動は改善されていき、上司の信頼も得られるようになるでしょう。

2)上司の真意を知ろう

上司からのアドバイスや注意の真意を知るために、まずは次の4つのパターンに注目してみましょう。

上司の発言とその真意

以降では、上記4つの点を解消して、信頼の厚い部下へと成長するための考え方と、中国古典の「論語」から仕事に対する心構えなどにも通じる言葉を紹介します。

「正しく報・連・相ができない部下」からの卒業

上司は部下に仕事を任せますが、重要なポイントについてはきちんと把握し、トラブルを未然に防止しようと努めます。そのため、上司は部下に報・連・相を命じます。これに従い部下は報・連・相をしますが、忙しそうにしている上司をつかまえて「お時間を15分ください」と平気で言ったり、上司が知りたいと思っている内容を伝えられなかったりなど、上司の知りたいことではなく、自分のタイミングや伝えたいことを優先して、正しく報・連・相ができていないことがあります。そのため、部下は上司の指示通りに報・連・相をしているにもかかわらず、途中で話を遮られてしまったりします。

正しく報・連・相ができない部下から卒業するために、部下は「自分が上司だったら、どのタイミングで、何を知りたいと思うだろうか」と考えてみましょう。上司はミスを未然に防止したいわけですから、仕事の進捗はもちろんのこと、何かトラブルが起こるかもしれない「難所」を知りたがっています。そのため、部下は仕事につまずく可能性があるポイントをきちんと伝えれば、上司の信頼につながるでしょう。また、上司が忙しそうにしているときは、「今、3分よろしいですか?」といったように、上司の状況を確認しながら報・連・相をしましょう。

●「論語」に学ぶ、信頼の厚い部下として行動するためのポイント

「孔子曰わく、君子に侍(はべ)るに三つの愆(あや)まち有り。言未まだ之れに及ばずして而も言う、之れを躁と謂う。言之れに及んで而も言わざる、之れを隠と謂う。未まだ顔色を見ずして而も言う、之れを瞽(こ)と謂う。」(*)

「君子(目上の人、リーダー)に仕える際に、犯しやすい過ちが三つある。一つ目は言うべきでないときに、余計なことを言うこと、二つ目は言うべきときに、必要なことを言わないこと、三つ目は君子(目上の人、リーダー)の顔色も見ないで自分勝手に発言をすることである」という意。なお、瞽とは、目の働かない人や、目の見えないことを指す。

→上司の立場や状況を考えて、報・連・相をすることが重要である

「ネガティブ思考の部下」からの卒業

物事は経験を積むほど上達します。ビジネスも同じで、成功と失敗をたくさん経験した人のほうが引き出しが増えますし、いざというときに肝も据わります。特に若いうちは、将来のためにどんどんチャレンジして、失敗すべきだと言う人もいます。しかし、せっかく新しい仕事を任されたのに、「やったことがないので失敗するのが怖い……」などと不安に感じ、前向きにチャレンジできない部下がいます。

誰でも失敗は避けたいものですが、「たとえ失敗をしたとしても、チャレンジしなければ糧は得られない」といったポジティブ思考で、新しい仕事にチャレンジしましょう。上司は「キャリアの早い段階で失敗をして経験を積まないのはもったいない」と考えており、失敗を恐れて何も動かない部下よりも、勇気を振り絞ってチャレンジする部下を評価します。また、ポジティブ思考の部下をみて、上司は「もっといろいろな仕事の経験を積ませて、成長してもらいたい」とさらなるサポートをしてくれるはずです。

●「論語」に学ぶ、信頼の厚い部下として行動するためのポイント

「子曰わく、力足らざる者は、中道にして廃す。今女(なんじ)は画(かぎ)れり。」(**)

「本当に力が足りない者はやれるだけやって、途中で力を使い果たしてやめることになる。しかし、力が あるにもかかわらず、今あなたは、自分で自分の限界を設定している」という意。

→自分で限界を設定したり、言い訳をせずに、全力を尽くすことが大切である

「自分の意思が感じられない部下」からの卒業

ビジネス経験が浅いうちは、自分に決定権がない仕事がほとんどです。部下は「自分があれこれ考えても、決定を下すのは上司だから関係ない」と思い、自分で考えることをやめて、上司の決定をただ待ってしまうことがあります。

一方、上司はたとえ最終的に決定するのが自分であっても、その過程で部下の意見を聞いてみたいと考えています。これには、部下の考えを参考にしてみたいという思いのほか、部下がどこまで自分の仕事を本気で考えているのか知りたいという狙いがあります。

●「論語」に学ぶ、信頼の厚い部下として行動するためのポイント

「子曰わく、之れを如何、之れを如何と曰わざる者は、吾れ之れを如何ともする末(な)きのみ。」(*)

「『これをどうしたらいいか』と懸命に考えない者は、私にはどうすることもできない」という意。

→本人にやる気がなければ何事も成し遂げることはできない

「謙虚さに欠ける部下」からの卒業

大半の仕事は、周囲の人の協力なくして達成できないものであり、チームワークが必要です。一方、経験を積むにつれて自分なりの仕事観が確立され、仕事の進め方に対するこだわりも生まれてきます。これは良いことですが、固執してしまうと、周囲の人の意見に耳を傾けようという柔軟さや謙虚さがなくなってしまいます。

周囲の人は皆、自分とは異なる経験をして、さまざまな見識を持っています。「自分は未熟であり、知らないことが数多くある」という謙虚な姿勢を崩さず、たとえ相手が年下であっても教えを請い、自分の中に取り入れていきましょう。謙虚な姿勢を崩さなければ、周囲の人は「もっといろいろなことを教えてあげよう」と協力してくれます。

●「論語」に学ぶ、信頼の厚い部下として行動するためのポイント

「子曰わく、三人行(あゆ)めば、必ず我が師有り。其の善き者を択(えら)んで之れに従う。其の善からざる者にして之れを改む。」(**)

「私は三人で行動すれば、必ずそこに師を見つける。二人のうち一人が善い者で、一人が悪い者であれば、善い者からは善いところを習い、悪い者からはその悪いところが自分にも当てはまるのではないかと反省 して、修正する」という意。

→自分以外の人には、学ぶべきところが必ずある

おわりに~上司に頼るのではなく、自分が動く~

部下にとって、良い上司との出会いが自身のビジネスパーソンとしての成長に大きく関係しています。良い上司に出会えるかどうかは単なる偶然によるものではなく、部下が上司と良い関係を築くことが重要になります。上司は部下が考えている以上に部下のことをよく見ており、部下のことを理解しようと努力し、部下の成長を期待しています。そうした上司の期待に応えようとする部下の姿勢があれば、上司はいつでも手を差し伸べ、チャンスを与えてくれます。

部下は上司ではありません。ですから、部下が上司の考えをすべて理解できないのは当たり前のことです。しかし、本稿で紹介した上司の真意などを参考に、上司が自分に何を期待しているのかを考え、疑問に思うことはどんどん質問してみましょう。そうして、部下から上司に働きかけることで、上司と部下の間に生 じる考え方の違いが解消され、信頼関係が強まり、自身の成長に結びつくきっかけにもなっていきます。

【参考文献】
(*)「論語 下」(吉川幸次郎、朝日新聞社、1996年10月)
(**)「論語 上」(吉川幸次郎、朝日新聞社、1996年10月)
「論語 現代訳」(下村湖人(訳)、PHP研究所、2008年10月)
「論語ビジネス塾 世界一の教科書に学ぶ」(歴学編集部(編)、ダイヤモンド社、2010年2月)
「声に出して読みたい論語」(齋藤孝、草思社、2011年3月)
「プロフェッショナルサラリーマン=The Corporate Professionalism 『リストラ予備軍』から『最年少役員』に這い上がった男の仕事術」(俣野成敏、プレジデント社、2011年11月)

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年2月29日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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