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2016年3月21日

名監督も陥る教育のブラックボックス。その解消法とは?

経営者 部下育成

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教えることは難しい…

ある日、中堅社員のAさんは、少しイライラした様子で、後輩のBさんに業務を教えていました。その様子をみていて心配になった課長は、場所を変えてAさんに声をかけてみました。

すると、AさんはBさんに教えているときに感じていた悩みを話し始めました。「さっきの仕事についてもそうですが、Bさんが、なかなかできるようにならなくて…。教えているのは決して難しい業務ではないし、『当たり前』のことばかりなのに、なんでBさんはできないんだろうと思うと、つい、イライラしてしまうんですよ…」。

そんなAさんの話を聞いた課長は、「その『当たり前』のことも含めて、Bさんに教えることが君の役割だよ。ただし、『当たり前』のことを教えるのは、意外と難しいよ。だから、Bさんに教える前に、まずは、教えるべきことを整理することから始めたほうがいいと思うぞ」。課長は、そういってAさんの肩をポンと叩きながら立ち去って行きました。

「当たり前」の基準は?

部下に業務などを教えること(以下「教育」)は決して簡単ではありません。「時間をかけてじっくり説明したつもりなのに、期待したほどの成果があがらない」「いつまでたっても、同じようなミスを繰り返してしまう」。教育する側にとっては、よくある頭の痛い問題です。

そんなときに、しばしば頭をよぎったり、思わず口から飛び出してしまうのが「『当たり前』のことなのに…」という言葉です。しかし、この「当たり前」という考えは、教育において意外な落とし穴となっていることがあります。

「当たり前」のことの問題点

「当たり前」のことだと考えてしまうことの問題点は、その内容が“ブラックボックス化”することにあります。

教育する側は、その業務や作業手順をマスターしています。極端な言い方をすれば「深く考えなくても、自然にできる」状態です。だからこそ、「何をどのようにしたら、それができるようになるのか」について理路整然と説明することが難しい場合が少なくありません。また、教育する側は、自分同様、部下も当然分かっているものだと思いこんでしまいがちなため、部下が、その「当たり前」のことを、実は分かっていないという事実にすら気がつかないこともあります。

よく、「名選手、名監督にあらず」などといわれます。これは、「高度なプレーでも自然にできていた名選手は、そのプレーができるようになるプロセスを理論立てて把握していないため、どのように教えたらよいのか分からない。そのため、適切な指導を施すことができずに選手が育たない」といった趣旨のものですが、「当たり前」のことに関する問題もこれと同様の構図です。

そのため、教育上手の「名監督」になるためには、まずは“ブラックボックス化”しがちな「当たり前」のことを明らかにする必要があります。

「名監督」になるための事前準備1:作業手順などを子細に分解する

名監督になるための第一歩は、教えるべき業務について、自分がやるときの作業手順や注意点を細かく書き出してみることです。自身が「当たり前」のことと思っていることでも、そのプロセスには、さまざまな手順や注意点があります。

ここでは分かりやすい例として、小さな子供に「電車に乗って遊園地に行く方法」を教える場面で考えてみましょう。もし、大人に教えるのであれば、「自宅近くの□□駅から○○線に乗って、最寄り駅の△△駅で下車し、そこから徒歩数分で遊園地に着く」といった程度の説明で十分です。

しかし、小さな子供に教える場合には、そうはいきません。例えば、自宅近くの駅に着いてから電車に乗るまでのわずかな間をみても、「券売機の場所」「切符の買い方」「改札口の通り方」「電車に乗るホームの番号」などを細かく教えなければなりません。ときには、料金表や時刻表の見方なども教える必要があるでしょう。

大人にとっては、「当たり前」のことばかりですが、子供にとっては分からないことだらけなのです。

このように、教える側にとっては、「当たり前」であっても、教えられる側にとっては「当たり前」ではないということは数多くあります。こうした点を見落とさないためには、まずは業務を行うための作業手順や注意点などを子細に書き出すことから始める必要があるのです。

「名監督」になるための事前準備2:「目的」や「理由」を整理する

もう一つ大切なことは、業務や作業手順について、「何をするために、そうしているのか」「なぜ、そうしなければならないのか」という、目的や理由も書き出すことです。これは、実際に教えるときに、業務や作業手順を理解してもらうために必要になります。

先の例でいえば、ただ、「切符を買ってから、電車に乗る」ということだけを覚えさせようとしても、なかなか子供の記憶には残らないものです。一方、手順とともに「目的地までの切符を購入しなければ、電車には乗ることができない」という、その手順でなければならない理由も教えることで、手順自体が忘れにくくなると同時に、理解も深まるようになります。

チェックシートで“ブラックボックス化”を防ぐ

こうした整理された事項は、教育に際してのマニュアル、あるいは部下の業務に対する理解度や問題点などを把握する際のチェックシートとなります。

もちろん、これらの事前準備で十分とはいえませんが、ある程度「当たり前のこと」という“ブラックボックス化”しやすい点を明らかにしておくことで、教育における問題点を早期に発見したり、教える際の方法にも幅が生まれます。その結果、教育の効果も変わってくるはずでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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