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5Sの「整理」は、まず捨てることから

経営者としての見識を深めたい 2016年3月8日

「整理」の意味とは何か

通常「整理」といえば、「無秩序に散らかっているものを秩序立て、整えること」という意味で使われています。しかし5Sにおける「整理」は、「社内に存在するあらゆるものを、必要なものと不要なものに分け、不要なものを捨てること」を指します。

ものを捨てられない人は少なくありません。しかし、断捨離(だんしゃり)のように不要なものを捨てることは非常に大切で、それはビジネスでも同じです。必要なものを最大限に生かすことで生産効率が向上し、無駄のない生産体制が確立できるのです。

このことを経営者がしっかり認識し、社員に伝えるところから5Sは始まります。捨てることをためらっていると、不要なものが増え、より多くの保管スペースが必要になります。また、社員の貴重な時間を使って、不要なものの中から必要なものを探すのは、大きな時間的ロスにもなります。社員の時間を無駄に使わずに本業の効率を高めるためには、整理が非常に重要なのです。

整理の手順~順序立てて整理を進める

ある人にはごみのように見えるものであっても、実際にそれを使っている人、あるいはその現場で働いている人にとっては、それが必要なものであることも考えられます。こうしたことを考えていると、整理活動中に、「これは捨てていいものか?」「この資料は使っている人にしか分からないので手がつけられない」というように、時間的にロスが生まれてしまいます。そうならないためにも整理する前に、一定のルールや手順を決めておきましょう。

整理の手順は次の通りです。

  1. ステップ1:整理する基準を明確にする
  2. ステップ2:必要なものと捨てるものを選別する
  3. ステップ3:1の基準に従い、整理を実行する
  4. ステップ4:不用品リストを作り、分析する
  5. ステップ5:1~4の手順を定着させる

ステップ1:整理する基準を明確にする

まず賞味期限や消費期限と同じように、整理対象物の廃棄基準を明確に決めましょう。基準を決める際には、大きく「期間」と「数量」の2つの視点が用いられます。

「期間」の場合は、「ある期間を定め、その期間中1度も使わなかったものを捨てる」という基準にします。例えば期間を1年と定めた場合、単純に1年間使わなかったものを捨てるため、非常に分かりやすいというメリットがあります。

しかし、「普段は6カ月に1回使っているが、生産ラインの不具合で今年はたまたま1年間使用しなかった」という場合や、「価格が安かった時期に大量に買い置きしておいた」ということもあるので、その点には注意が必要です。  「数量」の場合、「ある期間を定め、その期間中に使用する数量を超えたものは捨てる」という基準にします。例えば1カ月に1キロ使う材料があった場合、その材料は半年で6キロ、1年で12キロ使うことになります。その際、基準を「1年(=12キロ)」と定め、それを超える在庫を捨てていくというのが、この方法です。

この場合、在庫が最小限に抑えられるというメリットがあります。しかし、全ての整理対象物に対して厳格な基準設定をしないといけないため、設定に時間がかかるというデメリットもあります。矛盾するかもしれませんが、数量を基準にしないという選択肢も考えてみましょう。

ステップ2:必要なものと捨てるものを選別する

基準ができたら、次は対象物の選別に入ります。資料・工具・設備・材料・備品などあらゆるものを整理対象物とみなし、いるものといらないものに選別していきます。その際、次のように2段階にわたって選別すると効率的です。

  1. 「使うもの」「使わないもの」「使えないもの」に分ける
  2. 上記1で「使うもの」として選別したものを、さらに「頻繁に使うもの」「たまに使うもの」「使う可能性のあるもの」に分ける

使うものであっても、その頻度が極端に低いものや明確な用途が見つからないものなどを、不要なもの(整理対象)に入れてしまうというのがポイントです。残しておいても何の付加価値も生み出さないため、思い切って捨ててしまうことが肝要です。

また、この工程によって選別されたものを「整理基準表」にまとめ、現場の目立つところに張ったり、管理者やチームリーダーに渡しておくなどして、認識にズレがないようにしておきましょう。

ものの選別

ステップ3:1の基準に従い、整理を実行する

ステップ3では、ステップ1の基準に従い作成した「整理基準表」に沿って整理を実行していきます。その際、必要なものを捨ててしまわないようにするため、整理対象品に「処分ステッカー(不用品伝票)」を貼っていきます。

処分ステッカーには、品名(品番)、数量、分類、処分理由、処分方法、処分期日、判定者、判定日などを記載しておきます。この処分ステッカーを管理者に配布し、整理当日までに貼り漏れのないようにしておきます。

整理当日は、必ず整理基準表と処分ステッカーの両方を見ながら、整理を実行していきましょう。

ステップ3は、ステップ1、2とは異なり、判断を伴わないため、管理者でなくても実行できます。基準に沿って円滑に整理を実行しましょう。ただし、ステップ1の基準に曖昧な点があり、捨てる際に最終的な判断が必要な場合は、管理者に指示を仰ぎます。実際に整理を行う際には、管理者立ち会いの下で、慎重かつ大胆に行うとよいでしょう。

ステップ4:不用品リストを作り、分析する

処分が終了したら、整理対象品に貼られていた処分ステッカーを、整理を行った部門ごとに回収し、「不用品リスト」を作成します。処分ステッカーに書いてある数量、分類、処分理由、処分方法をまとめ、集計・分析を行うことで、今後不用品が出ない仕組み作りに役立てられます。ある意味では、このステップ4が最も重要な工程だといえるでしょう。

不用品リストは、生産管理にも活用することができます。処分品の金額や数量から生産管理を行うことで、売上高や粗利益率といった表面上の数字に惑わされることなく、より正確な経営管理が可能になります。

ステップ5:1~4の手順を定着させる

これらの手順を社員および現場に定着させ、継続していくことが大切です。実はこのステップが一番難しく、一度整理を行っても、すぐに元の乱雑な現場に戻ってしまう企業も少なくありません。コツとしては、整理活動を導入した数年間は、こまめに実践することです。

整理する際のポイント

整理は5Sのスタートラインといえる重要な工程です。これまで見てきたポイントを十分に理解し、5Sを定着させる土台を作りましょう。

なお、工場でも事務所でも手順は同じです。事務所の場合は、文房具や書類などが中心になります。特に書類はたまりやすいので、在庫と同じく期間を「1年」「6カ月」「3カ月」「1カ月」と基準を設けて、処分していきましょう。今どきは紙で保管せず、データ化・クラウド化するなどを検討することも一策です。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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