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5Sの「しつけ」は、経営者の率先垂範がカギ

経営者としての見識を深めたい 2016年3月12日

「しつけ」の意味とは何か?

「しつけ」は5Sの最後の項目であり、これまでの内容を全て加味した広い概念です。これまでと同じように、5Sも1つ前の4Sをベースにしているため、4Sをしっかり行っていれば、既に5Sもできていると考えてよいでしょう。

「整理・整頓・清掃・清潔」の活動を振り返ってみると、まず「整理」で捨てるものと捨てないものの基準を作ったり、「清掃」で汚れへの対応方法を決めたりと、実にさまざまなルールの下で実行してきました。

「しつけ」とは、これまで決めてきたさまざまなことをしっかり守ることを意味しています。つまり、ものや場所を対象にしてきた4Sに対し、「しつけ」は、ルールや決まりを守る「人そのもの」を対象にした概念といえます。これまでの取り組みで、既に誰が見てもきれいで、効率的な状態が確立されています。それをさらに一歩進め、きれいな状態を常に維持できる人を育てて初めて、5Sが完成するというわけです。

5Sが完成した企業では、全ての社員が会社や仕事に誇りを持ち、生き生きと仕事に励んでいます。ここまでの状態に持っていくには大変な労力と時間を要しますが、それに見合うだけの成果が必ずあります。企業や社員をぜひともこのレベルにまで引き上げ、自他共に認める「優良企業」になりましょう。

しつけを徹底することで人は育つ

しつけを一言で表すと、「社会の一員として周囲のことを考え行動できる人を育てる」ということになります。

整理・整頓・清掃で決められたルールを守ることは、4Sの時点で既に達成していますが、5Sではそれら以外にも、「明るくあいさつをする」「身だしなみを整える」「靴を脱いだらきちんとそろえる」「時間を守る」「就業規則を守る」「廊下を走らない」「周りの人と協力する」といったさまざまなことを守ることが求められます。

つまり、4Sまでは「ルール」を守っていればよかったものが、5Sでは「マナー」や「モラル」といったところまで守る範囲を広げることになります。

また、5Sの段階では、決まりを守るということを習慣化するのを目的としています。つまり、当たり前のことを当たり前にできる人材を育てていくことが、しつけの最終的な目的といえます。

社会人にとって社会の秩序を守り、周囲と協調して生きていくことは最低限のルールです。「当たり前のことを当たり前に行うこと」とは、基本に忠実ということであり、これが成長・発展のベースになります。

誰が誰をしつけるか?

5Sでは「社員全員が」「社員全員に対して」しつけを行っていきます。このレベルまでくると、既に誰が優れていて、誰が劣っているといった区別はなくなっています。また、社員の5Sに対する意識も高まってきており、「誰かに教えてもらおう」という受け身の姿勢でいる社員はいないはずです。社員全員が同じ意識を持ち、お互いが教え合って成長していくことが、しつけの目的であり手段でもあるのです。

5Sでは肩書や役職は一切関係ありません。ルールを守れなかった場合は、たとえ経営者であっても、素直に謝る姿勢が大切です。むしろ経営者が率先してけじめをつけることで、他の社員への戒めとすることが必要です。率先垂範の言葉通り、経営者自らが規範になり、社員を律していきましょう。

また、社員一人ひとりが常に自分を律する姿勢でいることも、5S達成には必要な要素です。自分で自分をしつけるというのは、いささか変な気分ではありますが、4Sを乗り越えてきた社員なら、きっとできるでしょう。

社員が気持ちよくルールを守れるような仕掛けを考える

本当の意味でしつけを徹底するためには、なるべく罰則を使用せず、全員が気持ちよくルールを守れるような工夫が必要です。

コンビニエンスストアなどのトイレの張り紙が「きれいに使いましょう」ではなく、「きれいに使っていただきありがとうございます」に変わってきているように、注意したり叱ったりするよりも、褒めたり感謝したりすることに重点を置いたほうがうまくいきます。しつけの工夫の例としては、次のようなことが考えられます。

  1. ルール違反をしたときは叱り、ルールを守ったときは叱るときの10倍褒める
  2. 定期的に優良社員をチーム全体で褒める会を開く
  3. 優良社員を朝礼で表彰する
  4. お客様や外部の人が社員や企業を褒めたら、即座にそれを社員全員に伝える
  5. 「お客様からのお褒めの声」というノートを作業場に常備し、誰でもすぐに見られるようにする
  6. 企業全体で月間、四半期、年間それぞれの優良社員にMVPを与え、表彰する
  7. ルール違反をしたときは、罰則ではなく罰ゲームを科す

このときに大切なことは、「いいことをしたら大いに褒め、悪いことをしたらきちんと叱る」という信賞必罰の意識を徹底させ、それを実現する仕掛けを用意しておくことです。

これらの仕掛けを行う際には、全員がルールを守ることの意味や大切さをしっかり理解していることが大前提です。なぜルールを守らなくてはいけないかをきちんと説明し、時には経営者自らが行動をもって理解させるとよいでしょう。

チェックシートで自己管理

5Sの最終チェックには、チェックシートを用いましょう。これまでの活動がきちんと定着しているかを確認するとともに、自己管理にも大いに役立ちます。チェックシートでは次のような項目を記載しておきます。

  • いらない工具や資料などを手元に残してはいないか
  • いらないものに処分ステッカーが貼ってあるか
  • 整理基準は現場を圧迫していないか
  • 使いやすい配置・戻しやすい配置になっているか
  • 誰でもすぐに必要な工具を取り出せるか
  • 自分なりの改善案・工夫が反映されているか
  • 共有スペースも進んできれいに清掃しているか
  • 清掃用具は決まった場所に置いてあるか
  • 汚れが発生したらすぐに除去しているか
  • 3Sは維持されているか
  • 清潔に対する現場の意識は高いか
  • 時間を守れているか
  • 社員同士であいさつがされているか
  • 5S責任者、および指導者は、きちんとその役割を全うしているか
  • 会社は5S活動に対し、積極的に支援しているか

会社が決めたポイントやルールをまとめたチェックシートをベースにして、社員一人ひとりに自分なりの重点項目や改善案といった新たな項目を追記させた「独自のチェックシート」を作らせると、社員の5Sに対する意識の維持・向上に大いに役立ちます。

社員のチェックシートをまとめて、さらに詳細なチェックシートを

チェックシートは、現場の社員の意識を高める効果の他、チェックシートを月単位・年単位でまとめて集計・分析することにより、新たなルールや詳細なチェックシートを作ることにも役立ちます。集計の際は、それぞれの社員の立場・現場・経験などの違いによって分類したり、分析方法を変えたりすると、より的確な改善点や問題点が浮かび上がってくるかもしれません。

社員一人ひとりのチェックシートに書かれた改善点・不満・提案などをまとめ、社内に掲示したり、チェックシートに採点欄を加えて管理者や5S推進委員用の詳細なチェックシートにするといった工夫を重ね、さらなるステップアップを図りましょう。

さらに5Sを適用する範囲を拡大する

5Sは使い方次第で、生産現場のみならず、社内のあらゆる部署・職種・場所に使えます。例えば5Sを事務系の業務や新入社員の教育・研修に応用するなども考えられるでしょう。

5Sに終わりはありません。経営者は決まったやり方をなぞるだけで満足するのではなく、自社の規模や特徴に適した新たな5Sを作り上げることが大切です。

経営者が先頭に立ちながら、社員とともに努力と工夫を続けるという「全員参加」の精神で真の5Sを実現させ、より魅力的な会社にしていきましょう。

常にきれいで生産性の高い職場であれば、“次のビジネスの種”にチャレンジする余力と活力も生まれます。5S活動を実践し、全社員一丸となって会社の未来を作っていきましょう!

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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