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中小企業の事業承継。自社株式の評価

経営者としての見識を深めたい 2020年4月27日

事業承継における現状分析:自社株式の評価

事業承継の検討の第一歩として自社株式の評価額を把握し、正確な現状分析をしなければなりません。本稿では事業承継のコスト面に直結する自社株式の評価について紹介します。

自社株式の評価方法は、「原則的評価方式」と「例外的評価方式」のいずれかの方法により行われます。「同族株主」間の相続や贈与に係る株式については原則的評価方式、それ以外の少数株主や同族株主以外の株主が保有する株式については例外的評価方式でそれぞれ株価を評価します。

なお、原則的評価方式が適用される「同族株主」とは、株主1人およびその「同族関係者」(詳細は後述)の保有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の30%以上である場合の、その株主およびその同族関係者をいいます。ただし、その会社の株主のうち、株主の1人およびその「同族関係者」の保有する議決権の合計数の最も多いグループが、その会社の議決権の50%超を保有している場合には、その50%超の議決権を保有する同族関係者グループだけが「同族株主」となり、その他の株主グルーブが30%以上の議決権を保有していたとしても「同族株主」とはなりません。

ただし、「原則的評価方式」が適用となる株主は、上記の「同族株主」がいる場合の他、他の「同族関係者」グループの議決権割合に応じて、様々な場合に該当する可能性があります。そのため、実際の評価に当たっては税理士、会計士などの専門家に助言を求めるようにしてください。

「原則的評価方式」による評価

原則的評価方式は会社規模などにより、類似業種比準方式と純資産価額方式の折衷方式、または純資産価額方式で評価する方法をいいます(詳細は後述)。なお、原則的評価方式による評価は、1.会社規模の判定、2.特定会社の判定、3.株式の評価方式の決定の順に行います。

原則的評価方式のフローは次の通りです。

原則的評価方式のフロー

1)会社規模の判定

会社規模はその株式を発行した会社(以下「評価会社」)の「従業員数」「総資産価額」「取引金額(売上高)」により判定し、「大会社」「中会社の大・中・小」「小会社」に区分します。

1.従業員数が70人以上の評価会社は、「大会社」に該当します。
2.従業員数が70人未満の評価会社は、次の図表2に基づき、取引金額基準、従業員数を加味した総資産基準でそれぞれ会社規模の判定を行い、いずれか大きいほうの会社規模を採用します。

会社規模の判定は次の通りです。

会社規模の判定

例えば卸売業で「取引金額」6.5億円、「従業員数」51人、「総資産価額」5億円の会社は、取引金額基準では「中会社の中」となり、従業員数を加味した総資産基準では「中会社の大」となり、企業規模の判定は大きいほうの「中会社の大」に該当します。

2)特定会社の判定

評価会社が次の特定会社に該当する場合は、一般の評価会社とは資産の保有状況や営業の状況が異なるため、後述の評価方式の決定にかかわらず、原則として「純資産価額方式」により株価を計算することとなります。

通常は「純資産価額方式」によって計算すると株価が高くなるケースが多いため、十分な注意が必要です。

1.株式保有特定会社
株式保有特定会社とは、評価会社の相続税評価額による総資産のうち、保有する株式および出資(以下「株式等」)の価額の合計額の占める割合が50%以上の会社をいいます。

2.土地保有特定会社
土地保有特定会社とは、評価会社の相続税評価額による総資産のうち、保有する土地などの価額の合計額の占める割合が次に該当する会社をいいます。

土地保有特定会社の判定割合は次の通りです。

土地保有特定会社の判定割合

3.比準要素数1の会社
比準要素数1の会社とは、類似業種比準方式の計算の基となる「配当」「利益」「純資産」の3つの要素の直前期における金額のうち、いずれか2つの要素の金額がゼロまたはマイナスであり、かつ直前々期における2つ以上の要素の金額がゼロまたはマイナスである会社をいいます。

4.開業後3年未満の会社
課税時期において開業後3年未満の会社をいいます。

5.比準要素数0の会社
比準要素数0の会社とは、類似業種比準方式の計算の基となる「配当」「利益」「純資産」の3つの要素の直前期における金額が、いずれもゼロまたはマイナスである会社をいいます。

6.清算中の会社

7.開業前または休業中の会社

3)株式の評価方式の決定

上記の特定会社に該当しない場合は、会社規模に応じて評価方式を決定します。

評価方式の決定は次の通りです。

評価方式の決定

4)類似業種比準方式

類似業種比準方式とは、評価会社の「配当」「利益」「純資産」の3要素を基準にして類似する業種の上場会社の株価に比準して株価を計算する評価方式です。

類似業種比準方式の計算方法は次の通りです。なお、業種および比準する株価等の数値は国税庁が公表する「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」から選定します。

類似業種比準方式の計算方法

5)純資産価額方式

純資産価額方式は、会社の資産の額から負債の額を控除した純資産価額を自社株式の価値とする方式です。これは会社の清算価値に着目した評価方式ともいえます。

純資産価額方式のイメージ図と計算方法は次の通りです。

純資産価額方式のイメージ図

純資産価額方式の計算方法

例外的評価方式による評価

同族株主以外の株主や同族株主のうち少数の株式を有している株主が取得した株式については、会社の規模にかかわらず、例外的評価方式である配当還元方式により株式評価を行います。

配当還元方式の計算方法と計算例は次の通りです。

配当還元方式の計算方法と計算例

以上
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2020年3月1日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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