経営者としての見識を深めたい

2016年10月11日

守屋淳の、渋沢栄一から経営者への手紙/ 渋沢栄一の生涯(5)

リーダーシップ 渋沢栄一

bp100032

政治家のための倫理を、商人向きに読み替えると……

実は、渋沢栄一の『論語』解釈には、かなり無理をしている部分があります。その端的な例が、以下の一節にまつわるもの。

・孔子が言った。「人間であるからには、だれでも財産や地位のある生活を手に入れたいと思う。だが、しかるべき役割を任された結果手に入れたものでないなら、しがみつくべきではない。逆に貧賤な生活は、誰しも嫌うところだ。だが、しかるべき役割を任されずにそうであるなら、そこに甘んじるべきだ」(子曰く、「富と貴きとは、これ人の欲する所なり。その道を以ってこれを得ざれば、処らざるなり。貧しきと賎しきとは、これ人の悪む所なり。その道を以ってこれを得ざれば、去らざるなり」)『論語』里仁篇

この言葉、大本の状況を考えれば、とても簡単に解釈できます。つまり、孔子というのは自分がよき政治家や官僚になって活躍し、また、自分の弟子たちもそうなって欲しいと育てていた人でした。政治家や官僚というのは公僕である以上、自分の私益を公益よりも優先する態度は厳禁。もちろん政治家や官僚も生活者である以上、生活費は必要ですが、しかし、それは追い求めるべきものではなく、より公益のためにこそ尽くすべきである……

しかし渋沢栄一は、これを商業道徳として明治の日本に入れ込もうとしました。商人というのは、政治家や官僚と違って、自分で稼がないと生活費はもらえない立場。何より、儲けるのが好きという気持ちが商売の最大の原動力だったりするわけです。さて、どうするか――

渋沢栄一の解決策は、次のようなものでした。これは彼の著した『論語講義』からです。

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