経営者としての見識を深めたい

2017年1月29日

経営者が発揮すべきリーダーシップの本質

リーダーシップ 経営者

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リーダーシップの正体

「どのように組織を率いていくべきか」、言い換えれば「経営者のリーダーシップはどうあるべきか」。経営者が常に持っている問題意識の1つです。経営者のリーダーシップの在り方次第で組織の成果は変わってきますし、内外に対する企業イメージを決定づけることもあります。経営者にとってのリーダーシップはそれほど重要なものなのです。

リーダーシップに関する理論は大きく変わってきました。かつてはカリスマ性のような資質であると考えられていましたが(特性理論)、その後の研究により、優れたリーダーの行動を学ぶことで、リーダーシップを身に付けられることが分かりました(行動理論)。さらに、求められるリーダーシップのスタイルはその時々の状況によって変わる(条件適合理論)というのが、理論的なリーダーシップの1つの答えになっています。

つまり、「リーダーシップは継続的な努力によって手に入れることができ、絶対的な正解もない」と解釈することができます。ただし、このことを「先達に学びつつ、流れに任せればよい」と都合よく解釈して、漠然とリーダーシップを発揮するのはいけません。経営者のリーダーシップは、ブレることのない芯(基礎)が通っていなければならず、同時にそれをどのように表に出していくのかという表現方法も重要になってきます。

マネジメントの父と呼ばれるP.F.ドラッカーの言葉に、経営者が発揮すべきリーダーシップのヒントがあります。P.F.ドラッカーの言葉は次の通りです。

「効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し、確立することである。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である」
(*)出所:「英和対訳 決定版 ドラッカー名言集」(ダイヤモンド社)

経営者には確たる信念があります。それは経営者が考え抜いた結果であり、また、さまざまな経験の中から培った経営哲学とも呼べるものです。これが経営者のリーダーシップの芯になるものです。また、ビジネスの目標や優先順位、基準は常に変わります。芯がブレることなく、しかも企業内外の状況に応じて柔軟に表現方法を変えることが経営者に求められています。

本稿では、経営者が発揮すべきリーダーシップについて、「ビジョンのバージョンアップと明文化(ビジネス環境が変化する中で、企業の方向性を再定義する)」「守りながら攻める姿勢を示す(既存事業を守りつつ、新規事業にチャレンジする)」「経営者の孤独は宿命?(刺激を受けて前を向くことが孤独とうまく向き合う方法)」をテーマにまとめます。

ビジョンのバージョンアップと明文化

「目的と目標は違う」というのはよく指摘されることですが、経営者が社員に強く示さなければならないのは目的のほうです。目的とは、企業が「将来、そのようになっていたい」という理想型であり、ビジョンです。

経営者には明確なビジョンがあります。しかし、ビジネス環境の変化によって、その内容に迷いが生じることもあります。例えば、中小企業では経営者の高齢化が進み、事業承継のタイミングが近づいてきているところが増えています。

自分が起業した頃と比べてビジネス環境が様変わりしている中で、企業のビジョンを改めて考える必要があるかもしれないと認識している経営者は少なくないはずです。特に、本業のさらなる成長が見込みにくくなっている場合や、後継者に企業を継がせるかどうかを検討している経営者にとっては切実な問題です。

もし、経営者がこれまでのビジョンに対する迷いを持っているのであれば、それをバージョンアップしなければなりません。ビジネスの流れを読む経営者が、ビジョンや事業方針を変えるのは不思議なことではありません。

ビジョンをバージョンアップしたなら、それを分かりやすい言葉でまとめて社員に伝えましょう。ビジョンをバージョンアップした理由を社員がきちんと認識していなければ、組織の原動力は損なわれます。現場の部長クラスがちょっとした方針転換を指示するのと、企業の針路を変えるのとではレベルが全く違います。企業の針路を設定し直すことができるのは経営者だけなのです。

経営者の高齢化が進む一方で、テクノロジーが目覚ましく進化する現在、経営者に求められるリーダーシップの要素として大切なことは、ビジョンに代表されるような企業の進むべき道を再定義し、それを分かりやすい言葉で社員に示し、実際に組織を動かしていくことだといえるでしょう。

守りながら攻める姿勢を示す

「ビジネスは行動が全て」といわれます。頭で考えているだけでは何も進まないどころか、顧客のニーズの変化や競合の攻勢を受けて失速していくだけです。そのため、経営者は現場の長と連携しながらビジネスプランをオペレーションに落とし込み、その確実な遂行を後押ししなければなりません。

このとき、経営者のリーダーシップによって、組織がどのような意識やスピード感を持って経営戦略を遂行できるかが決まってきます。

何もないところから新しいものを生み出していく「0→1(ゼロイチ)」は難しいものです。同様に、既に1を確保している企業が「1→2(イチニ)」を目指すことにも違った難しさがあります。経営者も社員も既存の1を守りたいのは当然です。しかし、何か新しいことをやろうとすれば、「1→0→2(イチゼロニ)」のように、既存の1が失われることも覚悟しなければなりません。事業承継はもちろん、第二創業を考えている中小企業の経営者が頭を悩ませていることの1つも、守りながら攻めるという難しさではないでしょうか。

こうした経営者の悩みや迷いは組織に伝播し、変革の機会を逸します。既存の1を守るのか、0にする覚悟を持つのか、それは経営者にしか判断することができない重大な問題です。

大切なのは注力すべきところを決めて、リソースを投入することです。どのような道に進もうとも、何かを少しでも変えるのであれば、犠牲にしなければならないことが出てきます。しかし、経営者がそうと決めたならば、強い信念を持って行動する姿勢を示さなければなりません。そうした経営者の強い決意と力強い姿勢も、経営者が発揮すべきリーダーシップなのです。

経営者の孤独は宿命?

「一度決めたことにこだわる」のは大切なことですが、こだわる部分を間違えてはいけません。経営者がこだわるのは、企業経営の根幹となるビジョンであり、枝葉末節のオペレーションの問題ではありません。

ビジョンは、経営者がこだわり抜く“コア(中心)”です。これを大切にしたいという思いがあるからこそ、ビジョンを達成するための手段である事業方針については、柔軟に見直すことができます。A事業よりもB事業のほうがビジョンを達成するために良いと考えれば、柔軟に方針を変えるということです。

一方、こうした判断は経営者にとっては当たり前のことでも、経営幹部を含め、周囲には理解できないことがあります。周囲の人は、経営者の勝手な方針転換で、自分たちの就業環境が変わってしまうと抵抗を感じるのです。

経営者は考え抜いた末により良いと信じる選択をしたが、それを周囲は理解しない。経営者が孤独を感じる1つのパターンですが、企業の将来を決定づけるような重大な意思決定をする経営者は、これを避けて通ることはできないでしょう。また、経営者が感じている孤独を社員に理解してほしいというのもお門違いです。

誤解を恐れずにいえば、社員は経営者の方針転換が理解できないと不満を持つものの、その日の夜にお酒を飲んで忘れてしまったり、次の日に「経営者が言うのだから仕方がない」と受け入れたりするのが常です。つまり、悩みが浅いのです。

しかし、経営者は「自分が下した判断が正しかったのか否か」という問題意識を、自分がリタイアするまで持ち続けることになります。経営者はどこにも逃げることができません。

経営者が孤独とうまく付き合っていくためには、外部の経営者仲間と話をしてみることです。そうすると、「そうそう!」と意気投合できる経営者ならではの考え方を共有することができます。また、「自分の視点はまだまだ低くて視野も狭く、考えがまだまだ至っていない」と気付かされることもあります。こうした触れ合いの中から自分を高めるきっかけをつかみ、前進し続けることで経営者自身も成長します。こうして、かつて孤独を感じていたような問題でも、普通に対応できるようになっていくのです。

【参考文献】

(*)「英和対訳 決定版 ドラッカー名言集」(P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(編訳)、ダイヤモンド社、2010年12月)

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2017年1月20日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
代表取締役 松田泰敏/日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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