この記事のタグ: リーダーシップ

【後編】愛ある経営世界で活躍する イノベーター事業承継への思い

経営者としての見識を深めたい 2020年6月18日

人との出会いが糧に~Encounter gave me energy~

海外留学をきっかけに世界に目を向ける

代替テキスト

イノベーションやスタートアップ界隈のキープレーヤーである森若幸次郎(John Kojiro Moriwaka)(通称、Johnさん)氏。幼少期から人気者だったJohnさんが、海外留学で何を学び、その経験が今にどう活かされているのか。幼少期からオーストラリア留学までの生い立ちを追った前編に続き、今回は海外留学から現在に至るまでの後編をお届けします。









――日本を離れ、一番得られたものは何ですか?

John
オーストラリアには7年半いましたが、一番の糧となっているのは人との付き合い方です。今の人生にも活かされています。私はその後、ハーバードビジネススクールに進学しますが、オーストラリアの7年半がなく、いきなりハーバードに行ったら通用しなかっただろうと強く感じます。いろいろなことを言い合える人が私の周囲にたくさんいたことが、何物にも代えがたい財産でした。

それからシリコンバレーに6年間行ったり来たり。ここ2年は、シリコンバレーだけではなく、フランス、フィンランド、ルクセンブルク、イスラエル、インド、中国、マレーシアなども伺いました。どの国に行っても、日本人としての誇りや、日本の素晴らしいところが自然に理解できる瞬間があると、外国に行けば行くほど実感します。日本を離れたからこそ見えてくる「日本の美しさ、日本人の勤勉さ、真面目さ」に改めて敬意を表します。気がついたら、もう18年間、海外と日本を行ったり来たりしていて、世界中に友達ができ、私が東京にいれば東京に、下関にいれば下関に会いに来てくれる。海外の大企業の幹部などの友人もいますが、ともにハーバードで学んだ仲間なので、上下関係は一切なく、素晴らしい友好関係です。日本を離れて得たものは、一生付き合える友人でもあります。

やりがいを感じた海外でのバイト経験

――オーストラリアでも商売っ気は失っていなかったようですが?

John
もちろん。20代の頃には、シドニーのイベント会社で音楽イベントのプロモーションの手伝いなどをしていました。その会社を大きくするのを手伝ったことは、本当に良い経験でした。アルバイトでしたが、一番多く集客して、何度もベストプロモーター賞をいただいて、常に1位なので、その賞もなくなりました(笑)。イベント企画から集客は、今のスタートアップやイノベーションイベントを運営するのにすごく役立っています。

シドニーで、毎週日曜日に2時間生放送のラジオ番組に1年間出演し、好きなHIP HOPの曲などを流して、コメントをしていました。30万人弱のリスナーがいるラジオ番組で、実際にはリスナーが目の前にいたわけではありませんが、リスナーの顔を想像して、ニコニコしながら英語で面白いことを言う難しさと楽しさがありました。

オーストラリア最大の日本人向けのフリーペーパーのコラムニストもしていました。現地の人気DJなどに英語でインタビューして、それを日本語に自分で訳して、コラムを毎月書いていました。今もForbes Japan、りそな銀行、日刊工業新聞で、毎月コラムを書いていますが、その基礎を養うことができました。

英語漬けの日々を過ごしていましたが、4年くらい経ち、英語が上達してきてからは、日本語に飢えていたこともあり、シドニーの古本屋に行って日本の本を読みあさる時期がありました。特に松下幸之助さんなど、経営哲学に関心がありました。経営学や自己啓発などのジャンルを中心に読みつつ、日本の経営者は何を考えているのかを常に考えていました。

ハーバードビジネススクールで得たものとは?

――ハーバードビジネススクールでは何を学ばれましたか?

John
私が通ったのは、エグゼクティブ教育のPLD(Program for Leadership Development)という「リーダーシップ開発プログラム」でした。企業の歳入が約90億円以上で10年から15年くらいのプロフェッショナルとして実務経験があり、将来リーダーになる見込みの高い人が採用されます。グローバルリーダーに必要な会計や金融の基礎知識から始まり、ビジネス戦略、マーケティング、オペレーション、組織改革する上でのリーダーシップ、政界や経済界の著名人からプレゼンテーションスキルやビジネスの心得なども学びました。ケーススタディでは、多くの企業の成功事例だけではなく、失敗事例も取り扱われ、どうしたら企業を再生できるかなども議論され大変勉強になりました。

――ハーバードビジネススクールで、一番何を得ましたか?

John
著書「ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?」(学研プラス)にも書きましたが、ハーバードでは、世界中で活躍している卒業生と繋がれるから、世界を本当に変えられるということです。世界の企業のリーダーは、ハーバード出身者が多いです。本気で世界をより良くすることを、同窓生達と毎年開催されるハーバードのサミットなどでお会いしたときに話す機会を作ろうと思えば可能になります。一生お付き合いしたいと思える尊敬できる友人が世界中にできたことが一番の財産です。

ハーバードビジネススクールの教室、一番手前の右側がJohnさん

「さらけ出す」が大切~Exposing myself~

これからの自分が果たすべき役割とは?

――Johnさんは、どんな人になりたいという願望はありますか?

John
10代の頃は体を鍛えて強くなろうと、20代は勉強して偉くなろうと、30代の今は、良い人になろうと思っています。最終的には、心の強い人が一番優しくなれると思っています。10代の頃の私は、心に余裕がなかったのでしょう。自ら「俺はボスだ」なんて言っていましたが、言わずとも顔を見れば慕われる人や、魅力的な人は分かるものですよね。

現在はもっぱら、主役になり得る人を作る役割に徹しています。自分以外の主役を作るために奔走しています。

これから頭角を現すと感じられる若手に対し、アクセラレーターとして手を差し伸べていきたいと思っています。これからは当然、若者の時代なのですから。日本では、次に頭角を現す人にはスポットが当たりにくい。そんなカルチャーを少しでも変えられればと思っています。

「人を魅了させる」の本質は?

――話が全く飽きませんね。Johnさんが考える「人を魅了させるコツ」とは何ですか?

John
虚栄を張らず、自分のダメな部分をひけらかすことではないでしょうか。自分のできなかった経験をさらけ出すことが大切です。周囲に対して自分を閉ざすのではなく開放すると言いますか。ただ、こんなこと言っていますが、私は人の懐には入ろうとは思いません。「お前は人と違っていて当たり前」という父の教えが植え付けられているせいか、自分らしくいることが人生でもビジネスでもすごく大切だと思います。

――Johnさんは確かに違う。けど「さらけ出す」は魅了させる本質かもしれませんね。

John
私も以前は人の顔色ばかりうかがっていました。しかし周りは気にしなくていい。自分に目を向けるべきです。裏表なく自分を表現することのほうが大切なのではないでしょうか。さらけ出すとは、「自分らしく振る舞う」ということです。常に、人間力を磨き、素晴らしい人間、リーダーになる努力は続けることが大切だと思います。自分という商品を常にアップデートしていくイメージです。

とはいえ、無理にさらけ出さなくてもいいと思います。むしろ、さらけ出さないほうがうまくいくこともあるかもしれません。例えば小さな町工場。経営者がウィットに富んだ会話などで従業員と接すると、逆に相手がやりにくいかもしれません。何事も極端は良くありません。ほどほどがちょうどいいのではないでしょうか。

よく感じるのですが、特に日本人は相手との距離を測り損ねているように思います。例えば、日本人が外国人と商談の場に臨む場合、プレゼンテーションをしただけで満足してしまう。しかし、外国人から見ると、商談だけでは相手が何を考えているのかよく分からないし、何よりそれだけでは信用しません。実は、その後が大切です。お茶をしてもいいし、夜一緒に飲みに行ってもいいでしょう。表面的な付き合いではなく、人として深い付き合いが必要だとつくづく感じています。自分を「さらけ出す」とはこういうことなのではないでしょうか。

とはいえ、これは難しい問題です。今、私も父が経営する会社を承継しようと考えていますが、従業員とどう接すればいいのか、どう褒めればいいのかに注意しています。

事業承継と今後の夢~Business succession and dream~

2代目として会社を引き継ぐ覚悟とは?

――日本の経営者の多くは事業承継でも悩んでいると思います。

John
父の会社を承継することは、不安と希望の両方があります。ものすごく責任を感じています。一方、父は私に継いでくれとは一切言いません。むしろ、私の可能性をつぶしてしまうのではないかと考えているのではないでしょうか。

ただし、私の海外とのコネクションやシリコンバレーでのさまざまな実績など、持ち帰れるものは持ち帰って会社に還元してほしいとは言われていますね。

――事業承継を円滑に進めるのに必要なことは何だとお考えですか?

John
ただ気持ちだけで事業を続けようと考えるのではなく、継続性、成長性が本当にあるのかを見極めるべきでしょう。その上で、成長するなら勝負すべきだし、なければ売却したり、清算したりしてお金に換えてしまってもいい。創業者なら相当苦労されてきたのでしょうから、それはそれでご褒美として受け取ればよいのではないでしょうか。

私たちの場合、父の会社は医療機器を取り扱っています。創業してから48年間、地域密着で、地域医療に貢献してきた会社です。

もちろん従業員のため、私の家族のため、そして医療機器や福祉機器が必要な病院や福祉施設や患者さんのため、こうした人たちのためにも会社をきちんと運営していく覚悟を持っています。

ワンマン社長で後継者不足に悩んでいる会社の中には、いい会社もたくさんあるはずです。こうした会社に日の目が当たるよう、私自身も何かしらのサポートや取り組みで貢献できればいいなと思っています。

――会社を長く続けるにはどうすればいいとお考えですか?

John
父の会社の場合、「地域密着」がキーワードです。その地元から抜け出せないくらいの密着度です。しかし、だからこそ長続きできるのではと考えています。地域でナンバーワンというのは、すごく重要で意味のあることだと思います。

急成長しないことも大切ですね。日本のバブル経済も中国の成長も普通ではなかったからこそ早くに終わりを迎えるのではないかと思っています。先ほどから何度も申し上げている通り、ほどほどであることが美しい成長曲線を描けるのではないでしょうか。

最近は、すでに頑張っている社員や仕事関係者の方々にお会いする度に、「たまには休んでください、息抜きしてください」と伝えています。もう頑張っているのを知っているから、あとは、チームワークをより良くしたり、制度を整えたりすることが大事ですね。仕事がしやすくなる制度があれば、より良いカルチャーが会社に浸透すると思います。

――Johnさんなら無事に承継できると思います。

John
20代の頃までは、医療機器企業の後継は難しそうだから、不安でいっぱいでした。ただ、私は経営者という役職をこなせばいいのだと気づきました。つまり、チームで取り組むべきだと。自分であれもこれも直そうとは思っていません。経営者として必要な人材を集めるのが私に課せられた仕事の1つなのではと思います。

事業は必ずしも規模ではないことは承知しています。しかし、規模が大きくなれば、新たな一手を打ちやすくなる。いろんな事業にチャレンジしたいですね。規模にも目を向け、取り組んでいきたいと思っています。

私の場合、これまでの人生で数多くの失敗を繰り返してきました。それでも見ている人は見てくれている。今与えられている仕事に責任を持ち、一生懸命働くことが大切であるという信念は、会社を継いでからも貫き通したいですね。

1000年後に「クレイジージョンがいたぞ!」って言われたいですね。日本やイノベーションのカルチャーに一石を投じた人がいたぞって。

――Johnさんにとってイノベーションはこれからも追い求めますか?

John
以前は一人でイノベーションという畑を耕していました。一人で講演をして叫んでいましたが、今はおかげさまでいろいろな人と出会え、いろいろな人と協力して進められるようになりました。努力すればいい仲間に出会えると実感しています。そしてイノベーションも今は、実りの時期を迎えています。イノベーションの生態系を作るぞって叫んでいたのがようやく……。本当にうれしいことですね。

幼少期から、人を喜ばすことが大好きで、商売をしたり、お遊戯会やクリスマス会を企画したりしていました。今は、ゼロから1を生み出すスタートアップの支援や、イノベーションイベントなどを企画運営したり、その場で起業家達にインタビューしたり、自らも講演しています。多種多様な異業種のプロフェッショナルが交じり合うイベントを開催することで、新たなイノベーションが起こるカルチャーを日本全国に根付かせたいと思っています。

そして、日本全国、20代から80代まで3世代が仲良く働ける企業を増やし、世界中の人々、日本中の人々のより健やかな人生のために仕事を通じてイノベーションを起こしたいです。

グローバルハーバードビジネススクール PLDサミット in ボストン

経営者として万が一の場合に備えるべき

――順調なときだからこそ、事業を担う上でのリスクを意識していることなどありますか?

John
経営者となった私が突然倒れてしまったら、と順調なときだからこそ考えます。従業員や家族、そして患者さんに多大な影響を与えることになってしまうのですから。

そのための準備や備えは必要でしょうね。例えば保険。万が一の備えとして保険は有効な手段の1つでしょう。もっとも多くの経営者の方々は、すでにこうした備えをしていると思いますが。

仕事一筋のワンマン経営者なら、周囲のサポートも欠かせないのではないでしょうか。私の父は後先考えずに突進していくタイプでした。一方で母は慎重派。このバランスもリスクを回避するにはちょうどいい関係なのかもしれません。アクセルを踏み続ける父と、ブレーキ役の母がいて、ある意味、母が保険のような役割を担っているのかもしれません。

いずれにしても、両方の役割を一人が担えばきっと中途半端で、会社も成長できなかったと思います。父の勢いを止めることなく、必要に応じてストップをかけられる、信頼できるポジションが必要でしょう。

イノベーションによって世界が健やかに

――最後に、Johnさんが描く夢を教えてください。

John
まずは家業の医療機器イノベーション企業であるモリワカを継ぐこと。加えて、自分が創業したシリコンバレーベンチャーズで、中小・中堅企業をよりイノベーティブにすることで成長支援を実現すること。スタートアップ企業と大企業を繋いだり、海外のスタートアップ企業の日本進出を支援したりすることで、グローバルオープンイノベーションを起こし、日本と世界を元気にしたいと思っています。

実は今、誰もが知る某外資大手企業からヘッドハンティングのお誘いを受けています。しかし、そんな話をいただいても私がブレないのは、日本や海外の相場を把握し、状況を俯瞰(ふかん)して見ることができるからです。大手企業の一社員として働くより、中小企業の経営者として働いたほうがより多くのプロジェクトや経営支援ができ、他にもたくさんの中小・中堅企業の立て直しにも関われる。企業の名前やブランドより、何をする、したいのかを大事にしています。

私は幸せを「より健やか」と定義しています。そのためには「精神的、肉体的、経済的、社会的」の4つをバランスよく積み重ねることが重要だと考えています。まずは自分の心、体の健康。そして経済的なゆとり、人のために価値を提供する。この4つがあって初めて自分に自信がつくと考えています。

これは私がハーバードビジネススクールで学んだ後に、すぐに掲げたビジョンです。このビジョンこそが私そのものです。きっと世界が待ち望んだビジョンなんじゃないですかね。この4つの必要性に気がついてない人が多いのです。金だけとか体を鍛えるだけとか、社会貢献だけとか。4つをほどほどに整えるべきですね。それぞれ25%くらいのバランスで。極端に偏ることなく。

また、イノベーションによってより健やかになるよう目指しています。キーワードは「宇宙・医療・教育・芸術」。宇宙は次の世代に未来と希望を与える。医療は病気の人を救う、助ける。教育は、賢い人を生み出そうという教育から「いい人」を生み出す教育に変える。そして芸術では人の人生に豊かさを与える。これも私にとって叶えるべき夢ですね。

Innovations for a healthier life (世界中の人々のより健やかな人生のためにイノベーションを起こす)

幼少期より人を喜ばすのが大好きで、何かを企画し、運営することが得意になりました。それが今の仕事にも繋がって、イノベーションを生み出すカルチャーを作るためにスタートアップを支援するイベントなどを行っています。異業種のプロフェッショナルが集まることで、化学反応が起こる場作りが今の日本全国に必要なのです。ただスタートアップ企業を作ることだけを教えるのではなく、地域の課題を解決するイノベーション人材の育成も大学のアントレプレナーシップ教育で行っていきたいです。

良い人を作り、良い企業を作り、良い国を作りたいですね。イノベーションプロバイダーとは、イノベーションを生み出す「企画屋」だと私は思っています。世界のイノベーションハブと日本の全国の地方都市までを繋げて、イノベーションを企画して、運営していきたいですね。今日は、インタビューしていただき、「愛りがとう」ございます。

読者の皆様、一緒に世界中の人々のより健やかな人生のためにイノベーションを起こしましょう。それが日本の危機を救うことにも繋がると思います。

――素敵な夢ですね。今日はありがとうございました。

森若 幸次郎氏プロフィール(主な役職)
株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長兼CEO

スタートアップ、中小・中堅、大企業、大学、高専、学術研究都市向けイノベーション創出支援
http://siliconvalleyventures.site/

株式会社モリワカ 専務取締役兼CIO
医療機器イノベーション企業
https://moriwakamedical.wixsite.com/home

Startup Grind Tokyo ディレクター
シリコンバレー発で、世界120カ国、350都市で開催されているGoogleがスポンサーのスタートアップイベント
http://startupgrind.tokyo/

Startup World Cup アンバサダー シリコンバレー発の世界最大級のスタートアップピッチイベント
https://www.startupworldcup.io/

情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
就職率0%、起業率100%を目指す大学、2020年4月開校
https://www.i-u.ac.jp/

Forbes Japan、りそな銀行、日刊工業新聞 コラムニスト
ハーバードビジネススクール エグゼクティブ教育 PLD (リーダーシップ開発プログラム)修了
https://www.facebook.com/kojiro.moriwaka

■■■■■■
John Kojiro Moriwaka (Prof.)
Innovation Provider
Facebook:https://www.facebook.com/kojiro.moriwaka
Linkedin:https://www.linkedin.com/in/john-kojiro-moriwaka-431a334a/
Twitter:https://twitter.com/kojiromoriwaka?lang=en

Founder & CEO
Silicon Valley Ventures Co., Ltd
http://siliconvalleyventures.site/

Executive Vice President & CIO
Moriwaka Medical Co., Ltd
https://www.facebook.com/moriwakamedical/
https://peraichi.com/landing_pages/view/moriwakamedical

Co-chapter Director
Startup Grind Tokyo
http://startupgrind.tokyo/

Visiting Professor
i University
https://www.i-u.ac.jp/

Official Columnist
Forbes Japan、Resona Bank, Limited.、The Nikkan Kogyo Shimbun, Ltd.

関連記事