健康経営®のコラム

2017年5月22日

経営者に知ってほしい健康経営/第2回 健康経営が求められる背景

健康経営®

従業員の高齢化が今後さらに進んでいくことは、厚生労働省の人口動態統計からも明らかといえます。また、職場での転倒・転落による死亡者も増加しています。高齢化のみが原因であると決めつけることはできませんが、高齢化は侮れないのも事実です。ここで問題となるのが従業員の健康と体力です。生活習慣病は加齢とともに発症するリスクが高くなる傾向にありますが、予防することができます。そのため、従業員一人一人のヘルスリテラシー(健康を維持する上での知識等)を高め、自己管理能力を向上させることは、産業保健において重要な課題であり、企業経営においても求められるようになってきたのです。

労働生産性の問題については、プレゼンティーズムの解決が重要です。出勤しているのですが、職場環境や個人の健康上の問題等によって本来従業員が有している職務遂行能力が十分発揮されていない、というのがプレゼンティーズムと呼ばれているものです。職場の環境改善や、従業員の健康管理能力向上によって一人一人の健康と能力が高まり、経営者と従業員がお互いに両立(いわゆるwin-win)を可能とすることになります。

健康問題を解決するためには、経営者の推進力で、職場の健康づくり風土を醸成することが重要で、その結果、従業員の健康管理意識の向上が期待されます。まさしく、トップダウンとボトムアップの組み合わせで、健康経営が構築されることになります。

次に、業務が原因となり従業員に心身の疾病が発症した場合、事業者の安全配慮義務違反が問われ、また労働災害として認定されることなどが社会的に注目を浴びるようになってきました。このことは、高額な民事賠償や損害賠償の支払いが命じられる判決が報道されていることから明らかです。企業努力により経営面で大きな成果が得られても、従業員の健康問題で多額の賠償金を支払うことになれば、収益上の大きな問題とともに従業員の士気の低下が危惧されます。

また、現代社会では、企業価値が問われるようになっています。企業ブランドは、社会的存在として企業が必須とすべきものの一つであるといえます。企業規模を問わず、高品質の製品を生み出している企業は、社会から信頼という無形財産を付与されることになります。そしてその高品質を生み出すのが、労働品質の高い企業、すなわち働く人が健康であることといえます。

経済産業省が提唱する「健康経営銘柄」「ホワイト500」「健康経営優良法人」等は、企業ブランドを確立するものです。今後、ビジネスにおいて、企業価値を高めることは、ますます必要になってきます。従業員を大切にする企業にこそ将来が感じられ、大きな期待が寄せられるようになっていくでしょう。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2017年5月2日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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