健康経営®のコラム

2018年1月15日

経営者に知ってほしい健康経営/第10回 「ホーソン効果」を考える

健康経営®

健康経営においては、経営と健康の両立を図るための方策として、職場環境対策と職務コミュニケーションの充実が重要であるとしています。この両者は、従業員に対するストレス対策に有効であり、企業が直面する経営リスクを回避するための対策としても重要であるといえます。

快適な環境は、労働生産性を高めることは1920年代のホーソン工場での実験で明らかにされています。「賃金、休憩時間、軽食、部屋の温度・湿度等の条件を変更し、6名の女性従業員が継電器を組み立てる作業能率の変化を調査。どのような変更であっても作業能率は上昇し、かつ途中で元の労働条件に戻しても、作業能率が上昇した」という事実は、職場環境を変化させることで作業効率が向上することが示されたのです。しかし、途中で元の労働条件に戻しても、作業能率が上昇したのは何故でしょうか。

そこに隠されていた事実は、従業員たちが実験の対象として選抜されたことと職場コミュニケーションが図れたこと(仲間意識)で作業効率に変化をもたらしたことです。つまり、作業効率を向上させるために行った取り組みが、従業員のモチベーションを高めることになり、結果として労働環境に左右されずに作業効率が向上した、という仮定が導き出されたのです。

現代社会では、IT化は企業において必須となっていますが、果たしてIT化された職場で、従業員が一体となって仕事を頑張ることはあるのでしょうか。業績評価はすべて個人を対象としたものです。そこには、仲間意識よりは個人意識が色濃く出てくるような職場環境になっているのではないでしょうか。

しかし、職場は集団としての力が必要不可欠です。一人ひとりが企業の名前を背負っている限り、お互いの協力なくして大きな成果を期待することはできません。一人の不祥事で広く企業名が公表されることになり、多くの従業員のモチベーションが低下する可能性は極めて高いといえます。お互いのコミュニケーションの疎通は、健康面のみならず、業務遂行においても重要であることはいうまでもありません。

健康をお互いに気遣う仲間が集う職場は、お互いにいろいろな情報交換が可能だろうと思います。ちょっとした仕事上の疑問でも誰にでも、もしくは得意とする同僚に聞きやすい環境が醸成されていると、些細なミスが減るかもしれませんし、仕事が捗るのではないでしょうか。

耳学問は、職場においては大きな推進力となります。となりの人がどのような仕事をしているのかも知らない、ひょっとしたら、部下がどのような仕事をしているのか、または与えた仕事がどの程度まで進捗しているのか知らない上司がいるかもしれません。そのような職場は、もはや目的を一つとする集団ではなくなっており、烏合の衆となっているかもしれません。さて、あなたの職場はどのような集団でしょうか。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年1月10日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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