健康経営®のコラム

2018年2月14日

経営者に知ってほしい健康経営/第11回 「働くことの意味」雇用と失業

健康管理 健康経営®

世界保健機関の報告書で、「失業は、それ自体健康に対して悪い影響を与える。雇用されたことのない人々は、身体的・社会的健康に必要な自立性(identity)や帰属意識(sense of belonging)を労働を通して向上させる機会が全くない。そのような人々は、職場での健康情報を利用できず、労働と健康が相互によりよい方向に影響し合うことに関しても気がつかないであろう。さらに、彼らは自由時間が多いので、時に不安と抑うつが結びついて、就業者よりも酒、タバコ、薬物に溺れやすい。」(WHO Technical Report Series 765: Health promotion for working promotion. 1988 監訳 高田 勗 中央労働災害防止協会)と記載されています。

しかし、働くことについては、「労働は重要であり、また、自尊心(self-esteem)および秩序観念(sense of order)形成の上で大きな心理的役割を演じると指摘されている。そして、それは生存に活力を与え、日・週・月・年の周期的パターンを形成する。」として、企業が雇用を通じて社会の安定基盤を構築しているといえます。

毎朝元気に出勤する姿は、家族にとっても安心できますし、また、規則正しい生活は健康面においても大きな役割を果たすことになります。労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定し、労働者の心身の健康に対する配慮を義務付けています。雇用する事業者と雇用される労働者の間は、対等な関係となっています。

労働基準法第2条は、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」、とし、さらに、「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない」、と規定しています。お互いの信頼関係の上に労働契約が結ばれていることから信義則としての仕事によって生命や健康等が脅かされることがないように注意する義務が事業者に課せられているのです。

賃金が支払われていることは、プロフェッショナルとしての仕事をしなければならず、そこには責任が発生することになります。いつも健全な業務が提供できるように、健康状態を維持することは労働者にとっての義務(自己保健義務)ですが、一方、事業者は、労働者が仕事で健康を害することがないように職場の環境づくりに努め、労働者の健康づくりに努めなければなりません。

「働くこと」は労働者にとって「契約責任」を果たすことであり、事業者にとっては「健全な働き方」ができるよう安全配慮義務を尽くさなければならないのです。その結果、お互いの信頼関係が構築されることになります。

事業者にとっては「働かせ方」、労働者にとっては「働き方」とお互いにそれぞれの立場から仕事に対する見方が異なるところに協調関係が必要となってくるのです。日々、繰り返される仕事であっても、その仕事を失ったときには、仕事以外の大切なものも喪失する危険性があることを知らなければなりません

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年1月19日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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