健康経営®のコラム

2018年4月20日

経営者に知ってほしい健康経営/第13回 労働に対する対価-労働生産性

健康経営®

かつては、労働対価の対象は、労働者ではなく、労働そのものでした。利益を創出するアウトプットがあればよかったのであって、健康については労働者の自己責任であり、経営者は関与する必要はなかったのです。病気になれば、解雇すればよかったのです。

しかし、時代は流れ、労働もアウトプットではなくアウトカムを求めるようになりました。「今日は5社訪問して営業活動をしてきました。」から、「3社の契約が取れました。契約額は合計1億円です。」に変貌したのです。成果重視型労働は、チャンスに恵まれた労働者にとっては、好ましい働き方ですが、そうでない場合には労働者の心身の疲労感は増大し、疾病に陥る可能性が高くなります。

労働生産性は、経営者にとっては企業の存続にかかわる重大な課題です。労働生産性に見合った対価の支払いのみであれば、経営者の利益は増大し続けることになります。しかし、大きな落とし穴に落ちる危険性が極めて高いことも事実です。老子の教えに「大器晩成」がありますが、その意味は、健康経営の視点からは、「大きな器をつくるには時間がかかるように、有能な社員を育てるには時間がかかる(時間と投資が必要)。」でしょうか。大きな発見・発明は何ら努力もせずにある日突然ひらめくものではありません。長年の研究の蓄積の成果としてのひらめきです。

さて、経営者は、労働者に対して労働契約に基づいて提供された労働に対して見合った賃金を支払うことになります。提供された労務がすべて利益に直結しなくても賃金は支払い続け、かつ、教育研修のために経費を計上しています。新たに資格獲得のために費用を全額負担することもあります。この経過において、経営者の将来を見据えた投資があり、現在の労働者の心身の健康を確保するために家族を含めた生活の安定を確保しているのです。

一方、経営者は、労働者がこの投資に対して応えてくれるのだろうか、という一抹の不安があります。しかし、企業を構成する人々は、烏合の衆ではなく、お互いの信頼関係を基盤とした集団であって、持てる力を発揮し企業基盤を構築することが可能です。世界保健機関(WHO)は、1988年のレポートで、「雇用されたことのない人々は、身体的・社会的健康に必要な自立性や帰属意識を労働を通して向上させる機会が全くない。」としています。企業は雇用を通じて社会の安定と繁栄の基盤となっているのです。

経営者の経営能力とそれに応える従業員の労働生産能力によって企業が成り立ち、社会が安定するのです。労働生産性の向上に企業は多くの対価を支払っていますが、その上に健康経営を加えることでさらに経営利益に直結するアウトカムが生み出されることになります。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年4月10日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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