健康経営®のコラム

2018年6月12日

経営者に知ってほしい健康経営/第14回 プレゼンティーズムは疾病就業?

健康経営®

労働生産性を考えるときに課題となるのがプレゼンティーズム(疾病を持っての就業)とアブセンティーズム(傷病による欠勤)です。一般的には、少々体調が悪くても、働いてくれさえすれば、それでいいのでは、と考えるのではないでしょうか。

ここで、プレゼンティーズムを説明するためにハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチについて簡単に解説いたします。病気を持っている人に保健指導もしくは治療を促す場合(ハイリスクアプローチ)と、疾病を有していない健康な人(ここでは健康診断で異常所見がなかった場合を意味しています)に保健指導をする場合(ポピュレーションアプローチ)、どちらが効果的でしょうか。

すでに疾病を有している人は、今後さらに進行し、重症化する可能性があります。しかし、健康な人は発症を防止することができますし、発症しても早期ですので軽症(就業制限の対象とはならないということを意味しています)で発見されることが多いことから、医療費の視点からは、疾病を有している人の重症化予防が有用である、と判断されるかもしれません。

確かに、個別対応は保健指導の点においては重要です。しかし、この問題は、対象者のサイズ(人数)を見落としていることになります。疾病を持って重症化している人は、健康な人に比べるとそのサイズの点からははるかに小さいのです。一方、たくさんの健康と判断されている集団から、新たに疾病が発症する可能性は極めて高いといえます。

さて、そうすると、現在働いている人で、疾病を持って仕事の能率が思わしくない人と疾病で会社を休んでいる人を比べてみると、どちらが大きなサイズになるのでしょうか。

現在出社してはいるものの、持てる能力を十二分に発揮していない人は、現在休んでいる人に比べるとはるかに多いのではないでしょうか。その結果、労働損失はプレゼンティーズムのほうが大きくなることが考えられます。プレゼンティーズムをいかに改善するかは、健康が基盤となり、その上に職務適性、モチベーション、人間関係などが積み重なっています。

少子高齢のわが国においては、高齢期であっても持てる資格や経験は後輩に伝授することは可能です。働き方の改革は、年齢や健康状態など様々な条件を勘案して、仕事の能率が向上することとともに重大な事故を防止することも労働生産性を向上させることになります。入社してから退職するまでの労働生活を送る期間、経営者(健康づくり事業)、労働者(ヘルスリテラシーの向上)がともに健康づくりに取り組めば、きっと企業の成長を促し、企業の明るい未来を創造することでしょう。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年6月7日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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