健康経営®のコラム

2018年7月2日

経営者に知ってほしい健康経営/第15回 健康経営の視点―雇い方、働かせ方、働き方

健康経営®

これから就職しようとして採用面接に臨んだ時、「将来どのような仕事を希望しますか」という質問に、自分の意見を率直に述べ、その結果、その企業に就職したとしても、描いた夢が確実に実現する可能性は高いとは言い切れないのが現状です。経営者は、新入社員に対して、もてる専門的な能力を生かし業績を上げるように育成計画を作成しますが、現代社会においては、異動に伴い職場不適応となって、休職に至る例が少なくありません。

将来ある若い人たちが、入社直後にメンタルヘルス不調に陥ることもあり、発症理由は、入社前後の大きなギャップに失望したのか、現場で直面する業務を遂行する自信がなく、そのストレスに耐え切れず、結果として心身の不調が出現したのかもしれません。夢見た仕事に就き、ライフワークとしてやり遂げたい、という部下の気持ちを、上司が受けとめ、適性に鑑み、職務を選択するいわゆるマネジメントが必要となります。

企業は、どのような人を雇用し、育成していくか、という企業と人のマッチングを熟考して人員計画を見据えて雇用することになりますが、一人ひとりの夢の実現と企業未来の創造の間には大きな乖離があります。つまり、経営者は、未来の企業のあるべき姿を描いて人員計画を策定するのと同時に、どのような人をどのような雇い方をするのかによって、企業と人のwin-winの関係を構築しなければならないのです。

しかし、そこには大きな障壁があり、それが、まさしく大きく成長し続けている現代人の「自己愛」であるといえます。就職するとすべての労働者は、マズローのいう「自己実現」を求め続けることになりますが、その実現には、自分自身を社会の中心に据えて、働きがいのある仕事を継続することが必要であると、考えることになります。現代社会において、経営者は増大する従業員の自己愛に対してどのような対応をなすべきなのかという難問に直面しているのです。

与えられた職務がはたして適正なのかどうかについては、時として信頼できる上司や先輩の意見を聞くことも必要かもしれません。「労働」には深さがあります。職務において適性と適正を判断することはむつかしいといえます。経営者は、雇用を契機に、人を企業財産としてその成長を促し、大きく育てなければなりません。雇用とともに従業員の成長と企業の未来の両立関係を構築する必要があります。

一方、部下をメンタルヘルス不調に陥らせることは、有能な上司であれば簡単なことです。すなわち、得意としない業務を命じ、支援をせず、裁量権を与えず、質問に対して的確な回答をせず、しかし期間を定めて結果を厳しく求め続ければ、間違いなく部下は失意のうちにメンタルヘルス不調に陥ることになります。

人を雇うこと、働かせること、働くことは、経営者、管理監督者、従業員それぞれが冷たい理性と温かい感性を持つことでいい塩梅に成立するのかもしれません。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年6月11日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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