健康経営®のコラム

2018年9月21日

経営者に知ってほしい健康経営/第18回 経営の視点-メンタルヘルスを考える

健康経営®

厚生労働省発表、平成29年度「過労死等の労災補償状況」において、精神障害は過去最高の請求件数が報告されました。その原因として、例年通り「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が主要な「具体的出来事」として公表されています。働く人の「心の健康」は、職場環境と働かせ方が大きく関与していることが分かります。つまり、心の健康(メンタルヘルス)づくりは企業活動の一つであり、「利益を創出」するための経営戦略として位置付けることが必要となっています。

「メンタルヘルス不調」が発症してからの対応は、当該従業員は休職し、職場の人たちは人手不足で残業が増え、心身ともに疲労が蓄積することになります。しかし原因が明確であれば、適切な対応によって発症予防が可能となります。その一つの対策として職務適性があります。

職務適性は、従業員が好んで就きたいという職務のみに従事することではありません。自分自身が得意とする職務のみを日々、年々遂行していると視野が狭くなり、新たな展開について見失う危険性を秘めています。つまり部下の育成は長期的な展望が必要なのです。時には就きたくないと思っていた職務の経験が、実は本来の職務の大きなヒントやブースターになる可能性を一方では秘めています。

「職務適性」を考慮した「職務適正」は人事労務管理の一環です。職種を限定せず期間を定めない雇用契約を締結した場合には、基本的には異動は会社に決定権があります。職務について従業員が自分自身で選ぶことはむつかしいのが現状です。またそれを許容すれば組織が崩壊することになり、「パンとサーカス」の二の舞となります。全ての人が自分の好む、または夢ある職務に就くことは不可能です。「適材適所」「仕事に人が合わせるのではなく、人に仕事を合わせる」「人を中心に新しい分野を開拓する」などが従来指摘されていますが、全ての従業員が満足して働くことができるようにすることは不可能でしょう。しかし、経営は、目の前のことの対応のみであれば成り立っていかないことは「計画のグレシャムの法則」で指摘されている通りです。長期的な展望に基づく経営戦略には、人を育てることが重要課題の一つとして常に組み込まれていなければなりません。それぞれの業務の持つ意味を上司がきちんと指導するコミュニケーションがうまくいけば、働きがいが醸成されます。

どうもメンタルヘルス不調は、その大部分は産業保健や精神医学の問題ではなく、経営の視点で捉えなければ解決できない問題となっているのではないでしょうか。職場におけるメンタルヘルス不調の予防対策は、上司の指導によって仕事の持つ意味を十分理解し、チームワークでお互いの信頼関係を構築することではないか、と考えています。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年8月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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