健康経営®のコラム

2018年10月10日

経営者に知ってほしい健康経営/第19回 長時間労働と働きがい-労働者の視点

健康管理 健康経営®

睡魔と闘いながら仕事に集中することはできません。人は一生の3分の1は睡眠に費やさなければならないのです。それは、残された時間を元気に過ごすためです。

働きがいは、健康という基礎の上に生み出されるものです。打ち込める仕事を持っている人は幸せです。結果を出すために長い道のりを要する業務であったとしても、その一部に関わること、また、その仕事が実を結んだ時は、喜びは大きいといえます。

わが国では、週40時間を超える時間外・休日労働時間が100時間を超えれば、重大な健康障害が発生する危険性が高くなることから医師による面接指導が法制化されました。時に、長時間労働が必要となることはありますが、その場合であっても、現場で働く人の健康に問題が発生することがないように十分注意しなければなりません。過労死、過労自殺などはわが国発の名詞として世界に周知されています。

働き方改革では、勤務間インターバルが11時間必要とされています。十分な睡眠を確保するためには、終業から始業までの間が11時間必要なのです。アルバイト従業員(38歳、男)が長時間労働及び不規則かつ深夜労働で致死性不整脈が原因となって死亡した事案の判例で、「翌日の作業開始までの時間が9時間未満である場合には、帰宅するための移動時間、次の出勤に要する移動時間や身支度にかかる時間を考慮すると、自宅などにおいて5時間ないし6時間以上の睡眠時間を確保することは困難であり、これが7時間未満である場合には、上記睡眠時間を確保することはほぼ不可能と考えられ、結局、労務による疲労が回復しないまま次の作業に従事することとならざるを得ない。」(大阪地裁、平成28年11月25日判決)と判示しています。

さらに、連続した深夜業によって極度の睡眠不足の状況で帰宅途中交通事故死した従業員の損害賠償請求事件では、「本件における裁判所の判断が公表されることは、今後の同種の交通事故死を含む『過労事故死』を防止するための社会的契機となり、また、同種の訴訟における先例となり、これらの価値と効果は、決して低くないものとみられ、むしろ高いものとみることができる。『過労死』、『過労自殺』に並ぶ労働災害の事故として『過労事故死』の類型が潜在的にあり、本件事故がその氷山の一角であるとすれば、本件事故の先例としての意義は高いと言い得よう。」(横浜地裁川崎支部、平成30年2月8日判決)として、「過労事故死」に言及しています。労働時間のみならず睡眠時間をも考慮した健康問題を裁判所が重要視していることからも、企業の労働時間の在り方を抜本的に見直す必要があります。

適性配置が最も望ましいのですが、すべての従業員が自分に合った業務に就くことはできなくても、人に仕事を合わせる時代に突入したのです。人生は、その3分の1が仕事、3分の1が睡眠、そして残りの3分の1を自分自身の時間として有意義に過ごすことで、優れた仕事を為すことが可能となるのです。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年9月20日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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