健康経営®のコラム

2018年11月19日

経営者に知ってほしい健康経営/第20回 ワークリテラシーとヘルスリテラシーー産業医学の視点

健康経営®

「ヘルスリテラシー」とは、健康に関する幅広い知識を習得することと、それらの知識を個々人の生活において実践する能力を持っていることになります。リテラシーには、強い個人の意志が必要です。つまり、健康診断結果から、果たしてこのまま放置してよいのかどうかを判断すること、医療職の判断ならびに保健指導などの情報から自分自身で行動を変容することが求められることになります。

セルフケアを日々実践することが健康の保持増進に繋がるのです。いくら健康診断を受けても、その結果を自らの生活改善に反映しないのであれば、健康診断を受けた意味が消失してしまいます。

「ワークリテラシー」は、仕事を遂行するための知識と技術を習得し、与えられた業務を実践する能力を意味しています。ヘルスリテラシーは自分一人の力で獲得することは難しいのと同様、ワークリテラシーもまた独力で獲得することは極めて難しいといえます。

現代社会で大きな問題となっている働く人のメンタルヘルス不調は、自分に与えられた職務がきちんと遂行できない状況に陥った場合に、不安、心配、不満、葛藤などが入り混じった心理的状態に陥り、結果として、体の不調、睡眠障害など経て抑うつ状態へと陥っていくことになる可能性が高くなります。

つまり、もし仕事がきちんとできるのであれば、現代企業における働く人のメンタルヘルス不調のすべてではありませんが、予防できる可能性を秘めています。自分の健康を維持するために、そして労働生産性を向上させるためには、どのようにすれば仕事が効率よくできるのか、について知識を習得し、実践するしかありません。

上司が部下の仕事の進捗状況を把握し、ヒアリングすることで適切な時期に適切なアドバイスをすれば、仕事が捗り、働きがいを感じるのではないでしょうか。また、体調不良を感じた時に、自らその不調を改善するための方策を知っており、また実践できればメンタルヘルス不調に陥る危険性が回避できる可能性が高くなります。

つまり、働く人のヘルスリテラシーとワークリテラシーが高まれば、健康と働きがいの両立を図ることが可能となります。

仕事に切羽詰まり、かつ疲労困憊状況の時に、上司が気遣って誘った飲み二ケーションではしゃいだとしても、それは上司だけで、部下は決して楽しいお酒ではないでしょう。飲み会に行くより、仕事の壁を乗り越えるアドバイスを、という相談を産業医が受けても無力感しかありません。飲み会が終わって、また職場に戻って残りの仕事をしなければならないのであれば、上司のワークリテラシーが欠如しているのかもしれません。

企業におけるメンタルヘルス対策における管理監督者のワークリテラシーの向上は重要です。プレイングマネジャー化している現代社会では、ヘルスリテラシーのみでメンタルヘルスを維持することは部下にとって難しいのかもしれません。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年10月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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