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経営者に知ってほしい健康経営/第31回 ヘルスリテラシー 医学的根拠に基づいて健康づくり その5 睡眠と健康

健康経営®のコラム 2020年1月14日

人生の3分の1は睡眠により、意識的活動ができない状況に陥っています。しかし、この時間が、残りの3分の2の私たちの活動を支えているのです。睡眠は、体と脳の休養に必要不可欠なものです。また、睡眠は私たちの生活リズム(概日リズム)の基本となります。健康的な生活を送る上で重要な生活習慣の一つです。我が国は、先進国の中で最も睡眠時間が短い国とされています。一方では、韓国に次いで長時間労働の国とされています。寝る時間を惜しんで働いているのですが、労働生産性は、国際的には20位以下に位置しています。

どうも睡眠不足が元気に働くことにブレーキをかけているかのようです。睡眠慣性は、睡眠不足による寝ぼけた状態を意味していますが、もしかすると、部下も上司も午前中このような状態に陥って、十分に働けていない状態であってもお互いに当たり前と思っているのかもしれません。

通勤時に寝ている人、就業中の欠伸や時として睡魔と格闘している人、会議中に目を閉ざす人、それらの予備群はすでに生徒、学生にも存在しています。睡眠は時間だけで充足されるものではありません。日中の眠気は、まさしくプレゼンティーズムを生み出します。

昨今の睡眠に関する研究成果として、睡眠不足が、ホルモン分泌に影響を及ぼし、肥満を誘発することが明らかになっています。空腹感を強く感じ、一方では、活動度が低下することによって、摂取エネルギーが増加し、消費エネルギーが減少することになるのです。一方、肥満になると、睡眠時無呼吸症候群を誘発することになり、体重と睡眠にはお互いに重要な関係にあります。

生活習慣が睡眠時間を短くすることも研究報告(RAND研究所、2016)されています。 また、同研究所は、起きる時間をいつも同じにセットする、寝る前のパソコンやスマホを制限する、寝る前のカフェイン、ニコチン、アルコールを控える又はやめる、運動する、ことを推奨しています。我が国は、睡眠障害で、GDPの2.92%の経済的損失を被っていると算出されています。ドイツは1.56%、英国は1.86%、カナダは1.35%、アメリカは2.28%で、我が国は、睡眠障害によって多額の経済的損失を生み出しているのです。

昼休みに10~15分の睡眠も効果的で、英語では、power napと呼ばれています。Caffeine Napはコーヒーを飲んだ後、短時間寝ることで、その後の眠気を防止する効果についての研究報告があります。スペインのシエスタは、長い昼休みを意味し、その長い昼休みに、仮眠や休憩をとることですが、これは長年の習慣となっているものです。

人生の3分の1の時間を占める睡眠、なぜ眠るのか、それは、残りの3分の2の人生のエネルギーを生み出し、かつ心と体の健康の基盤を構築するためです。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年11月20日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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