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経営者に知ってほしい健康経営/第32回 ヘルスリテラシー 医学的根拠に基づいて健康づくり その6 職場に潜む健康問題

健康経営®のコラム 2020年2月25日

長時間のフライトで、いわゆるエコノミークラス症候群が発症することはすでに周知の事実です。航空機内の冊子に足の運動を推奨する記述があります。有名なサッカー選手がエコノミークラス症候群となり、入院した経験談がすでに書籍となって出版されています。長時間同じ姿勢で座り続けることの危険性が明らかになっています。

また、2010年2月のニューヨークタイムスの記事に、「Your chair is your enemy」(あなたのイスはあなたの敵)と題する記事が掲載されました。この記事を読むときは、立って読むこと、と追記されています。長時間の座業は、肥満、糖尿病、心臓病、ある種のがん、そして短命の危険性を増加させる、としています。

さて、我が国は、長時間労働、短時間睡眠の国であるとすでに国際的にも周知されていますが、睡眠時間を惜しんで、一生懸命働いているので、労働生産性はさぞかし高い、と思われるかもしれません。しかし、実際には、我が国より多くの睡眠時間を取っている国の従業員の労働生産性のほうが高いという結果が報告されています。長時間労働は、心筋梗塞の発症の危険性を増加させることはすでに研究報告がありますが、さらに長時間の座業は、糖尿病やメンタルヘルス不良と関係があるとする研究もあります。

短時間睡眠(睡眠不足)は、睡眠負債(寝不足という負債―いつかは返さなければならない負債)による健康障害リスクを増大させ、また肥満をもたらすことも報告されています。

我が国では、オフィスが、エコノミークラス症候群発症の場、となっているのである、つまりオフィス症候群の結果、脳心臓疾患が発症していることになる、といえそうです。

一方、1時間の立位での仕事は、脂質異常や心臓疾患の発症を減少させる効果もあることが判明し、我が国の什器メーカーは、ボタン1つで、昇降する机をすでに発売しています。

座って会議をするよりは、立って会議を開いたほうが、居眠りする従業員もなく、会議も短時間で終了することで効率化が図れそうです。もしかすると、ロコモティブシンドロームも、長時間の座業によって発症リスクが増加しているのではないでしょうか。

通勤時の歩行時間によって、高血圧発症リスクが減少し、また、活動的な休日が2型糖尿病の発症リスクを低下させることから、通勤時に一駅歩くこと、休日労働を減らして、活動的な休日にすることは、働く人の健康づくりを支援することになります。

そういえば、ロンドンの2階建てバスの運転手と車掌、電話交換手と郵便配達人の心筋梗塞の発症リスクについての研究成果が発表されましたが、その結果は、ここで記載する必要はなさそうです。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年12月2日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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