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経営者に知ってほしい健康経営/第33回 ヘルスリテラシー 医学的根拠に基づいて健康づくり その7 食生活がもたらす健康と疾病

健康経営®のコラム 2020年3月4日

特定健康診査の問診票は、内臓脂肪が蓄積するような生活習慣についての項目です。例えば、「朝食を抜くことが週に3回以上ある」、「就寝前の2時間以内に夕食を取ることが週に3回以上ある」、「人と比較して食べる速度が速い」、です。さて、このような食生活がなぜ内臓に脂肪を蓄積させることになるのでしょうか。そのカギは、インスリンというホルモンにあります。

長時間労働によって脳心臓疾患が発症すると、過重労働による疾病として労災補償の対象となることはすでに我が国では周知のことです。ここで、長時間労働は座業ですので、その影響が考えられます。座りっぱなしはいわゆる、「エコノミークラス症候群」をもたらします。また、朝食を食べず、夜遅くに夕食を取るような食習慣は、心筋梗塞などの死亡率が高い、との研究論文が発表されています。いずれにしてもこのような生活はよくないのです。

その昔、豊臣秀吉が得意とした城攻めは、兵糧攻めでした。落城後に、敵兵に食事を与えると死亡することを経験したと豊臣秀吉は、長期間の空腹の後は、ゆっくりと少量の食事からはじめるように指示したとされています。

現代医学では「リフィーディング症候群」として知られるこの健康障害は、長期間の絶食、空腹後の食事を少量から取ることで予防することができることがすでに研究成果として発表されていますが、ここでもインスリンというホルモンが作用しています。長期間の空腹後に食事を取るとたくさんの栄養を摂取しようとインスリンが分泌され、何が何でも取り込もうと体は頑張りますが、その頑張りで、血液の成分が乱れ、心不全、不整脈、低血糖など様々な症状が出現し、結果として心停止に至り生命をも奪う事態に陥ってしまうことになります。

長い空腹時間の後の食事は、どうも私たちの体のバランスを大きく乱し、多くの健康を害する状況に陥ることになるようです。低血糖に強い人間も、急激な血糖の上昇は、体に大きな変化をもたらし、その変化に対応できず、体の機能に異常をきたすことになります。先の「問診票」にもありましたように、時に「早食い」、「朝食の欠食」、「遅い夕食」は許容されても、そのような生活が継続する(生活習慣化する)ことによって私たちの体のバランスは大きく乱れていくことになるのです。

私たちの体には、血糖を上げるホルモンはたくさんありますが、下げるホルモンはインスリンのみです。これは、飢餓や低血糖にさらされてきた私たち人類の生命を守るために長年にわたって獲得した生き抜くための仕組みです。早食い、空腹後の一気食べ、などには、私たちの体の防御反応が十分働かないのかもしれません。

一気飲みのように多くの若い人たちの生命を奪った過去の過ちからも、多くのことを学ばなければなりません。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年12月2日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長 岡田 邦夫(おかだ くにお)

岡田先生

大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、大阪ガス株式会社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て平成8年より同社統括産業医に就任。特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、プール学院大学教育学部客員教授健康スポーツ科学センター長、厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策検討委員会」委員、文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策検討会」委員、厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取り扱いに関する検討会」委員、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」委員などを歴任。
「健康経営のすすめ」社会保険研究所(共著)、「新版 判例から学ぶ従業員の健康管理と訴訟対策ハンドブック」法研(編著)、「これからの人と企業を創る健康経営」社会保険研究所(共著)、「健康経営推進ガイドブック」経団連出版、「ストレスチェック導入・運用サクセスガイド」メディカ出版など著書多数。
その他、大阪府医師会「健康スポーツ医学委員会」副委員長、一般財団法人大阪陸上競技協会理事、医事部部長、大阪マラソン医事・救護専門部会委員長、独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健総合支援センター産業保健相談員、日本医師会健康スポーツ医学委員会委員など。

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