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2016年3月12日

聞きほれよう! 初心者でも楽しめる落語名人撰

古典 趣味・娯楽

asakusa

名人たちに魅せられる落語の世界

古くから日本に伝わる「落語」。筋のある話に「オチ(サゲ)」をつけて面白おかしく聞かせる話芸です(中には「オチ」がつかないものもあります)。

「昭和元禄落語心中」(漫画)、「しゃべれどもしゃべれども」(映画)、「ちりとてちん」(ドラマ)などさまざまな作品のテーマとして取り上げられていて、落語は現代でも多くのファンに愛されています。

落語の醍醐味はさまざまですが、名人といわれる落語家(噺家(はなしか))の落語は絶品です。関東地方で発展してきた江戸落語と、関西地方で発展してきた上方落語、それぞれに名人といわれる落語家がいます。例えば江戸落語では3代目古今亭志ん朝(ここんていしんちょう)や7代目立川談志(たてかわだんし)、上方落語では人間国宝の3代目桂米朝(かつらべいちょう)や2代目桂枝雀(かつらしじゃく)など。  

落語には、古くからの歴史や特別な用語、道具などがありますが、まずは、語り継がれてきた名人芸に耳を傾けてみましょう。さて、初心者でも抱腹絶倒間違いなしの演目とはどのようなものなのでしょうか?

古典落語と新作落語

古典落語、新作落語ともに明確な定義はありません。古典落語は主に江戸時代や明治時代に作られたもので、不特定多数の落語家が現在にまで語り継いできたとされています。時代設定も古く、和服を着ていたり、場所設定が貧乏長屋だったりします。「ご隠居」「武士」「職人」「若旦那」「番頭」「花魁(おいらん)」「おかみさん」「熊さん」「八っつぁん」など、江戸時代などの登場人物たちが生き生きと描かれています。  

一方、「戦後以降に作られた落語」「特定の落語家などが作り演じる落語」などは新作落語と呼ばれたりします。現在では場所設定が会社やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの演目も作られています。

噺(はなし)の種類

落語は、いわゆる「落とし噺(おとしばなし)」「滑稽噺(こっけいばなし)」といわれる面白おかしい演目が一般的に知られていますが、実はそれだけではありません。

演目によっては、義理人情や人間同士の心の機微などを描いたものもあります。こうした演目は「人情噺(にんじょうばなし)」と呼ばれます。  

落とし噺は最後に「オチ」がつきますが、人情噺は「オチ」がつかない場合もあります。例えば、「唐茄子屋政談(とうなすやせいだん)」「文七元結(ぶんしちもっとい)」などはよく知られている人情噺です。人情噺は、登場人物の滑稽なやり取りで笑わせる場面の他に、しみじみと情感のある場面も多く、聞く者の涙を誘います。  

その他、「怪談牡丹燈籠(かいだんぼたんどうろう)」「もう半分」などの「怪談噺」などもあります。怪談噺は、“人間の情念”をテーマにしているものも多く、人情噺の様相を呈していたりします。怖いのにどこか切ない怪談噺。特に名人の怪談噺は胸に迫るものがあります。

落語家を「噺家」と呼ぶことがありますが、これは、落とし噺の他に、人情噺や怪談噺など、さまざまな噺をするためとされています。

「マクラ」の面白さ

落語には、本題に入る前に話す「マクラ」というものがあります。マクラは演目に関係する面白おかしい小噺だったり、その時々の世の中の動きだったり、落語家の最近の出来事だったりします。  

マクラでその場を温めて、聞く者を一気に本題へ引き込むのも名人芸の一つ。例えば5代目古今亭志ん生(ここんていしんしょう)の「粗忽長屋(そこつながや)」では、マクラで粗忽者(そそっかしい人)の小噺が披露されることがありますが、これがまた面白い。かすれたような独特の声色と口調で語られる「源頼朝の幼少の頃の……」「主人と奉公人の両方が粗忽者で……」という小噺など、一度聞いたら病みつきになるかもしれません。

初心者も楽しめるおすすめ演目:「粗忽長屋(そこつながや)」

1)あらすじ

道端で「行き倒れ」の人を見かけた粗忽者が、「これは俺の兄弟分だ! “当人”を連れてくる」などと訳の分からないことを言って、“当人”のところへ行きます。連れてこられた“当人”も相当な粗忽者で、「これは俺だ……」と言い出す始末。「死んでるのは俺だ。死んでるのは俺だが、死んでる俺を抱いてる俺はいったいどこの誰なんだろう!?」という名オチまで、粗忽者たちが一気に笑わせてくれる抱腹絶倒間違いなし。“粗忽者”の決定版です。

2)聞きどころ

5代目柳家小さんの十八番といわれていますが、5代目古今亭志ん生のとぼけた味の名演を好むファンも多いようですマクラで繰り広げられるさまざまな粗忽者の小噺、本題の中での粗忽者同士の会話に加え、「行き倒れ」の現場で「“当人”を連れてくる」などと言い張る粗忽者と会話をする“普通の人”の困った様子も笑いどころです。

初心者も楽しめるおすすめ演目:「火焔太鼓(かえんだいこ)」

1)あらすじ

口が達者なおかみさんにやり込められてばかりの商売が下手な道具屋。仕入れた太鼓を小僧にはたかせていると、「ドーン」という太鼓の音が通行中のお殿様の耳に留まります。屋敷に太鼓を持参するよう言われた道具屋、叱られるかとおっかなびっくり行ってみると、なんと300両もの大金で売れました。意気揚々と帰宅した道具屋はおかみさんに「どうだ」とばかりに金を見せます。

2)聞きどころ

5代目古今亭志ん生の十八番です。おかみさんが道具屋に次から次へと浴びせる文句、それに対する「何言ってやがんでい」などのセリフで始まる道具屋のボヤキなど、笑いどころ満載の落語です。屋敷の中で300両の金を50両ずつ目の前に積み上げられる道具屋が、だんだん感極まってきて声を上ずらせたり泣いたりする場面も笑いどころです。志ん生の息子、3代目古今亭志ん朝の「火焔太鼓」もまた、軽妙な語り口で笑いを誘います。親子の話を聞き比べても面白いでしょう。

初心者も楽しめるおすすめ演目:「大工調べ(だいくしらべ)」

1)あらすじ

大工の棟梁が仕事に来ない与太郎を心配して訪ねてみると、家賃のカタに大家に道具箱を取られて仕事ができないと言います。ためた家賃1両800文のうち1両を棟梁が立て替え、与太郎に持たせて大家のところに行かせますが、与太郎は余計な口をきいて大家を怒らせてしまいます。仕方なく棟梁が与太郎を連れて大家宅に行きますが、今度は棟梁と大家が大げんかになります。

2)聞きどころ

3代目古今亭志ん朝の十八番です。一番の聞きどころは大工の棟梁が大家に向かって切る威勢の良い「たんか」です。立て板に水のごとくこれでもかとまくしたてるそのたんかは、ハリツヤのある声とテンポの良い語り口の志ん朝ならではの名人芸で、聞く者をスカッとさせてくれます。棟梁のたんかの後、それをまねる与太郎の“たんかもどき”も笑いどころです。

初心者も楽しめるおすすめ演目:「唐茄子屋政談(とうなすやせいだん)」

1)あらすじ

若旦那の徳三郎は遊郭での遊びが過ぎて勘当され、しまいには身投げを試みます。それを偶然救った徳三郎のおじさんが家に置く代わりに徳三郎に命じたのは唐茄子(かぼちゃのことです)売りでした。慣れない唐茄子売りに四苦八苦する徳三郎でしたが、気のいい通行人に出会って商売を助けてもらいます。最後に残った2つの唐茄子をある母子に売ったものの、徳三郎はその母子の様子にほだされ売り上げを渡してしまいます。それをなかなか信用しないおじさんを連れて、もう一度母子の家に向かう徳三郎を待ち受けていたのは衝撃の展開でした。

2)聞きどころ

笑いあり涙ありの人情噺です。心を鬼にしてあえて厳しく叱りつけるおじさんの大きさ、優しさが感動を呼びます。唐茄子売りをしながら歩いているうちに、昔、遊郭から眺めたという田んぼにたどり着いた徳三郎が、昔を思い出して歌う場面は落語家の腕の見せどころ、この演目の名場面です。郷愁と涙を誘う3代目古今亭志ん朝の歌は、観客から拍手が湧き起こったほどの名演です。  

語り口調や声色だけで登場人物を演じ分け、扇子と手拭いだけで食べ物や書物などさまざまなものを表現する落語は、もともとの演目の面白さに、落語家の芸が加わって作り上げられるものです。中には、「この演目はこの落語家が演じたものが面白い」といわれるものも。

また、落語の世界では、現代とは違う言葉使いが出てくることがあります。例えば「いつも」「常に」を「のべつ」と表現したりします。こうした“言葉使いの妙”も落語の面白さが光るところかもしれません。  

たった一人の落語家が舞台に上がって話をするだけで、日常とは全く違う笑いの世界が広がる“贅沢な娯楽”、それが落語です。さあ、「毎度おなじみのお笑いを一席お付き合い願います」。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年3月6日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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