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笑う門には福来る 抱腹絶倒! おすすめ落語の演目

個人としての生活を楽しみたい 2017年5月1日

落語の魅力の一つは“時代感”

古くから親しまれてきた落語。ここ数年、メディアなどで取り上げられ身近になったように感じます。関連する書籍やDVDなどが置いてあり、寄席も楽しめる「らくごカフェ」や、遅い時間からスタートする「深夜寄席」などには若者の姿も多いようです。

落語には、さまざまな面白さがあります。特に古典落語の場合、話の内容もさることながら、江戸時代などその時代ならではの世相、雰囲気などを感じることができるのも魅力の一つといえるでしょう。

例えば、長屋の住人が織り成す人間模様、粗忽者(そこつもの)のお侍が引き起こす大騒動、花魁(おいらん)とその客が繰り広げる駆け引き……。古典落語は楽しげでいて、どこか不思議な、聞き手を魅了する世界観があります。そうした“時代感”を味わえる演目の例を見てみましょう。

演目その一「藪入り」

1)あらすじ

奉公して3年目、やっと実家への帰省がかなった子どもを待ちわびる一組の夫婦。特に父親は気持ちがはやり、前夜、「あれを食べさせよう」「あそこに連れていこう」と眠ることもできません。

翌日子どもが帰ってきて感動の対面となりますが、3年たって成長した子どもがしっかりと挨拶をする姿を見て、うれしいやら気恥ずかしいやら、胸がいっぱいで話せなくなってしまう父親。しかし、子どもが銭湯へ行っている間に父親の心境には変化が……!?

2)「藪入り」の笑いどころ、面白さ

「藪入り」とは、商家などに住み込みで働いている奉公人が実家へ帰ることができる休日のことです。あまり早く実家に帰ると里心がついていけないと、3年たってやっと帰省できることになった子どもを待つ親のうれしさ、舞い上がる様などが笑いどころです。

父親が楽しみのあまり、おかみさんに「少し寝なさいよ!」と叱られるほど、夜っぴて食べさせるものや連れていきたいところをあれこれ考えたり、夜が明けるか明けないかのうちに家の前を掃除し始めたりする様子が笑いを誘います。

子どもとの再会が待ち遠しいあまり、父親にとっては、とにかく時間がたつのが遅くて遅くて仕方ありません。おかみさんに時間を尋ね、まだ夜中の2時だと知ると、「まだそんな時間か?昨日の今ごろは夜が明けたな」などと言い出す始末です。

落語の中に出てくる「藪入りや 何にも言わずに 泣き笑い」(注)という川柳が表す通り、古き良き時代に見られた親子の情がテーマのこの演目、特にこの演目を得意としていた3代目三遊亭金馬(さんゆうていきんば)の野太い独特の声で語られると、グッと胸に迫ります。

(注)一般的に見られる表記としています。

演目その二「井戸の茶碗」

1)あらすじ

大変に正直者の屑屋(くずや)、清兵衛。ある日、どうしてもと頼み込まれて浪人から200文で古い仏像を預かります。その仏像を若い侍が買いますが、侍が仏像を洗っていると中から小判50両が出てきます。

元の持ち主の浪人も、買った侍もどちらも正直者過ぎて「自分のものではない」と小判50両を受け取ろうとしないから、さあ大変。すったもんだの末、どうにか折り合いをつけますが、今度は浪人が侍へ譲った茶碗が思わぬ事態を引き起こし……。

2)「井戸の茶碗」の笑いどころ、面白さ

屑屋とは、「くず~、おはらい~~」などと言いながら往来を歩き、屑を買い集める商売のことです。この屑屋の清兵衛をはじめ、浪人、若い侍の3人ともが正直者で、「出てくる人に誰も悪い人がいない」ことが、この演目の大きな特徴です。

正直者たちが織り成すとても良い話なのですが、落語なので、笑える場面もたくさんあります。例えば、仏像から出てきた50両を元の持ち主に返そうとして、仏像を持ってきた屑屋を探そうとする侍と、清兵衛ではない屑屋との珍妙なやり取りも笑えます。

最も面白いのは、どうしても小判を受け取らない浪人と侍の間を、伝書鳩のように何度も行ったり来たりしなければならなくなった清兵衛が振り回される様子でしょう。どちらからも「相手に受け取らせよ」と言われるし、自分は仕事にも行けないし……。

主要な登場人物が皆、正直者で明るい内容なので、安心して笑え、心が温まる話です。多くの噺(はなし)家が演じていますが、3代目古今亭志ん朝(ここんていしんちょう)の軽妙な語り口と、屑屋、浪人、侍を演じ分ける名人芸などは、大きな笑いを誘います。

演目その三「崇徳院」

1)あらすじ

お世話になっている大店(おおだな)の大旦那に呼ばれた熊五郎。どうやら大店では若旦那が病に臥(ふ)せっている様子です。医者に「気の病」と言われた若旦那は、熊五郎にだけそっと打ち明けます。「自分の病は“恋わずらい”である」と。

若旦那は、ある女性に一目ぼれしたのですが、相手の名前も住所も分かりません。女性を探すことになった熊五郎に与えられた手掛かりは、百人一首の「瀬を早み岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ」(注)という崇徳院の歌だけでした……。

(注)一般的に見られる表記としています。

2)「崇徳院」の笑いどころ、面白さ

若旦那はお詣りに行ったときに一目ぼれしたのですが、その様子を聞き出す熊五郎と、打ち明ける若旦那との温度差が笑えます。威勢が良過ぎる熊五郎と、「そんな大きな声を出すな……」と息も絶え絶えな若旦那。演じ分ける噺家の腕の見せどころです。

女性を探し回って大変な苦労をする熊五郎に対して、熊五郎のおかみさんは、大旦那が提示する「借金の棒引き」や「長屋の家主にしてくれる」などの褒美につられているので、探し疲れている熊五郎の尻をたたきます。この夫婦のやり取りも聞きどころです。

手掛かりとなる崇徳院の歌を読みながら往来を歩いたり、人の噂が集まってくる髪結い床(床屋)に何十軒も行っているので、そり過ぎて顔がヒリヒリするくらいになってしまう熊五郎の人探しに苦労する様子が、聞いているほうの想像力をかき立てます。

もともとは上方(大阪や京都など)の落語とする説がありますが、上方でも江戸(東京)でも演じられています。それぞれ、若旦那がお詣りに行く場所など違う点があるので聞き比べてもよいでしょう。上方では人間国宝の桂米朝(かつらべいちょう)、江戸では3代目古今亭志ん朝の流れるような語り口が、聞いている者を引き付けます。

落語の世界を彩るものは

話の筋(内容)の面白さ、“時代感”を味わえることに加え、落語の醍醐味といえば、やはり噺家の名人芸でしょう。上下(かみしも)や声色(こわいろ)、表情、言葉遣いなどでさまざまな人物像を演じ分けるその様は、病み付きになるかもしれません。

ベテランの噺家が落語をすると、聞いている大勢の観客は、まばたきのタイミングが同じになるという説があります。皆が皆、あまりに話に引き込まれるので、同じところでまばたきをするくらいになる。そんな名人の落語の世界を、ぜひ体感してみましょう。

以上

【参考文献】
「NHKまる得マガジン 落語でつかむ 話し方の極意 自己紹介に! スピーチに! プレゼンに!」(野村亮太(講師)、立川こはる(落語)、日本放送協会、NHK出版(編集)2017年4月)

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2017年4月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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