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2018年4月18日

「アルバイトが辞めない経営」のススメ!(1)

パート・アルバイト 採用 組織運営

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2018年、人手不足は加速する

求職者1人当たりに何個の仕事があるかを示す有効求人倍率は、2017年平均で1.50倍となりました。前年と比べても0.14ポイント上昇し、1973年以来44年ぶりの水準です。昨年6月にバブル期の水準を超え、直近12月では1.59倍といまだ上昇を続け、パートタイムの有効求人倍率は1.81倍と、さらに厳しい数値を記録しています。アルバイト・パート労働者(以下アルバイト)に支えられる企業における人手不足は、2018年になってさらに深刻さが増しています。

しかも2018年は東京五輪関連の人材ニーズが本格化します。建設業ニーズはピークを迎え、11万人のボランティア募集も始まります。手強い競争相手が加わるわけで、人手不足状態はさらに拍車がかかります。

この空前の人手不足において、アルバイト時給は高騰を続け、都市圏では1000円を超えるなど、企業は募集時給を上げるなどの対応で人材確保と離職抑止に必死です。

職場の「働き方改革」も進みます。新語・流行語大賞にもノミネートされた「働き方改革」は、まさに2017年を象徴する言葉の一つでした。ブラック企業に対する批判の声は、働きやすい環境の改善運動につながり、これまでの日本的労働価値観を変えんとする一大ムーブメントとなっています。

その波はアルバイト労働市場にも及んでいます。某牛丼チェーンのアルバイトのワンオペ勤務、長時間の残業を押し付けたり、辞めたいという従業員を不当につなぎとめたりする、いわゆる「ブラックバイト」問題は、これまでも指摘されてきました。そこに空前の人手不足感が文脈として加わり、アルバイトの長時間労働が見直されています。

アルバイトの時短政策は芯を食っていない

しかしながら、こうしたアルバイトの「時短」は、果たして人材の採用や定着につながっているのでしょうか。

我々、ツナグ働き方研究所で実施した「アルバイト労働時間実態調査」によると、アルバイトの1カ月当たりの労働時間(平均)は、理想が98.3時間であるのに対して現実は91.3時間。現実が理想よりも7時間少なくなっています。働かされすぎというより、むしろ働き足りないという結果でした。学生アルバイトを対象に行ったインタビューでは、「シフト1回での勤務が8時間を超えるのを禁止されている」ことを嘆く声もありました。企業側がレピュテーションリスク(風評被害)を恐れるあまり、アルバイトに対して“過保護”になりすぎているのではないでしょうか。そんな実態が浮き彫りになりました。

一方で、アルバイトの労働時間が短くなると、その負担を少数の社員が補うことになります。その筆頭が現場責任者の店長です。我々の「飲食店店長実態調査」によると、店長の月間残業時間は平均92.8時間に及びます。過労死ラインといわれる80時間を大幅に超えています。

その結果、店舗運営や職場のマネジメントが手薄になり、アルバイトの採用や定着に支障をきたすという負のスパイラルに陥っているケースも少なくありません。これは飲食店に限った話ではありません。コールセンターにおいてのSV(スーパーバイザー)しかり、派遣会社においての、派遣スタッフフォローを担うコーディネーターしかり、現場マネジメント層全般がこうした受難の事態に直面しています。

要はアルバイト労働者に向けた「働き方改革」という名の時短政策は、本人たちの意向からも、業務がしわ寄る現場責任者の負荷からも、まったく芯を食っていないのです。人材の確保・定着に正の相関があるどころか、むしろ逆効果であるとも見てとれます。

起点は現場マネジメント層の働き方改革

ではアルバイト人材の確保と定着には、どのような施策が有効なのでしょうか。

1.前提として採用より離職抑止に力点を置く
2.アルバイトの働き方改革ではなく、現場マネジメント層の働き方改革にシフト
3.現場マネジメント層に初期定着コミュニケーションノウハウを装着する

以上の3点に集約されるでしょう。

前述のとおり、有効求人倍率はバブル期を超えました。この「超売り手市場」の環境下においては、採用した貴重なアルバイトの離職抑止が極めて重要です。にもかかわらず辞めたからまた採用という事例は枚挙にいとまがありません。これでは「底が抜けたバケツ」ではないでしょうか。「採用<定着」というパラダイムシフト(発想の転換)が求められています。

定着のキーパーソンは、もちろん現場マネジメント層です。人手不足にあえぐ現場で、マネジメント層に負荷をかけると職場は殺伐とします。アルバイトの離職理由のほとんどは「人間関係」です。殺伐とした職場では当然人が辞めていきます。この悪循環を逆回転させることから、アルバイト離職抑止への第一歩が始まります。

店長が余裕を持って職場をマネジメントすることで、職場がイキイキし、アルバイトがポジティブになります。そのアルバイトが一定期間働くことで生産性が向上し、1年間続けてもらえれば後輩の指導役にもなるでしょう。そうやって店長の業務を補完できるようになると、さらに店長に余裕が生まれます。この「正」のスパイラルを回すには、現場マネジメント層へのしわ寄せや負荷を軽減するといった「働き方改革」が起点となるのは言うまでもありません。

初期定着コミュニケーションの重要性

その上で、コミュニケーションノウハウを装着する必要があります。特に初期定着を促すコミュニケーションに重点を置くことが効果的です。理由は2つあります。ひとつ目は、アルバイトをはじめとした非正規労働者の離職率は入社半年で55%に上ることです。いかに新人時代を乗り越えさせるかがポイントです。もうひとつは、初期定着コミュニケーション習得の難易度が低いことです。面接や出勤初日の受け入れは、ある程度定型化されたものが多く、少しの学びで効果が出やすいのです。以下、即効性のある取り組みを紹介しましよう。

1)丁寧な面接こそが定着の第一歩

アルバイトの早期離職理由は、「面接で聞いていたのと話が違う」というのが大半です。つまり定着に向けた第一歩は、入社前の面接時に向けて採用担当者の面接スキルを磨くことから始まっています。

面接に必要なのは、応募者が仕事内容をちゃんとイメージできる説明力に尽きます。面接時に“この職場で働きたい”という気持ちが強くなるのは、「どんな仲間と働くことになるのか」「どのような経験が積めるのか」といった具体的な説明が十分であることが必要だと、我々の調査で判明しています。

そのためにも面接には、1時間を割いてほしいと考えています。アルバイトの面接は30分以内という店長が78%にも上りました。また「面接で仕事内容をちゃんと説明した」あるいは「動機付けを行った」という採用担当者の割合は60%にとどまります。多忙で時間に余裕がないというだけでなく、そもそも面接時における動機付けの重要性が認知されていません。面接は「見極めの時間」ではなく「惹きつけの時間」だと認識しましょう。

2)初日のウエルカムの姿勢が明暗を分ける

あるファミリーレストランでは、「ウエルカム・プログラム」というマニュアルを作り、出勤初日のアルバイトに対して店長が会社の理念、職場の雰囲気、仕事の手順などを説明する時間を設けるようにしました。たったこれだけの工夫で、1カ月以内の離職率が半分に減ったそうです。

ハウスルールの徹底も効果的です。制服の着こなしルールや休憩室での過ごし方ルールなど、これはやってもOK、逆にこれはNGという線引きをきちんと伝えることで、職場の行動規範を学んでもらいましょう。「ゆとり・さとり」といわれる世代は、怒られることに敏感で、特に理不尽だと感じた場合には職場への不信感が高まりやすくなると言われています。事前説明によって、無用に怒られることがなくなります。仮にうっかり間違った行動をとって怒られたとしても納得度が違ってきます。

3)OJTという名のぶっつけ本番は厳禁

「ゆとり・さとり」世代はお客様からのクレームにも敏感と言われています。一昔前まで「現場で実践し学びながら育てる」ために効果的だとされていたOJT(On the Job Training)が、いつの頃からか「ぶっつけ本番」という意味にすり替わってしまいました。人的余裕のない職場では初日にすぐにお客様への接客をさせる光景が散見されるが、座学などのOFF‐JTを取り入れた初期教育が重要です。

ちなみにアルバイト人気ブランドの常連である「スターバックスコーヒー」は、アルバイトが入社して店頭に立つまでの初期教育に惜しみなく80時間をかけます。確かに店内を見回しても、怒られているスタッフを目撃することは稀です。そういった働く上での安心感も人気に一役買っているのは間違いありません。

アルバイトの定着は最重要経営課題

店長をはじめとした現場マネジメント層の「働き方改革」が起点となることは前述しましたが、それを実践するには、当事者の努力だけでなく経営層の支援が必須です。

例えば100店舗のチェーン店があるとして、その中でアルバイトが辞めていく店舗と辞めない店舗はある程度決まっています。その理由は、優秀な店長がマネジメントしている店舗か、そうでない店舗かであることがほとんどです。要は属人的能力に依存しているのです。この優秀店長のマネジメントノウハウを全店舗に展開していくのは、まさに経営マターであると言っても過言ではありません。

また企業は、一律にアルバイトの時短施策を進めるのではなく、希望するアルバイトには、むしろきちんとシフトに組み込み、法律の範囲内で十分に働ける環境を提供することが必要です。勤続年数が長くなればなるほど習熟度が上がるため、定着に成功すれば生産性の向上も見込めます。また勤続年数が長いアルバイトには、店長や社員がやるような責任のある仕事の一部を任せることで、店長の負荷を軽減することができます。なにより期待をかけて任せることで、自身がやりがいを感じ、活躍人材へと成長してくれます。

アルバイトをはじめとした非正規労働者を主戦力とする企業は、辞めたらまた採ればいいという価値観から脱却し、「アルバイトの戦力化に期待をかけていく」姿勢を打ち出していくことが必要です。そして「アルバイトが辞めない職場を作る店長育成」を最重要経営課題として掲げ、当事者として実践していただきたい。そういった本質的な働き方改革への挑戦が、人的資本の拡充につながるのです。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年3月5日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者 平賀 充記(ひらが あつのり)

平賀 充記

株式会社ツナグ・ソリューションズ取締役 兼 ツナグ働き方研究所所長。1988年(株)リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」「タウンワーク」「はたらいく」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長。2012年株式会社リクルートジョブズ・メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立、所長に就任、今に至る。 著書に『非正規って言うな!』『サービス業の正しい働き方改革・アルバイトが辞めない職場の作り方』(クロスメディアマーケティング)がある。
  ■ツナグ働き方研究所■
  https://tsuna-ken.com/

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