社員を大切にしたい

2019年6月24日

中小企業の健康経営の肝! 「欠勤するほどではない体調不良」を解消しよう

健康管理 健康経営®

経済産業省資料から分かる健康経営の肝

皆さんは「プレゼンティーズム」という言葉を知っていますか? これは健康経営の考え方で、肩こりや睡眠不足といった「欠勤するほどではない体調不良」によって仕事に身が入らず、パフォーマンスが上がらない状態を指す言葉です。

一方で、風邪やインフルエンザ、重い体調不良などで欠勤・休職することを「アブセンティーズム」といいます。

健康経営と聞くと、勤怠管理上、目に見えるアブセンティーズムに注目しがちですが、実は、プレゼンティーズムのほうが、企業の生産性を大きく損ねているといわれます。

経済産業省「企業の『健康経営』ガイドブック」(2016年4月改訂。以下「ガイドブック」)に掲載された推計によると、企業の健康関連総コスト(3組織3429件)のうち、プレゼンティーズムによる労働生産性損失コスト(以下「プレゼンティーズムコスト」)は77.9%を占めます。

健康関連総コスト(3組織3249件)

日々の健康管理は従業員本人に任せるべきとの意見もありますが、働き盛りの従業員は、仕事に熱心に取り組むあまり、健康を二の次にしがちです。従業員のプレゼンティーズムを解消して、企業の生産性を上げるためには、企業の積極的な取り組みが重要になります。

体調不良の影響度合いを見える化する

プレゼンティーズム解消のために、まずはアンケートなどを使って、見えにくい自社のプレゼンティーズムの実態を見える化してみましょう。

前述のガイドブックにはプレゼンティーズムコストを推計する方法がいくつか紹介されています。例えば、東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニットの作成した「東大1項目版」は、質問数が1問と少ないのが特徴です。

質問内容と推計方法は次の通りです。

「【東大1項目版(質問)】
病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事を評価してください。
[      ]% (1%から100%)

「プレゼンティーズム損失割合(100%-上記質問の回答値(%))×総報酬年額(標準報酬月額12カ月+標準賞与)=プレゼンティーズムコスト

この東大1項目版を用いて、20~70代の男女100人を対象にした独自アンケート(以下「独自アンケート」)を実施(2019年5月実施)したところ、プレゼンティーズム損失割合は平均25%となりました。同割合に日本人の平均給与額を掛けると、1人当たりプレゼンティーズムコストは年間108万円と推計されます。

独自アンケートによるプレゼンティーズムコストの推計値

ちなみに、神奈川県横浜市と東京大学政策ビジョン研究センターが、2017~2018年にかけて中小規模の6事業所(従業員合計157人)を対象に行った調査では、1人当たりプレゼンティーズムコストは年間73万円と推計されています。企業の規模や年齢層などの特性によって、推計値には開きがあるようです。

アンケートではこの他、喫煙、飲酒、運動、十分な睡眠の有無など健康リスクに関する質問にも答えてもらい、プレゼンティーズムコストとの相関関係を見るのが一般的です。

生産性を下げる体調不良とは?

独自アンケートで、仕事に悪影響を及ぼしていると思う体調不良について質問したところ、次のような結果になりました。

仕事に悪影響を及ぼしていると思う体調不良

業種や職種によって傾向は変わりますが、このようなアンケートを実施することによって、従業員が抱える体調不良が、どの程度プレゼンティーズムに影響しているのかを把握することができます。

健康診断の結果から課題を洗い出す

アンケートの他、健康診断の結果も重要なデータです。企業には1年に1回、定期健康診断を実施することが義務付けられています。

結果表を見ると、従業員の肥満度、血圧、血糖値といった項目の他、問診に回答していれば、食事回数、喫煙や飲酒の頻度、睡眠時間、運動の頻度、ストレスの有無などの生活習慣情報も知ることができます。

アンケートや健康診断の結果を基に、自社の健康課題について仮説を立てることができます。例えば「事務職で頭痛や肩こりを抱える従業員が多いのは、長時間、同じ姿勢でパソコン作業を続ける習慣が原因ではないか」といったようなものです。

効果的な健康施策のポイントは?

自社の健康上の問題点をいくつか洗い出したら、効果的な健康施策を考えます。健康施策というと、高額なセミナーを開催したり、ストレッチマシンを導入したりといった、大がかりな施策のイメージがあるかもしれません。

しかし、プレゼンティーズムを解消する場合、必ずしも大がかりな施策が必要とは限りません。例えば、朝礼にストレッチを取り入れるなど、企業も従業員も取り組みやすい施策は長続きしやすいため、長期的な生活習慣の改善が見込めます。

また、健康経営は福利厚生の一環に見られがちなので、他に重要な経営戦略を進めることになった場合などに、取り組みがストップする恐れもあります。そのため、なるべく予算を掛けない施策を実施することが、長続きするポイントといえます。

例えば、長時間のパソコン作業による頭痛や肩こりを解消する場合、次のような施策が取り組みやすいでしょう。

  • ラジオ体操をする際に経営者や上司が、血流が良くなって肩こりなどに効果的であるなどのメリットを伝えたり、正しいラジオ体操のやり方の映像を見せたりして、ラジオ体操に本気で取り組んでもらう
  • パソコン作業1時間ごとに、立ち上がって休憩したり、ストレッチをしたりするなどの作業休止時間を設けるよう促す
  • 従業員が自席でストレッチをしている映像を流したり、効果的なストレッチ方法を解説するイラストなどを目につきやすいところに貼ったりして、自主的なストレッチを促す

協会けんぽに相談する

効果的な健康施策を考える際には、加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)に相談するとよいでしょう。協会けんぽは、企業の健康経営について、基本的に無料で相談に応じてくれます。

業種や職種ごとに抱えやすい体調不良を教えてくれたり、自社と似たようなケースで効果のあった健康施策などを紹介してくれたりします。その際、前述したアンケートや健康診断の結果がまとめてあると、より正確に自社の状況を伝えることができるでしょう。

「健康優良法人 中小規模認定」を目指してみる

健康経営を進める上で、並行して「健康優良法人 中小規模認定」を目指してみるのも一策です。これは、特に優良な健康経営を実践している中小企業を顕彰する制度で、健康経営に取り組む先進的な企業として国のお墨付きを得るものです。

同認定を得ることで、社外イメージのアップや、採用力の強化といったメリットが見込めます。そのため、認定企業数は、初回である2017年には318法人、2019年には2503法人と大幅に増加しており、多くの中小企業に注目されています。

同認定を受けるためには前提として協会けんぽなどに、所定の健康宣言書を提出するなどして、「健康宣言」事業に参加した上で申請を行います。認定要件を見ると、健康経営に取り組む企業にとっては、比較的適合しやすいものが多いようです。

認定要件には、8の必須項目と15の選択項目があります。例えば、選択項目である「運動機会の増進に向けた取り組み」の適合を目指す場合、次のような取り組みのいずれかを実施すればよいようです。

  • 従業員の運動不足解消のための、徒歩や自転車での通勤環境の整備
  • 従業員の運動不足解消のための、日々のラジオ体操の実施
  • 心身のリフレッシュを促すための、ラジオ体操やストレッチの実施、クラブ活動の促進
  • 従業員の歩数増加のための、従業員対抗歩数競争

認定要件は、いずれも多大なコストや手間を必要とするものではなく、プレゼンティーズムの解消に取り組む施策として、適合させやすいものが多いでしょう。健康優良法人を目指すことは、全社的に健康経営へのモチベーションを上げることにもつながります。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
  ■健康経営研究会■
  http://kenkokeiei.jp/

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月31日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者:日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

関連記事