コロナ禍で重要性が高まる? ストレスチェック制度の実務のポイント

社員を大切にしたい 2021年5月18日

コロナ禍で重要性が高まる? ストレスチェック制度

厚生労働省「過労死等の労災補償状況」によると、2019年度は精神障害の労災請求件数が2060件、支給決定件数が509件と過去最高になっています。コロナ禍が長期化する中、2020年度以降はさらに数値が悪化する恐れがあります。特にリモートワークをしている会社では、同僚と顔を合わす機会が少なく、社員がストレスをためやすくなっているかもしれないからです。

こうした状況下、その重要性が再認識されているのが「ストレスチェック制度」です。ストレスチェック制度とは、所定の質問に答えて社員が自分のストレス状態を把握する「ストレスチェック」、医師による面接指導、会社が講じる就業上の措置(例:配置転換)などのことです。労働安全衛生法と労働安全衛生規則に詳細が定められています。

ストレスチェックの実施義務があるのは社員50人以上の会社

ストレスチェックの実施義務があるのは、常時使用する社員数が50人以上の会社です(本店や支店など事業場単位での判断)。50人には、契約期間や労働時間は関係なく常態として使用するすべての社員が含まれます。該当する会社は、毎年1回、ストレスチェックを実施しなければなりません。なお、ストレスチェックを実施しなかった場合の罰則はありません。

一方、社員が50人未満の会社は、ストレスチェックの実施義務がありません。しかし、社員のストレス状態を定期的に把握することで、早期に社員のメンタルヘルス不調に対応できる可能性があります。そのため、社員が50人未満の会社でもストレスチェックを実施するのが好ましいといえます。

ところで、会社がストレスチェックを実施しようとしても、社員にストレスチェックを受検する義務はありません。会社は、社員がストレスチェックを受けることを勧奨しますが、就業規則などに定めて強制することはできません。あくまでも社員が決めることになるので、会社としてはストレスチェックの重要性を社員に説明することが大切です。

ストレスチェック制度の全体像

ここでストレスチェック制度の全体像を把握しておきましょう。

一部、図表に記載していないものもありますが、重要なポイントは次の4つです。

  1. ストレスチェック
  2. 医師による面接指導と就業上の措置の実施
  3. 結果の保存、分析
  4. 労働基準監督署への届け出

以降で説明していきます。

1)ストレスチェック

ストレスチェックを実施する会社は、事前にストレスチェックの実施者を決める必要があります。法令上、ストレスチェックの実施者として認められているのは、医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれかです。

会社は、ストレスチェックで使用する質問票について、ストレスチェックの実施者から専門的見地からの意見を聴取した上で、質問票を社員に配布します。厚生労働省が使用を推奨している質問票は、「時間内に仕事を処理しきれない」「イライラしている」などの57項目からなる「職業性ストレス簡易調査票」(以下「簡易調査票」)です。57項目は、

  1. 仕事のストレス要因
  2. 心身のストレス反応
  3. 周囲のサポート

という3つの領域を含んでいます。

この簡易調査票をそのまま使うこともできますし、3つの領域をカバーしていることを前提に、内容を変更したオリジナルの質問票を作成することもできます。注意点としては、質問票の中に性格検査やうつ病検査などを盛り込むことはできません。また、質問票は紙である必要はなく、ウェブ上に回答フォームを用意し、社員に各自のパソコンから回答してもらうことなども可能です。

記入が終わった質問票は、ストレスチェックの実施者またはその補助をする実施事務従事者(会社の労務担当者(人事の決定権を持たない者に限る)など、外部委託も可)が回収します。実施者は回収した質問票を基に、ストレスの程度を評価し、結果を社員に通知します。会社がストレスチェックの実施者からストレスチェックの結果の提供を受ける場合は、個別の社員の同意が必要です。

ストレスチェックを含む社員の健康情報の取り扱いについては、以下の記事で詳細を紹介しています。

■コロナ禍の健康診断 健康情報の取り扱いには細心の注意を!■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/trend/bp500015/

2)医師による面接指導と就業上の措置の実施

ストレスチェックの実施者は、ストレスの程度を評価する過程で、高ストレスで医師による面接指導が必要な人を選びます。こうした人を高ストレス者と呼びます。具体的には、自覚症状が高い人や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い人を指します。

会社は、高ストレス者と判断された社員が申し出た場合、医師による面接指導を実施します。この面接指導は、医師しか行うことができません。会社は面接指導を実施した医師から意見を聴取し、必要に応じて「就業場所の変更」「作業の転換」「労働時間の短縮」などの就業上の措置を講じます。内容によっては就業規則や労働契約書の変更が必要になります。

3)結果の保存、分析

ストレスチェックの結果は、ストレスチェックの実施者または実施事務従事者が5年間保存しなければなりません。また、高ストレス者に対して実施した医師による面接指導の記録を作成し、5年間保存しなければなりません。
保存の方法は、鍵付きキャビネットなどの他、社内サーバーなどへの保存も可能です。実施者または実施事務従事者は、第三者に閲覧されないよう、鍵やパスワードを厳重に管理しなければいけません。

また、会社は、ストレスチェックの実施者に依頼して、一定規模の集団ごとにストレスチェックの結果を集計・分析する努力義務を負います。これは「集団分析」といって、集団ごとのストレスの偏りなどを把握して、メンタルヘルス不調の予防につなげるための取り組みです。

4)労働基準監督署への届け出

ストレスチェックの実施義務がある会社は、1年以内ごとに1回、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を作成し、所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。前述の通り、ストレスチェックを実施しなくても罰則がありませんが、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」の提出を怠った場合には、50万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。

以上
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年3月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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