チームワークの「さじ加減」を知る
社員を大切にしたい 2016年3月26日
登場人物
山田課長(営業一課 課長)
入社18年目の営業一課課長。大学時代まで野球部に所属していたバリバリの体育会系。部下には厳しく接することもあるが、その後のフォローには人一倍心を砕いている。情に厚く、周囲から信頼されている。
真一(営業一課所属)
入社5年目。物怖じしない明るい性格で、課のムードメーカー的存在。ただし、物事を楽観的に考える傾向があり、少しそそっかしく、「お調子者」的な部分が顔を出すのがタマにきず。
あらすじ
「テレコールって手間がかかりますよね。何件も電話していると、つい、説明を省こうかと思っちゃいますよ」。ある日、新規顧客開拓の社内プロジェクトチーム(以下「チーム」)のメンバーの一人が大きな声でそう言っているのが聞こえた。営業一課の山田課長は、そのメンバーに対して、このプロジェクトのマネジャーである真一が「気持ちは分かるよ」と答えたのを聞き、大いに不安になった。
元来、真一はお調子者で人に話を合わせたりするきらいがあるが、このプロジェクトに関しては、初めてマネジャーを任されたこともあって粉骨砕身取り組んでいる。それを知っている山田課長は、まさか真一が皆の前でそう答えるとは思っていなかったのだ。
そういえば、最近の真一は、持ち前のムードメーカーぶりを発揮してメンバーにできるだけ笑顔で声をかけ、褒め、時には話を合わせたりと、とにかく和やかなムードでコミュニケーションを図ろうとしている。
山田課長の指導の下、「チームとして成果を上げる」ことを考えての真一なりのチームワークづくりなのかもしれないが、山田課長はそれだけでは不十分な気がしていた。真一のコミュニケーションのおかげでチーム内に会話が増え、和気あいあいとした雰囲気が生まれているのは確かだ。しかし一方で、チーム全体に緊張感がなくなっているように思える。
そこで、山田課長は、チームワークについて真一に聞いてみることにした。すると、上司と、新米マネジャーである部下との間にギャップが見えた……。
山田課長が真一にチームワークをどのように考えているか問いかける会話
課長:新規顧客開拓プロジェクト、皆の取りまとめをしてくれてありがとう。
真一:ありがとうございます。課長のアドバイスはとても勉強になります。
課長:メンバーに頑張ってもらわないといけないから、マネジャーとして苦労することもあると思うけど、ぜひ一緒に成功させよう!
真一:はい。課長に指導していただいた通り、チームとして成果を上げなければ、と思っています。なんとかうまく回していきます。
課長:うん。よろしく頼むよ。ところで、さっきテレコールについて手間がかかるとメンバーに言われて、「気持ちは分かる」と笑って流していただろう?
真一:はい。
課長:あのメンバーには、ちゃんと後で個別に注意してくれたよね?
真一:……いえ、していません。あの発言には私も正直、一瞬戸惑いました。しかし、実際に何件もテレコールをやってもらっていますから、愚痴の一つも言いたいのかもしれないと思ったので注意しませんでした。
課長:愚痴を聞くのも大切だけど、締めるところは締めないと。「説明を省こうかと思う」なんて言わせたままにしてはだめだよ。頑張っているほかのメンバーの中には、ああいう発言に対して「自分だってつらくても文句言わずに頑張っているのに……」と思う人もきっといるだろうから、場合によってはチームワークが乱れるよ。マネジャーである真一がちゃんと注意しなきゃ。真一のやり方は、ちょっと甘いんじゃないか?
真一:……なるほど。ただ、あまり厳しく言うと雰囲気が悪くなってしまうのではないかと思いますが……。
課長:たとえそのとき雰囲気が悪くなったとしても、マネジャーとして、言うべきことはちゃんと言わなければいけないよ。チームとして成果を上げるためには、時には毅然とした態度も必要なんだ。
真一:しかし、雰囲気が悪くなってメンバーが私に本音を言いにくくなってしまったら、それこそチームワークに支障を来すのではないですか? チームとして成果を上げるためには、やはりまず、チームワークが大切だと思います!
課長:チームワークか……。最近見ていると、仲良しサークルみたいに思えるけど、それが真一の考えるチームワークなの? それだけでは成果は上がらないと思うよ。