上司と部下をつなぐ「幕の内弁当」
社員を大切にしたい 2016年3月30日
登場人物
山田課長(営業一課 課長)
入社18年目の営業一課課長。大学時代まで野球部に所属していたバリバリの体育会系。部下には厳しく接することもあるが、その後のフォローには人一倍心を砕いている。情に厚く、周囲から信頼されている。
真一(営業一課所属)
入社5年目。物怖じしない明るい性格で、課のムードメーカー的存在。ただし、物事を楽観的に考える傾向があり、少しそそっかしく、「お調子者」的な部分が顔を出すのがタマにきず。
大輔(営業一課所属)
入社5年目。真面目な性格で、地味な仕事でもコツコツこなすタイプ。少し気弱な部分があり、失敗などを引きずるところがある。半面、同期の真一にはひそかにライバル心を燃やしている。
一平(営業一課所属)
入社2年目。仕事に対するやる気は旺盛で、努力をいとわない。座右の銘は「なせば成る」。正直で素直だが、少々短絡的で突き詰めたり論理的に考えることが苦手。トップセールスマンになりたいという夢を持つ。
あらすじ
真一が新任マネジャーに抜てきされた新規顧客開拓プロジェクト(以下「プロジェクト」)が始まってから、早1年がたとうとしていた。新規獲得の件数は目標を上回り、大型の案件もまとめた。新任マネジャーとして大活躍した真一は社長からも評価され、「チャレンジ賞」を受賞した。チャレンジ賞は、新しい業務に果敢にチャレンジし、困難にめげることなくやり遂げた者に贈られる名誉ある賞である。
思えば、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。真一を中心としたチームは、今でこそ一致団結しているが、結成当初はばらばらで、業務の進め方や考え方にも多くの問題があった。そうした問題を地道にコツコツと解決していくことで、ようやく今日の成功に至ったのだ。新任マネジャーとして人一倍の苦労をした真一は大いに喜んだ。大輔や一平も真一への称賛を惜しまない。
一見ハッピーエンドに見えるこの光景だが、山田課長には心配事があった。今回の成功はメンバー一人一人の頑張りの成果にほかならない。果たして真一はそれを理解し、皆に感謝しているのだろうか。大輔や一平は、自分たちもプロジェクトの成功に貢献したと実感できているのだろうか。疑問に思った山田課長は、そのことを3人に聞いてみることにした。すると、そこに上司と部下のギャップが見えた……。
山田課長が真一、大輔、一平にプロジェクトの感想を問う会話
課長:お疲れ様。苦しいときもあったが、プロジェクトは大成功に終わった。このメンバーならきっとできると信じていたよ!
真一:ありがとうございます! 何とか目標を達成できましたし、Y社との大型案件もまとめることができたので、収益面も問題ありません。
全員:うんうん。
課長:本当だな。ここまでくる間にいろいろあったが、皆、良い経験になっただろう。
大輔:はい! ただ、今回の成功は何と言っても真一君のおかげですよ。
一平:本当にそうですよ! 真一さんがいなかったら、絶対に成功していなかっただろうな。
真一:そんなに褒めたって、何にも出やしないよ(笑)。
大輔:いやいや、本当だよ。真一君に比べれば、私の活躍なんて足元にも及ばないよ。
一平:僕だって同じですよ。真一さんに比べれば、僕の貢献なんて大したことないし…。
真一:そんなことはないよ。でもさ~、確かにY社の案件は、よくまとめられたよね。直前になってサービス内容が二転三転し始めたときは気が気じゃなかったよ。提携先との調整も大変だったな。あれは、僕の人生の中で忘れられない出来事になるよ。
課長:確かにY社との契約はよくまとめた。ただし、ここにいる大輔や一平はもちろん、営業二課や提携先X社の協力がなければ成約できなかったことを忘れるなよ。特にX社は、時間的な無理をずいぶんと聞いてくれたからな。
真一:……そうですね、すみません。
課長:いや、謝る必要はないんだよ。ただ、今回のプロジェクトは皆の力がなければ決して成功できなかったものだ。だから、サポートしてくれた関係者に感謝しなければならない。そして、プロジェクトをやり遂げたことに誇りを持ってほしい!
真一:はい!
課長:真一はマネジャーとしてよくチームをまとめた。大輔は得意のマーケティングで顧客市場をよく分析した。一平は人一倍テレコールをした。そうだろ。
一平:でも、やっぱり一番頑張ったのは真一さんだと思います……。
課長:何言ってるんだ。一平は一平なりに精一杯頑張っていただろ。私はずっと皆の頑張りを見てたよ。このチームのメンバーは各自がベストを尽くしていたし、互いに信じ合っていた。誰が一番なんてことはない。皆がプロジェクトの主役なんだ。分かるね。
全員:はい!