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大切な社員を守るメンタルヘルスケア

社員を大切にしたい 2020年12月17日

メンタルヘルス不調の労務リスク

うつ病などの精神障害の他、ストレスや強い悩み、不安など、心身の健康や生活に影響を与える問題をまとめて「メンタルヘルス不調」といいます。

メンタルヘルス不調は、長時間労働や職場の人間関係、業績へのプレッシャーなど、さまざまな要因によって発生します。 オフィスワークからリモートワークへの移行といった、働き方の急激な変化もメンタルヘルス不調の一因になり得ます。

精神障害の労災請求件数と支給決定件数は年々増加傾向にあります。

万が一、社員がメンタルヘルス不調になって休職した場合、会社は業務の引き継ぎ、代替要員の確保、職場復帰に向けたサポートなど、さまざまな対応に追われることになります。

また、メンタルヘルス不調の原因が長時間労働やハラスメントにある場合、社員やその家族から責任を問われ損害賠償を求められたり、SNSなどに書き込まれて会社のイメージが大きく低下したりする恐れがあります。

こうした労務リスクを回避するには、重い精神障害などになる前に、できるだけ早期の段階で社員の不調を発見できる体制を整えることが重要です。

大切な社員のメンタルヘルスケア。その具体策は?

1)社内の体制づくり

会社におけるメンタルへルスケアは、会社全体で取り組むことが大切です。全社員に対してメンタルヘルスについて教育したり、社員が気軽に悩みを相談できる体制をつくっておいたりするとよいでしょう。

例えば、会社内の産業医、衛生管理者、保健師の他、人事担当者などを中心に、専門の産業保健スタッフを組織することを検討します。産業保健スタッフは会社全体の方針を定めて周知したり、管理職に対する教育研修制度を実施したり、社外の産業医などから情報収集をしたりします。

外部機関や社外の専門家(事業場外資源)との連携も重要です。具体的には、事業場外の医療機関や地域保健機関、EAP(メンタルヘルスケアを含めて社員の悩みや相談を解消するためのプログラム)を行っている会社などが挙げられます。

2)4つのケアの実現を目指しましょう

体制づくりをするときに考えたいのが「4つのケア」です。これは、社員へのメンタルヘルスケアにおいてポイントとされるもので、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフなどによるケア、事業場外資源によるケアの4つです。これらを実現できる体制づくりを目指すと、どのような体制にすべきか整理することができるでしょう。

1.セルフケア

自分自身で行うケアです。自らのストレスに気付き、予防策を講じます。例えば、厚生労働省・こころの耳「働く人の疲労蓄積度チェックリスト(働く人用)」では、20問程度の簡単な質問に答えるだけで、社員自身の職場における疲労蓄積度を把握することができます。

■厚生労働省・こころの耳「働く人の疲労蓄積度チェックリスト(働く人用)」■
https://kokoro.mhlw.go.jp/fatigue-check/worker.html

2.ラインによるケア

職場の上司など管理職によるケアです。上司は職場環境の把握と改善に努め、部下(社員)の相談を聞くなどします。リモートワークを実施している会社などは部下の働きぶりが見えにくいことがありますが、チャットツールに雑談ルームを設けたり、上司が定期的に部下と「1on1」を実施したりするなどして、実情を把握する機会をつくるようにします。

3.事業場内産業保健スタッフなどによるケア

社内の産業医や保健師、人事担当者などのスタッフによるケアです。事業場内産業保健スタッフは、セルフケア、ラインによるケアに関する教育を実施するなど、社内のメンタルヘルスケアに関する企画を立案します。また、ストレスを抱えている社員やその上司からの相談に対応したり、必要に応じて事業場外資源につなげたりといった対応も行います。

4.事業場外資源によるケア

外部機関や社外の専門家を活用したケアです。精神医学的に問題がありそうだと判断された社員への対応、専門的な知識を要するメンタルヘルス関連の研修の実施など、社内だけでは対応できない問題に関する支援を受けられます。専門的な知識を持つ事業場外資源を活用することで、会社は適切なメンタルヘルスケアを実現できるでしょう。

3)重要な役割を果たす管理職

社員のメンタルへルスケアにはいくつかのポイントがありますが、まずは早めの対策が重要です。「眠れない」「疲れやすい」「食欲がない」「以前のように仕事に集中できない」など、精神状態が思わしくないことに気付くのが早ければ早いほど、対応を取りやすく、深刻な状態になるのを防げます。

こうした早めの対処を実現するのに大きな役割を担うのが上司です。上司は日常的に部下(社員)と接する機会が多いため、社員一人ひとりの性格や考え方などを知っています。そうした上司は部下(社員)の変化に他の人よりも早く気付けるでしょう。また、日ごろから相談しやすい雰囲気をつくるなどして、社員に余計なストレスがかからないように配慮することも、管理職ならできるはずです。

上司がメンタルへルスケアの知識を身に付けていれば、より効果的に社員のメンタルヘルス不調を防止することができます。会社は、上司にメンタルへルスケアに関するセミナーに参加させるなど、“上司のメンタルヘルスケア力”のレベルアップに努めてもよいでしょう。ただし、上司自身は役職が上がれば上がるほど、セルフケア(自分自身)による対応が求められるようになります。上司へのメンタルヘルスケアも充実させなければなりません。

社員がメンタルヘルス不調になってしまったら?

1)社員の変化への対応

実際に社員がメンタルヘルス不調になった場合に、どうすればよいかも考えておく必要があります。社員の変化に気付いたら「よく話を聞く」「不平不満の解消方法を一緒に探す」などを試みます。相談を受ける場合には受け身の立場で、批判などをせずに一通り話を聞きましょう。場合によっては、話を聞くだけで社員の心の状態が回復することもあります。

ただし、本人からしてみれば、「悩みや不平不満があったとしても話しにくい」と気後れしてしまい、相談に乗ろうという管理職などの姿勢がかえってプレッシャーとなるかもしれません。無理に話を聞き出そうとするのではなく、ある程度時間をかける必要があるでしょう。また、実際にうつ病で悩んでいる社員がいた場合などは、無理にどうにかしようとせず、治療は専門家に任せるほうがよいでしょう。「社員のためになる」と思ってむやみに励ましたりアドバイスしたりするのは危険です。

2)職場復帰への備え

メンタルヘルス不調となった社員が休職していて職場に復帰した場合、管理職や同僚はどのように接したらよいか迷うものです。理解ある温かい迎え方が理想的ですが、過度な気遣いなどがかえって良くない場合もあるので注意しましょう。

復帰の時期に関しては、専門家の意見を前提に、本人の意思を尊重して決めることが原則といえます。また、場合によっては、一定期間業務内容の変更や配置換えなども必要になるかもしれないので注意を要します。

会社がメンタルヘルスケアに取り組むには、ストレスチェックや定期健康診断に加え、社内におけるメンタルヘルスケアのための体制整備などは、万一の場合に備えておくことが大切です。こうした取り組みを行うことは、労務リスクの低減と同時に、会社と社員との間に良好な関係を築くことにつながるといえるでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年9月29日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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