社員を大切にしたい

2016年11月20日

「介護離職」で社員を失わないために会社ができること

リスク管理 人事労務 組織運営

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社員の退職理由が「介護のため」だったとしたら……

日本では高齢社会が進むにつれ、介護疲れから痛ましい事件が発生したり、介護の悩みを抱えていたりする人は増えてきています。こうした介護問題は、会社を動かす経営者にとっても重要な課題の1つです。

そこで、会社の大切な宝物である社員について考えてみましょう。例えばある日突然、社員から「家族を介護しなければなりません。もうどうしようもないのです……」と言われたらどうするでしょう。あなたは何と言って、引き留めますか?他社のほうが条件が良いなどの退職理由ならいざ知らず、介護が退職理由の場合、「本当は辞めてほしくないが、成すすべがない」と感じてしまう経営者が多いのではないでしょうか。

家族の介護のために仕事を辞める「介護離職者」の数は、今や年間10万人を超え、働きながら介護をしていて、転職や就業停止を希望する離職予備軍は約42万人もいるとされています(総務省「平成24年就業構造基本調査」)。もはや介護離職のリスクは人ごとではありません。

さらに、中小企業にとって問題なのは、介護離職者の多くは管理職として活躍する40~50歳代ということです。仕事が属人的になりがちな中小企業では、管理職は、経営者が把握し切れていないところで仕事を取り仕切っていたり、部下をマネジメントしていたりしています。そのような管理職が離職すると、想定外の影響が多方面に及んでしまうでしょう。

本稿では、少しでも介護離職する社員を減らすため、「社員が介護に直面する前」「社員が介護に直面した後」に分けて、会社が取るべき対応について紹介します。

「社員が介護に直面する前」にすべきこと

1)社員一人一人の家庭環境を把握していますか?

まず始めに着手するのは、社員の家庭環境の把握です。多くの社員は、介護について「家族の問題だから自分で何とかしなければ」と考えます。企業が積極的に働き掛けない限り、悩みや不安を明かさないことも少なくありません。日ごろから社員の家庭環境について知っておき、「どの社員が、いつごろ、介護に直面する可能性が高いか」を把握しておくとよいでしょう。

また、「介護は誰もが直面する可能性があり、本人だけの問題ではない」「介護休業などの支援制度の利用を理由に評価が低くなることは決してない」「介護を担う社員に対して、仕事と介護の両立を支援するための制度がある」などの点をアピールし、職場介護について話しやすい雰囲気をつくることができれば理想的です。

ただし、企業がこうしたアピールをしても、社員は信頼している人にしか話をしないものです。経営者が個別に食事に誘うなどして、世間話の中で状況を探ってみることも必要です。


2)仕事と介護の両立のために利用できる制度・サービスなどを教えていますか?

家族の介護について不安を抱えていても、利用できる法定サービスについて正確な情報を把握していない社員や、知識があっても「他の人に迷惑を掛けるから利用できない」と思い込んでしまう社員もいます。そのため、社員本人が介護保険料を支払うようになる40歳という節目の年などに、育児・介護休業や、公的介護保険サービスに関する基本的な情報について学べる勉強会を開催したり、パンフレットを配布したりするとよいでしょう。

仕事と介護の両立のために利用できる制度・サービス

以下では、表中の全国の地域包括支援センターの住所や公的介護保険サービスを参照することができます。

■厚生労働省「地域包括ケアシステム(全国の地域包括支援センターの一覧)」■
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/#hid1

■厚生労働省「介護サービス情報公表システム」■
http://www.kaigokensaku.jp/

なお、育児・介護休業法は2017年1月に改正法が施行されます。既に介護休業などに関する情報を社員に周知している場合も、改正された点を中心に改めて情報提供をするとよいでしょう。主な改正点は次の通りです。

・対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで、介護休業を分割取得することができることとする
・介護休暇の半日単位の取得を可能とする
・介護のための所定労働時間の短縮措置などについて介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用を可能とする
・所定外労働の免除を介護終了までの期間について請求することのできる権利として新設する
・有期契約労働者の介護休業取得要件を緩和する

■厚生労働省「育児・介護休業法について」■
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

「社員が介護に直面した後」にすべきこと

1)社員に具体的な状況を確認していますか?

介護に直面した社員がいると分かったら、なるべく早い段階で経営者自らが本人に直接、「決して介護を理由に辞めてほしくない。会社として仕事と介護の両立を支援したい」というメッセージを伝えることが大切です。その上で、今後について話し合い、社員が介護をしながら無理なく仕事を続けられるように支援します。その際には、次のような点を確認するとよいでしょう。

社員との話し合いでの確認事項・対応の例


2)社員に復職の可能性をしっかり伝えていますか?

社員が抱える介護の悩みは個別性が高いため一概には言えませんが、時間の経過とともに状況も変化します。仮に、社員が退職を選択した場合も、「状況が変わったとき、復職の希望があるなら必ず連絡してほしい」旨を書面で伝えるのも一策です。

一緒に仕事をしている社員は、経営者にとって宝物です。さらに言えば、一から教育する必要がない経験者や、戦力として会社に尽くしてくれた社員は、たとえ一度職場を離れても、戻ってきてくれるに越したことはありません。会社と社員本人の未来のために、どのような対策を取るのが望ましいか、今こそ本気で考えてみましょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2016年11月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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