経営者と管理職にしかできない社員の褒め方とは?

社員を大切にしたい 2017年6月12日

なぜ、「褒める」ことが改めて注目されるのか?

ビジネスシーンでは「褒める」ことが改めて大いに注目されています。全国で「褒め方セミナー」が開催され、経営者や管理職が参加しています。そうしたセミナーでは、隣り合った見ず知らずの参加者が褒め合うなど、とにかく褒めることを繰り返します。

褒めることがこれほど注目されるのは、会社と社員の関係が変わってきたからです。終身雇用が根付いてきた日本の会社には、家族的な雰囲気があるといわれます。一度入社すれば定年まで雇用が保証され、多くの時間を共にします。

一方、家族的な雰囲気だからこそ厳しさも容認されます。「仕事なのだから経営者が社員を指導するのは当然で、厳しさはむしろ愛情の深さの証しである」といった感覚があるのです。

しかし、最近は厳しい指導が問題視されることが増えました。終身雇用の崩壊などを背景に考え方が変わり、「厳しく指導して何度もやらせ、覚えさせる方針」から、「褒めて自発的な行動を促し、学習させる方針」になってきたのです。

また、厳しく指導された部下が精神的な病を患ったり、会社を辞めたりすることもあります。管理職のパワーハラスメントや、そうした管理職を放置した会社の管理不足が指摘されることもあり、こうした労務リスクは低減しなければなりません。

褒める目的はどこにあるのか

褒めるという行為については、「褒めると阿(おもね)るの違いはどこにあるのか」「褒めると叱るのバランスをどう取ればよいのか」といった指摘が常に出てきます。しかし、これは本質を捉えた指摘とはいえないかもしれません。

前述した会社と社員の関係の変化は、「経営者による社員の動かし方が変わった」ことを意味します。つまり、経営者が社員を褒めるのは、社員に気持ち良く働いてもらうための手段であるともいえるでしょう。

そうなれば、褒めることは経営者の大切な仕事になります。それによって社内の雰囲気が良くなり、社員が力を発揮しやすくなるからです。また、社員の離職防止にもつながります。こうした効果をより発揮するには、全力で褒めたほうがよいわけです。

具体的に褒める

まず、経営者は会社は社員がいなければ成り立たないことを認識し、その感謝の気持ちを社員に伝えましょう。「よく頑張っているね」「いつもありがとう」といった声掛けをするのです。

会社の規模にもよりますが、社員にとって経営者は遠い存在です。普段あまり接点のない経営者から肯定的な言葉を掛けられれば、うれしくなり、声掛けの内容が漠然としたものであっても、「褒められた、認められた」と感じるはずです。

これを一歩進ませ、全力で褒めるためには、具体性を持たせるようにしましょう。お手本は自社の管理職です。管理職は現場で部下を指導し、細かなことも一つ一つ教育する立場なので、部下が今どのような仕事をしているのかを、ある程度把握しています。

そして、管理職は部下が自分の教えた通りに、あるいは期待を超える成果を上げたときに褒め、逆の場合は叱ります。そのため、管理職が褒めたり叱ったりすることは、社員の仕事と連動した具体的な内容になっています。

例えば、社員がプロジェクトに成功した場合、経営者は「よくやった!」と声掛けしますが、管理職は「君がお客様から『○○があればいいな』という一言を引き出し、それに真剣に向き合ったからだ! よくやった!」といったように具体的に褒めます。

社員を具体的に褒めるためには、経営者は社員とのコミュニケーションを深める必要があります。例えば、社員との食事会は効果的です。顧客や取引先よりも、社員との食事会を重視する経営者がいますが、これは社員の仕事の状況、生活ぶりを知るためです。

「相手が褒めてほしい、認めてほしい」と思っている部分を捉えると、褒めることの効果は高まります。経営者は、日ごろの声掛けをベースにしつつ、社員のことをよく知り、具体的に褒めることも心掛けましょう。

褒める基準を明確にする

食事会などによって社員とのコミュニケーションを深めたとしても、経営者が全社員の仕事を細かく把握することはできません。特に、「この社員には任せておいて安心」と評価している社員のことは、放っておいても問題ないと油断してしまいます。

現実問題として、経営者が社員とのコミュニケーションばかりに時間をかける余裕はありません。そこで経営者がやるべきことは、褒める基準と叱る基準を明確にして、それを社内に宣言することです。

例えば、「イエスマンは評価しません。意見や、“異見”を言ってくれる社員を評価します」と宣言し、実際にそのようにします。こうすることで、経営者の“ご機嫌取り”をして褒められようとする社員のムダな行動を排除することもできます。

ホスピタリティの高いサービスで評価されているザ・リッツ・カールトンでは、現場の社員に大きな権限が与えられています。その1つが、社員1人につき2000ドルまでの決裁権があることです。

ただし、当初から社員たちがこの決裁権を、会社側が考えているように使用できたわけではありません。「2000ドルもの大金を使ってしまって、本当に評価に影響しないのだろうか」などの疑問や不安がありました。

そこで、支配人はホテル内の売店で販売されていた2万円もするぬいぐるみをプレゼントし、男の子をあやしたウエイターに対して、他の社員の前で30分かけて、その行動を褒めたたえ、皆の手本にしてほしいと紹介したのです。

素早く、惜しまず、そして演出する

褒めるタイミングも大事です。たとえ1年前の成功であっても褒められればうれしいものですが、成功直後ほどの効果はありません。仕事に成功した社員を褒めるなら、社員の気分が高揚しているときが一番いいのです。

褒めるときは皆の前で褒めるのがよいとされますが、加えて食事に誘ったり、家族にプレゼントをするなどの演出も重要です。経営者には「褒める」ことを演出する決裁権があります。良い意味で、褒めることにお金を使うのも経営者ならではです。

また、褒めるときは惜しまず褒めましょう。日本電産の創業者である永守重信氏は、成果を上げた人に対して、大げさなくらい褒めることを心掛けているといいます。それは、部下に自信をつけさせるために必要だと考えているからです。

同様に永守氏は、叱る際も褒め言葉を見つけてから叱ることを心掛けています。叱る際は口頭で、後に残さないようにし、褒める場合は口頭だけでなく、文書にも残るように工夫するなど、褒めることを重視しています。

褒める組織をつくる

社員をよく褒める経営者が率いる会社では、管理職も同じように部下のことをよく褒めるようになります。しかし、一部には価値観が異なる人も出てくるでしょう。例えば、「仕事なのだから、職場に笑顔は必要ない」といった考えを持つ人です。

もし、管理職が褒める文化に否定的なようなら、前述の「褒める目的はどこにあるのか」で紹介した内容を伝えるとよいでしょう。褒めると叱るは個人の価値観の問題ではなく、人を動かすために必要なことであると認識してもらうのです。

また、社員は経営者の人柄をよく見ながら、評価しています。いくら経営者が全力で褒めたとしても、そもそも社員に尊敬される経営者でなければ、社員の心の琴線に触れることはできません。

そのため経営者は、仕事はもちろん、公私ともに“全力で”率先垂範し、ちょっとした声掛けであっても、社員が「尊敬する経営者に声を掛けてもらえた!」と思えるほどの存在になれるよう努力しなければなりません。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2017年6月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

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