部下のミスは、育成に生かそう    

社員を大切にしたい 2017年5月8日

また、同じミスが……

「Aさん! これ、どうなっているんだ!!」。総務部に所属する中堅社員のAさんは、突然、課長に大声で呼ばれました。慌てて課長の席に向かうと、怒った表情の課長と、その横にAさんの部下のBさんが、しゅんとした表情で立っていました。

課長の話によると、Bさんが作成した資料に誤りがあったため、再提出をさせたところ、再度、誤りがあったとのことでした。「資料に誤りがあったことは、Aさんにも伝えたよな。そこで、君はBさんにどんな指示をしたんだ」。課長は少し落ち着きを取り戻した表情で、Aさんに尋ねました。

「はい。この資料作成の担当はBさんなので、責任を持って資料を作成するように伝えました。その際、Bさんに誤った原因などを確認した上で、あらためて注意点などを指示しました」そう言うAさんに向かって課長は、「で、完成した資料の確認はしたの?」と質問をしました。

「……いいえ」とAさんは答えました。その答えを聞いた課長はため息をつきながら、「Bさんに責任を持って仕事をやり遂げてもらうという考えは分かる。ただ、進め方がまずかったな」と言いました。

ミスが発生したときにすべきことを確認する

部下がミスを犯した場合、同じミスをしないように指導することは当然ですが、部下育成の機会という視点を持つことも大切です。

部下に限らず、ミスが発生したときの対応は「ミスへの対処」と「同じミスを防止するための対策」が基本です。冒頭の例で言えば、まずは、資料に誤りがあったことに関するおわびや、内容を修正した資料の再提出など、ミスへの対処を行わなければなりません。

また、同じミスが今後発生しないように作業手順を変える、チェック体制を強化するといった対策を講じなければなりません。

なお、同じミスを防止するための対策を検討するときには、対処的な対策と抜本的な対策という2つの視点を持つことが大切です。ミスが発生したら、まずは、ミス防止のために対処的な対策を講じなければなりません。

加えて、「重要性が低い資料であれば、作成自体をやめる」「資料のフォーマットをミスが発生しにくいように簡素化する」などといった、抜本的な対策についても、検討する必要があります。

ミスを起こしたときの指導

ミスを部下育成に生かすためには、前述のような視点に加えて、次のポイントや留意点を押さえておく必要があります。

1)ミスへの対処は、中堅社員が管理する

ミスへの対処は、中堅社員が管理しなければなりません。これは、冒頭の例のように「同じミスをすることは許されない」ためです。

例えば、ミスの影響度が限られているケースや、部下の能力であれば十分に対応できるようなケースでは、責任の重さを体感させたり、ミスへの対処方法を経験させたりするために、部下にミスへの対処を任せることがあります。こうした経験を積ませることは部下育成には効果的です。

だからといって冒頭の例のように、部下に任せきりにしてはいけません。作業の進捗状況を把握することはもちろん、作成に至るまでの作業手順に問題が無いかを確認したり、完成段階で最終チェックをしたりするといったように、同じミスを防ぐために要所を押さえた管理をしなければなりません。

また、もう1つ注意しなければならないのは部下の心理状況です。部下によっては、「ミスを犯してしまった……」とショックを受けていたり、「ミスを早く挽回しなければ……」と焦っていたりして、通常とは異なる心理状況にあることがあります。こうしたときは、普段ではあり得ないようなミスをすることがあります。そのため、部下の心理状況にも配慮しなければなりません。

2)ミスの対処には、必ず部下を関与させる

「発生したミスへの対処」「同じミスを防止するための対策」といった一連の対策には、部下本人が関与するようにしなければなりません。

例えば、一刻を争うようなケースであれば、業務に精通している中堅社員自身がミスへの対処をしたほうがよいこともあります。こうした場合であっても、部下に業務を手伝わせるなどして、中堅社員の対応方法などを学ばせる機会を作ることが大切です。

また、対応が一段落したら、必ず部下とのミーティングの機会を設けましょう。ミスへの対処の内容や、そうした対処を行った理由などを教えたり、今後、同じミスを防止するための対策について話し合ったりするようにしましょう。

3)ミスをした部下を叱るべきか

部下を叱るか否かは、ミスの種類によって違います。ミスには、2つの種類があります。1つは、部下が全力で業務をしている中で、発生したミスです。この場合は、部下を叱るのは好ましくありません。叱られた部下が「頑張っているのに認めてくれない」といった不満を持ったり、「失敗したら叱られる」という業務に対する消極さにつながったりしかねないからです。

もう1つは、部下が正しい手順を踏まなかったり、手を抜いたりしたために発生したミスです。この場合は、部下をしっかりと叱らなければなりません。この他にも「部下の反省度合い」なども勘案しなければなりませんが、ミスを犯した部下を叱るか否かの考え方はこの2種類が基本となります。

ミスの場面で部下の特性が分かる

ミスが発生すると、日ごろは気が付きにくい部下の特性が見えることがあります。例えば、多くの部下は、責任を感じて落ち込んだりしますが、中には「上司に指示された通りやったのだから、ミスは自分の責任ではない」と言わんばかりに、ひとごとのように振る舞う人もいます。こうした部下の特性は、今後の部下育成にも生きるはずです。

以上

※上記内容は、本文中に特別なことわりがない限り、2017年4月28日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

関連記事