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健康経営とは/メリットや企業が導入する背景・事例を解説

社員を大切にしたい 2019年11月5日

健康経営とは企業に所属する従業員が健康で快適に働くことができるよう、健康維持・増進を経営戦略として考え、実践することです。

従業員が健康であることは企業としても生産性の向上につながり、互いにウィンウィンの関係を築くことができます。この健康経営について、メリットや背景・事例などを併せて解説します。

そもそも健康経営とは?

健康経営は従業員の健康維持・増進を推進する戦略です。これまで企業は福利厚生の面で従業員の健康管理や増進を推進することはありました。

しかし、近年はそのメリットが大きいということで進んでおこなわれるようになってきています。その目的や注目されている背景などを解説します。


健康経営の目的

従業員が不健康な状態になると、従業員だけでなく企業にも大きな影響を与えます。具体的には、以下のような負のスパイラルに陥る可能性があります。

従業員が不健康に陥る
 ↓
集中力・モチベーション・生産性が低下
ミスが増え、医療負担などコストがかかる
 ↓
業績ダウン、企業イメージ低下
 ↓
収益が減少し従業員に健康の投資がおこなえない
 ↓
従業員が不健康なまま、これらをくり返す

このような「従業員の健康が損なわれることによる経営面でのデメリットを排除する」のが健康経営の最も大きな目的です。


健康経営が注目される背景

近年、健康経営がとくに注目されているのは、企業と従業員が互いにメリットがあるという理由の他にも、次のような背景があります。


企業の生産性向上

企業が健康経営に取り組むとくに大きな理由として、例えば、従業員が悩みごとを抱えている、もしくは頭痛や花粉症などの症状があるとします。

欠勤するほどではないにしても、このような健康状態では頭や体が思うように働かせられません。本人は自覚がないかもしれませんが、パフォーマンスが低下してしまいます。

そこで、定期的に健康診断やストレスチェックなどを実施することで、早期の対処や改善をおこなえば、パフォーマンスの低下を抑制することができるのです。


企業のリスクマネジメント

「働き方改革」という言葉がよく聞かれるようになってきましたが、長時間労働や職場ストレスなどの労働的な負荷は、当然ですが従業員のメンタルヘルス・身体的な不調の原因となります。

そこで、2015年から従業員数50人以上の企業は「ストレスチェック」の実施が義務化されました。これにより従業員自身もストレスに気付くことができ、企業側も職場環境の改善に活かすことが可能です。

このようなメンタルヘルスへの対応や労災などは企業側の社会的責任とされており、怠ることで従業員に健康上の大きな問題が生じれば、責任が問われることもあります。


国民医療費・介護保険給付の拡大

急速に高齢化が進む中で社会保障費が拡大し、財政を圧迫する大きな原因となっています。高齢化は進行しているので、国民医療費や介護保険給付費も年々増加しているのが現状です。

厚生労働省のデータによれば、2015年度の国民医療費は40兆円以上、2025年度には約60兆円に達すると予測されます。介護保険給付費も2015年度の10兆円から、2025年度には約21兆円が見込まれます。

それでいて労働力人口は急激に減少するため、企業としても負担が増加していくことは免れません。この負担を軽減するためにも、従業員の健康をバックアップしていく必要があるといえるでしょう。

健康経営のメリット

では、健康経営を実施すると具体的にどのようなメリットが得られるのかを紹介します。


生産性の向上

従業員の生産性は健康状態にも大きく左右されます。長時間労働や職場のストレスで不健康な状態であれば、当然ながらパフォーマンスが低下してしまいます。

そこで、残業を減らし健康に害を与えないようにしたり、体調が優れない従業員がいれば通院を許可したりできるような雰囲気・制度を整えることが重要です。


医療費の削減

健康の優れない従業員が多ければ、当然ながら医療費の負担が増加します。そこで、前述のように健康を害する原因となる残業や職場でのストレスを減らすなどの対処が有効です。

社会保障額の負担は「見えない人件費」ともいわれます。従業員が健康に生活できるように改善すれば、医療費のコストを軽減することも可能です。


離職率の低下

従業員が健康的で快適に働けるような職場であれば、働く意欲が高まります。さらに、このように働きやすく居心地のよい企業であれば、退職の割合が減り、結果的に離職率も下げることができるでしょう。


企業ブランドのイメージアップ

前述のように離職率が低下し、定着率が向上していけば働きやすい「ホワイト企業」として認識され、良い企業イメージが広まっていきます。

健康経営を実践する優れた企業と認められれば、経済産業省と東京証券取引所の認定する「健康経営銘柄」に選ばれることがあります。投資家も注目する銘柄ですので、株価の上昇が期待できます。

健康経営を実践する企業の取り組み事例

健康経営を実践している企業はどのような取り組みをおこなっているのか、事例を紹介します。


花王株式会社

花王株式会社は「社員が健康でいてはじめて企業も成長し、社会に貢献できる」として、2008年に「花王グループ健康宣言」という方針を発表しました。

花王は、健康のために“測る・食べる・歩く・アシストする”の「健康づくりサイクル」を実施、継続することが重要としており、具体的には以下のような施策です。

測る
生活習慣や内臓脂肪のチェック 内臓脂肪蓄積量など健康状態の見える化

食べる
食事量の制限でなく、内臓脂肪をためにくい食事法「スマート和食」の推奨

歩く
歩行測定会などを開催し、歩行年齢や生活機能リスクを測定
生活習慣の改善を促すオリジナル歩数計「ホコタッチ」」の貸し出し

アシストする
“測る・食べる・歩く”に取り組んだ結果をもとに、健康増進のためのアドバイスを実施
特定保健用食品(トクホ)製品などを生活に取り入れるなど

これらの健康に役立つ情報は「KaoみんなのGENKIプロジェクト」として、社員やその家族に限らず、多くの人が閲覧できるよう公開されています。


TOTO株式会社

TOTO株式会社は従業員に対する日々の健康増進に取り組んでいる企業として、2015年から4年連続で「健康経営銘柄」に選定された実績があります。

また、経済産業省と日本健康会議が健康組合と連携し、優良な健康経営を実践している法人として認定をおこなう「健康経営優良法人(大規模法人部門)」にも2年連続で選定されています。

このように、健康経営の優良企業として選定されるに、具体的におこなった施策は以下です。

就業規則を改定
2015年に就業規則の改定をおこない、「自己保健義務」について明記しました。これは、自身の健康を守るための努力をおこなうようにという内容です。

産業保健スタッフの役割を拡大
産業医や保健師が従業員本人と面談する他、上長ともコミュニケーションをおこない、病気の予防やリスク管理の「ヘルスケアセンター」的ポジションとして全社的に活動するよう役割を拡大しました。

「健康管理」「メンタルヘルス対策」「健康増進」3つの取り組み実施

健康管理:
定期健康診断をして終わりではなく、健康診断後の措置を徹底。従業員が主体的に健康増進に努めるよう、意識の向上をおこなっています。

メンタルヘルス対策:
セルフケア研修の他、精神的に不調な従業員に対しての早期対応や再発防止のための研修を実施。人事担当や産業保健スタッフに対しても復職支援プログラムを教育。

健康増進:
体力測定やウオーキング、社内運動会など、従業員が楽しみながら健康増進に努められるイベントを開催。

拠点別で実態・課題を把握、PDCAをくり返す
健康診断結果から拠点別で有所見のあった割合を算出し、項目別に目標値と比較・分析をおこなうことで、目標の改定や対策を検討、実行します。

この他にも、各種イベントごとにアンケートを実施し、今後の施策の改善や計画などに活かしています。


SCSK株式会社

SCSK株式会社もTOTO株式会社と同様に従業員の健康増進への取り組みが評価され、2015年から4年連続で「健康経営銘柄」として認定されました。実施した取り組みは以下の通りです。

「健康わくわくマイレージ」導入
従業員が自主的に健康増進を図るようにするため、2015年から「健康わくわくマイレージ」という制度を導入しました。

これは、定期健康診断の結果や健康維持・増進のためにおこなった行動をポイント化し、その数値に応じてインセンティブを支給するというものです。

「健康サポートシステム」導入
全社員に定期健康診断を義務づけるのはもちろん、定期健康診断の結果をインターネット上で閲覧できるシステム「健康サポートシステム」を導入しました。

このシステムでは過去の結果を確認できる他、WEB問診で予約・受診状況・再検査受診などの報告ができます。また、健康に関する情報もチェックできるようになっています。

禁煙のサポート
喫煙は生活習慣病などさまざまな病気のリスクを高めると考え、喫煙者の禁煙治療をサポートする取り組みも実施しています。

2013年には医療機関で禁煙治療をおこなった従業員に対し、治療費を全額会社が負担。禁煙に成功した場合は福利厚生サービスの特典を支給しました。これにより554人が禁煙に成功しています。

SCSKクリニック
社内診療所「SCSKクリニック」を開設しており、さまざまな病気や各臓器に関する高名な専門医の診療を受けられるようになっています。

このクリニックは各医師の専門分野だけでなく、風邪や花粉症の他、軽度の体調不良などでも受診することが可能です。

リラクゼーションルーム
国家資格「あん摩マッサージ指圧師免許」を持つ専属スタッフによるマッサージを受けられる、リラクゼーションルームも開設しています。

不調は業務効率を下げるということで、施術の時間は勤務時間として扱われ、利用料も格安で給与天引きによる利用もできるので、従業員に好評のようです。パートナー企業も利用できます。

メンタルヘルスケアの充実
産業医・医療スタッフ・人事部門が連携し、従業員の抱える問題の早期発見・対処に努め、休業者の復職支援や再発防止にも取り組んでいます。

また、SCSKカウンセリングルームも開設しており、臨床心理士や産業カウンセラーなど有資格者にメンタル面やキャリアに関する悩みなど、あらゆる相談をおこなうことができます。

政府も健康経営を推進

経済産業省は、健康経営における優良な取り組みを実施する企業を「健康経営優良法人」として顕彰する「健康経営優良法人認定制度」を開始し、健康経営を推進しています。

この制度は具体的にどのようなものなのか解説します。


健康経営優良法人認定制度とは

社内外への健康宣言の発信、ストレスチェックの実施など、従業員の健康維持・増進を目的とした各種制度を整えたうえで国に申請をおこない、認められれば「健康経営優良法人」と認定されます。

この認定を受けることで社会的な評価が高まり、ホワイト企業として認識されます。また、前述のように「健康経営銘柄」として投資家からも注目を受けます。

さらに、健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業は、各自治体や金融機関からさまざまなインセンティブを受けることもできます。

まとめ

健康経営に取り組むことは、次のようなメリットがあると紹介しました。

  • 生産性の向上
  • 医療費の削減
  • 離職率の低下
  • 企業ブランドのイメージアップ

もちろん健康経営に取り組むには計画から各種制度の調整など、ある程度の手間とコストはかかります。しかし、これだけのメリットがあることを考えれば、安い初期投資といえるのではないでしょうか。

従業員が健康でいることは生産性が向上するだけでなく、ホワイト企業として認められたり、インセンティブが受けられたりもするので、実施して損はないでしょう。

以上

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年9月18日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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