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テレワークの健康問題 経営者が打てる対策は?

社員を大切にしたい 2020年7月20日

テレワーク下の「孤独感」に要注意

「新型コロナウイルス感染症のために、テレワークを急ごしらえで導入しました。テレワークが可能な職種はほとんど在宅勤務しています。ハード面は心配ないのですが、従業員に目が届かない分、健康面が心配です」

労働衛生コンサルタントとして、労働環境や従業員の健康について助言している中小企業の経営者から、こんな相談を受けました。

近年、テレワークの必要性は叫ばれていましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を受け、この社長さんのように急いでテレワークの環境を整え、開始した企業がほとんどでしょう。そのような場合、ハード面をなんとか整えても、ソフト面、特に従業員の健康への影響については、つい後回しになってしまうこともあるようです。

緊急事態宣言が解除されても、多くの企業はオフィス勤務とテレワークのハイブリッド型を実施していくでしょう。そのため、従業員の健康の問題は今後、ますます重要になっていきます。

テレワークでも従業員に健康的に働いてもらうために、経営者ができることは「孤独感」の解消です。

テレワークを導入してしばらく経過すると、従業員が孤独感を感じることが増えてきます。孤独感の持続は、メンタルや身体の不調を引き起こし、やがて従業員の休業などにつながる可能性もあり、経営者としては注意をしたいところです。

従業員の孤独感が企業にもたらす影響

この問題を解消するために、まずは、なぜ孤独感が起こるのかを考えてみましょう。

通常、オフィスで働いていると、会話はなくても人との関わりがゼロにはなりません。挨拶やちょっとした相談など、相手の様子を見ながら声を掛けるのは、一緒にいるからこそ気軽にできるものです。

しかし、相手の様子が見えにくいテレワークでは、挨拶やちょっとした相談事をすることにハードルを感じ、悩んでしまう従業員が少なくないようです。このような状況が続くと、一人で業務を抱えてしまい、孤独感を募らせながら、徐々に長時間労働が慢性化していきます。

結果的に、睡眠時間が短縮され、集中力の低下、体調不良につながってしまい、さらに業務効率が落ちるという悪循環が生まれ、それが継続するとメンタル不調などに陥る恐れがあります。

このような悪循環を防ぎ、従業員が効率よく、快適に業務できる対策を打つことが大切です。在宅勤務では、オフィス環境と全く同じ環境を整えられないのは当然ですが、工夫はできます。

始業と終業のメリハリをつける

在宅勤務では、従業員によっては時間の感覚が曖昧になってしまうことがあります。そのため、メリハリをつけることが重要です。始業時にメールで「勤務開始」の確認をする、オンラインミーティングを活用して、始業時に時間を決めて(5~10分程度)打ち合わせをするなど、「これから勤務」という意識をお互いに持てるようにします。

また、終業時も同様の確認やオンラインミーティングをして、「これで今日は終業」を意識することにより、ダラダラと仕事を続けてしまい、生活サイクルを乱すといったことに予防線を張ることができます。

前述した通り、今後はオフィス勤務とテレワークをどちらも選べる体制にする企業が増えるでしょう。例えば、従業員のほとんどがオフィス、一部がテレワークを実施するという日でも、始業時と終業時にはオフィスと自宅をオンラインでつなぎ、従業員に時間の意識を持ってもらうようにしましょう。

「相談する時間」で業務の集中を防ぐ

管理職などにメールが集中し、オフィスで業務をするよりも負担が増えるとのお話も聞きます。そこで、定期的に、経営者に「相談する時間」をオンラインでの対話形式で実施し、業務を計画的に進められるように設計するのも一案です。これにより、業務集中の防止と孤独感の解消につながるでしょう。

体調不良のサインを見逃さない

体調不良者を見逃さないことも、経営者や管理職に求められます。オフィス勤務では、従業員の業務遂行能力が低下している、遅刻が増える、突発的に休むなど、体調不良のサインに気づくことができます。

しかし、テレワークではそのようなサインが不透明になりがちです。決まった時間にコミュニケーションをとるなど、ルールを決めておくと、これらの見逃しも少なくなるでしょう。

管理職の方には負担になる可能性も否めませんが、日ごろからコミュニケーションをよく取ることにより、負担感も軽減されますので、意識的にコミュニケーションを心がけるようにしましょう。

また、オンラインでの打ち合わせの時間に遅れたり、納期に間に合わなかったりすることがたびたび起こるような場合は深刻な体調悪化の疑いがあります。

深刻な体調悪化の疑いがある方が発生した場合、専門職への相談が必要です。産業医や産業保健師などと契約したり、地域産業保健センターを活用したりして、医療専門職と相談できる体制を整えるようにしておきましょう。

特に、地域産業保健センターは労働者数が50人未満の事業所であれば、無料で産業医や保健師による健康相談や長時間労働の面接指導などを提供してくれます。

産業医が定期的に関わっている職場でも、職場で体調不良者が出たときに、本人や管理職が抱え込んでしまい、悪化させてしまうことも散見されます。心配になったときに早めに専門職に相談できるような体制は、従業員が安心して働ける環境づくりにもつながります。相談窓口や体調管理の情報を従業員に伝えておくことにより、さらに働きやすい職場の形成につながるでしょう。

執筆者
佐藤 乃理子 産業医・労働衛生コンサルタント

佐藤先生

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究に当たった。2010年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、2013年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。2020年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。

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