健康診断の実施は企業に法的義務がある! 対象者や診断項目を解説
社員を大切にしたい 2020年10月30日
「企業には健康診断を実施する義務はあるの?」「健康診断をしないとどうなるの?」…。企業は健康診断をしなければならないものなのか、気になっている経営者も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、労働安全衛生法で規定されている健康診断を実施するのは、企業の義務です。適正に実施していない場合は、50万円以下の罰金となる可能性があります。
健康診断は実施時期や対象者、受診項目やアフターフォローの方法まで細かく決まっているため、正しい知識を身に付けていないと実施できないのが現状です。
この記事では、次の5点を中心に健康診断を実施するために必要な知識を解説します。
- 健康診断の義務と罰則の詳細
- 健康診断の種類や実施方
- 健康診断の流れ
- コロナ禍での対応方法
- スムーズな健康診断をするためのチェックポイント
この記事を読めば、健康診断を実施しなければならない理由が理解でき、正しい健康診断が実施できるようになります。最後まで読んで、企業側の義務である健康診断を問題なく実施できるようになりましょう。
企業の健康診断は法律で義務化されている
労働者を対象に健康診断を実施することは、企業の義務だと定められています。(労働安全衛生法第66条1項)
健康診断には「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類があり、一般健康診断は常時雇用する労働者の健康状態を把握して適切な対応をし、生活習慣病や脳、心疾患を防止することを目的としています。
一方で特殊健康診断は、有害な業務に従事している労働者の健康管理が目的です。
詳しくは後述しますが、それぞれ対象者や期間、受診項目を守り、適切な方法で実施しなければなりません。
なお、企業だけでなく、労働者側にも健康診断の受診義務があります。労働者が健康診断を拒否して受診してくれない場合は、懲戒処分にする権利が認められています。
ただし、労働安全衛生法では労働者に対し「健康診断を受ける医師選択の自由」を定めているため、個別で健康診断を受け企業に結果を提出するという方法でも問題はありません。
健康診断を実施しないと50万円以下の罰金になる可能性がある
労働安全衛生法で規定されている健康診断を実施しない場合、労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
また、健康診断を実施しないと企業の財産である労働者の健康や生活に悪影響を及ぼし、生き生きと仕事に取り組めなくなることが考えられます。健康診断の結果を基に労働環境を見直す機会も失うため、環境改善や健康促進などがおそろかになってしまう場合も。
法律違反をしないのはもちろんのこと、労働者の健康と働きやすい環境を守るためにも計画的に健康診断を実施することが大切です。
企業が実施すべき健康診断は2種類 対象者・実施期間・実施項目を解説
企業が実施すべき健康診断には、「一般健康診断」「特殊健康診断」の2種類があります。それぞれ対象者や受診期間、受診項目など健康診断を実施する上で知っておきたい情報をご紹介します。
1)一般健康診断
一般健康診断は労働者の健康状態を把握し、場合によっては改善するよう働きかけたり労働環境を見直したりすることで、生活習慣病や重大な疾患を未然に防ぐことを目的としています。
1.対象者
一般健康診断の対象者は、次のように正社員と一定基準を満たすパート・アルバイト、役員となっています。
パート、アルバイトの場合は、次の2つの条件を満たしている場合、一般健康診断の対象者となります。
- 期限のない契約をしている、もしくは1年以上継続勤務をしている、する予定がある
- 1週間の正社員所定労働時間と比較し、4分の3以上勤務していること
1.しか満たしていない場合でも1週間の正社員所定労働時間と比較し2分の1以上勤務している場合は、一般健康診断を実施するのが好ましいとされています。また、派遣社員を雇っている場合は一般健康診断の義務は派遣元にあるため、企業側が責任を持つ必要はありません。
2.実施期間
一般健康診断の実施期間は、次のように定められています。
- 雇い入れ時の健康診断…健康診断を実施する対象者を雇い入れるとき(特定業務(注)従事者や海外派遣労働者を雇い入れるときも実施)
- 定期健康診断…1年以内ごとに1回
- 特定業務従事者の定期健康診断…特定業務への配属時、6カ月以内ごとに1回
- ・海外派遣労働者の定期健康診断…海外に6カ月以上派遣するとき、帰国したとき
(注)特定業務とは、多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務などです。詳しくは労働安全衛生規則第13条第1項第2号をご確認ください。
通常は新しく社員を雇い入れるときと、1年に1回以内の定期健康診断ができるよう計画を立てておくといいでしょう。特定業務従事者と海外派遣労働者の場合は、実施頻度が異なるため注意が必要です。
3.実施項目
一般健康診断の実施項目は、全部で11項目です。雇い入れ時と定期診断時では、次のようにほぼ変わらない項目を実施します(赤字部分が異なる診断項目です)。
11項目の中で医師が認めた場合は、次の項目の省略が可能です。あくまでも医師の判断でしか診断省略はできないため、企業側で勝手に診断項目を変更することはできません。
診断項目の詳細は適宜変更されることがあり、2018年4月から適応された最新の変更点は、次の3点です。
- 血中脂質検査のLDLコレステロールの評価方法の変更
- 血糖検査は空腹時または随時血糖の検査が必須。HbA1cのみの検査は認めない
- 尿検査では医師が必要と認めた場合「血清クレアチニン検査」の追加が望まれる
定期健康診断や雇い入れの健康診断時には、昨年からの変更点はないか確認をするようにしましょう。
なお、労働安全衛生法の改正を受けて、2015年12月より労働者が50人以上の事業所においては1年に1回労働者へのストレスチェックが義務化されました。
ストレスチェックは、ストレスに関する質問表に回答することで労働者が自分のストレス状態を把握できる検査で、うつなどのメンタルヘルス不調を未然に防ぐことが目的です。
医師などのチェックにより高ストレス状態にあると判断された人に対しては面接指導を実施し、労働環境の見直しを行います。一般健康診断の実施と併せて、ストレスチェックの実施も念頭に置いておくようにしましょう。
2)特殊健康診断
特殊健康診断は一般健康診断とは異なり、有害なものを取り扱う労働者の健康管理を目的としています。特殊健康診断の対象者になる場合は一般健康診断と併せて、定められている診断項目を実施しなければなりません。
1.対象者
特殊健康診断の対象者は、下記のような有害物質を取り扱っている労働者です。
- 屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者
- 鉛業務に常時従事する労働者
- 四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者
- 特定化学物質を製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者および過去に従事した在籍労働者
- 高圧室内業務または潜水業務に常時従事する労働者
- 放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者
- 除染等業務に常時従事する除染等業務従事者
- 石綿等の取り扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者および過去に従事したことのある労働者
対象業務に従事している正社員やパート、アルバイト、派遣社員などが当てはまります。
一般健康診断と大きく異なるのは、派遣社員の特殊健康診断は派遣先企業の義務となることです。
ただし、現在特殊健康診断が必要な業務に携わっている場合のみで、過去の会社で携わっていた場合の特殊健康診断については派遣元の義務となります。
2.実施期間
特殊健康診断の中で代表的なものが「じん肺健診」と「歯科医師による健康診断」です。どちらも下記のように期間が定められており、定期的な検診を行うよう計画を立てる必要があります。
この他の特殊健康診断は従事期間等により実施頻度が細かく分かれているので、厚生労働省大阪労働局「健康診断を実施しましょう」を参考にして判断してみてください。
■厚生労働省大阪労働局「健康診断を実施しましょう」■ https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H27/kenko/270703.pdf
3.実施項目
特殊健康診断の代表的な実施項目は、次の通りです。
この他にも、業務内容により下記のような特殊健康診断があります。業務内容と併せて実施しなければならないかチェックしておくことが大切です。
企業が健康診断を行う手順
企業の健康診断の大まかな流れは、次の4つの手順で進めます。
- 健康診断を実施する方法を決める
- 期日までに健康診断を実施する
- 健康診断の結果を通知、保管する
- 再受診や二次健康診断の推奨、場合によっては労働環境を見直す
また、スムーズに健康診断を実施するためには、次の3つのポイントがあります。
- 産業医の設置や地域の保健センターとの連携など、普段から健康診断のフォローがしやすい状態にする
- 健康診断の流れを決めておいて効率よく進行できるようにする
- 労働者の健康を促進するような取り組みを検討する
手順の具体的な方法や、スムーズに健康診断を実施するための3つのポイントを、詳しくご紹介します。
健康診断を実施する方法を決める
まずは労働者に対してどのように健康診断を実施するのか決めましょう。実施方法は主に次の2つのパターンがあります。
- 近くの病院で健康診断が可能かどうか聞いて、社員が受診できる施設を用意する
- 健康診断バスを使用し、会社で診察をする
1)社員が受診できる医療機関を用意する
会社近くの病院で健康診断をできる場所を探し、定められた期間内に社員に受診してもらう方法です。健康診断をしなければならない期間内の受診ならいつでもいいので、1~3カ月以内などある程度余裕のあるスケジュールが組めるところがメリットです。
一方で、対象となる労働者が全員受診できるように、受診を促すことが必要に。例えば、部署やチームごとに受診日を指定するなど、漏れなく受診できる工夫をしなければなりません。
また、提携病院を探さなければならないのはもちろんのこと、支店や営業所をいくつも抱えている企業の場合は社員が行きやすいクリニックをいくつか用意しておくことも重要。産業医がいる場合は相談しながら進めることがおすすめです。
- メリット…社員の都合を優先し、受診しやすいときに健康診断ができる。
- デメリット…全員に受診してもらえるよう、促さなければならない。定期的に健康診断を実施してもらえる病院を探す必要がある。
2)健康診断バスを使用し、会社で診察をする
健康診断バスを利用し、企業内と企業の駐車スペースで手軽に健康診断ができる方法です。社団法人や市町村が実施している健康診断バスの一部では出張費がかからないため、健康診断料金のみで利用できます。出社している労働者が半日~1日で健康診断が終えられるので、効率よく進むところが特徴です。
一方で、当日参加できない労働者の対応方法や企業内でプライバシーを守りながら健康診断ができる仕組み作りなどを事前に考えておく必要があります。
また、特殊健康診断の項目によっては対応できない場合があるので、事前に確認しておきましょう。
- メリット…出社している労働者が一度に受診するため、効率よく健康診断が終えられる。
- デメリット…健康診断当日にいない労働者の対応を考えておく必要がある。プライバシーを守りながら実施できるよう、あらかじめ検討する必要がある。
健康診断を実施する
健康診断は実施しなければならない期間内に終えられるようスケジュールを組み、労働者に通知しましょう。健康診断は個人のプライバシーに関わるものなので、実施時期や時間時間の通達方法には個別で手渡しするなどの工夫が必要です。
また、健康診断実施時の賃金については、次のように一般健康診断と特殊健康診断で異なるため注意をしながら計画しましょう。
1. 一般健康診断
労働者の一般的な健康確保を目的としており直接業務に関わるものではありません。そのため、受診時間の賃金については労使間の話し合いで決まるものとなります。
2. 特殊健康診断
業務を遂行するために実施しなければならない健康診断なので、労働時間と見なされます。特殊健康診断を業務時間外に実施した場合には、時間外労働と見なされ賃金が発生します。
健康診断結果は会社で保管、本人にも通知
健康診断の結果は、個人に直接郵送される場合や企業にまとめて届く場合などさまざまなケースがあります。
企業にまとめて届く場合は労働安全衛生法66条の6で「健康診断の結果は本人に通知する義務がある」と定められているため、必ず本人に通知するようにしましょう。
それと同時に、労働安全衛生法66条の3では企業でも健康診断の結果を保管しなければならないと定められています。一般健康診断の場合、次のように紙または電子形式で5年間の保管が必要です。
特殊健康診断の場合は、診断内容により保管期間が大きく異なります。労働者が健康を害したときの重要な記録となるため、法律に従い保管することが大切です。
なお、常時50人以上雇っている場合の特殊健康診断は、「健康診断結果報告書」を提出します。次の結果を報告書にまとめて、遅滞なく所轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。
- 常時50人以上の労働者を雇っている場合の定期健康診断の結果
- 特殊健康診断の結果
(注)じん肺健康診断のみ、毎年年末までの実施状況を翌年2月末までに提出
下記よりフォーマットがダウンロードできるので、健康診断後はできるだけ早く報告をするようにしましょう。
■厚生労働省「各種健康診断結果報告書」■ https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/18.html
健康診断後は「二次健康診断」など適切な対応をする
健康診断は実施して終わりではありません。実施後のフォローや管理も重要な役割となります。以下で健康診断後に押さえておきたい3点を紹介します。
1)脳、心臓疾患の危険性がある場合は二次健康診断を推奨
健康診断の結果、脳血管疾患や心疾患を発症する可能性が高いと判断され労働者は、健康診断から3カ月以内に次のような二次健康診断を受けることができます。
二次健康診断は受診者が都道府県の労働局に給付金申請をすることで、無料で受診できる制度です。企業側に義務はありませんが、労働者の健康管理の側面からも受診を推奨するよう連絡や通知を行うといいでしょう。
労働者が二次健康診断を受診した場合は、給付申請書類の確認と健康診断結果の受け取り、保管が推奨されています。
2)異常が認められる労働者の健康保持に努める必要がある
二次健康診断の対象者に当てはまらなくても、健康診断で「要観察」「異常の所見あり」などの結果が出た労働者には、再受診や保健指導を促進しなければなりません。
例えば、次のような取り組みによって労働者の健康維持をサポートする働きかけが必要です。
- 健康診断の内容に基づく再検査や精密検査の推奨
- 医師や保健師、産業医による生活指導や健康管理指導
- 治療のための受診の推奨
労働者への再検査や指導は義務ではありませんが、推奨されており、できる限り健康を保持しながら生き生きと働けるよう企業側も努力することが求められています。
3)健康診断の結果について医師等からの意見聴取をしなければならない
労働安全衛生法第66条の4には「健康診断の結果当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師または歯科医師の意見を聴かなければならない」と定められています。
健康診断の実施から3カ月以内に、産業医または労働者の健康管理に必要な知識がある医師から意見を聞くようにしましょう。
労働者の健康を保持するために、医師や産業医は次のような判断を促すことができます。
就業制限や要休業の判断が出た労働者とは適宜面談などを実施して、産業医や医師の意見を伝えながら両者が納得できるよう努めることも大切です。
また、場合によっては労働環境の改善や勤務体系の見直しなど労働者の健康を害する要素がないか検討することもあります。
【注意】コロナ禍で柔軟な対応が求められている
診断の手順は今までご紹介した4つで終わりですが、コロナ禍での健康診断では柔軟な対応が求められています。
2020年5月に厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言の解除を踏まえた各種健診等における対応について」によると、主に次の内容が記載されています。
- 地域における感染の状況や感染拡大防止策の対応状況等を踏まえた上で、実施方法や実施時期を判断し、関係者や実施機関等と適宜相談の上で実施すること。
- 健康診断が延期となる場合は、別途各種健診・保健指導等を受ける機会を設けること。
コロナ禍で柔軟な対応が求められているため、迷ったら産業医や実施機関と話し合いながら進めるようしましょう。
また、一般社団法人日本総合健診医学会等が連名で提示している「健康診断実施時における新型コロナウイルス感染症対策について」では、新型コロナウイルス対策をしながら健康診断ができるよう、ガイドラインを整えているところです。
医療機関によっては実施時間の短縮、完全予約制や少人数制などでの対応となるので、どのような状況での実施となるのか確認しておくといいでしょう。
スムーズに健康診断を実施するための3つのポイント
健康診断の流れを把握できたところで、スムーズに健康診断をするためのポイントをご紹介します。健康診断をするときに戸惑うことがないよう、ぜひ3つのポイントを押さえてみてください。
1)日頃から健康診断フォローのしやすい環境を作る
健康診断は業種や企業規模、雇用形態によっては、1年のうちに何度も実施しなければなりません。だからこそ、日ごろから労働者の健康相談や健康診断のフォローをしやすい環境をつくっておくことが大切です。
例えば、次のような取り組みにより、労働者の健康に関する相談や健康診断の実施についての相談ができる専門家を用意しておくとよいでしょう。
- 産業医の設置
- 産業保健センターとの連携
- 相談できるかかりつけ医の設置
2)健康診断を実施するマニュアルを作っておく
健康診断は入社時や特殊健康診断、定期健康診断などそれぞれ実施時期が異なります。これをその都度考えて実施していると、どれだけ時間があっても足りません。事前に実施しなければならない健康診断ごとのマニュアルを作成しておきましょう。
マニュアルは下記のような区分に分けて、それぞれスムーズに進行できる流れを作っておきます。
例えば、定期健康診断のマニュアル作成をする場合は、毎年実施する時期と実施方法、労働者への告知方法まで決まっていれば前もって準備をしておくことが可能です。
できるだけ細かくルール化をしてしまうことで、役割分担をしながらスムーズに健康診断が実施できるようになります。
3)社員の健康意識を高めるイベントや福利厚生を用意する
健康診断の結果が悪いと、労働環境の見直しをはじめ、少なからず企業側の責任も問われることになります。健康診断時だけ健康管理や健康促進を促しても、労働者の健康管理をすることは難しいでしょう。
労働者が自身の健康管理を意識しながら仕事に取り組めるよう、普段から健康意識を高める取り組みを行うのも1つです。次のような労働者の健康管理に直結するものを考えてみてもよいでしょう。
- 社員の健康を促進する福利厚生を用意する(ジムや人間ドックの割引、健康相談室の設置など)
- 労働者が体を動かすイベントの実施
- 健康促進のセミナーの開催
例えば、株式会社東京堂では全ての事業場に健康統括者を1人配置し、情報共有をしながら労働者の健康管理に取り組んでいるといいます。「思いやり・配慮ルール」で時間調整をしながら健康管理を行っており、再受診の場合も個別で時間調整をしつつ全員が安心して健康診断が受けられる環境を整えています。
また、社員全員が禁煙を目指し「禁煙バトン」を実施しているところも特徴です。気兼ねなく健康診断を受診できる仕組み作りができており、日ごろからの健康促進にも積極的に取り組めているそうです。
健康診断に関するQ&A
最後に、健康診断をするときに解決しておきたい疑問をQ&Aでまとめてみました。分からない点を払拭し、健康診断ができるよう参考にしてみてください。
Q1)休業中の労働者の健康診断も必須ですか?
A.健康診断を実施するときに育休や病気などで休業している労働者がいた場合、健康診断をしなくても問題ありません。しかし、休業が終了した際には速やかに健康診断をするようにしてください。
Q2)最近人間ドックを受診したという労働者がいるのですが、一般健康診断もしてもらう必要はありますか?
A.一般健康診断の受診項目を満たしていれば、再度一般健康診断を受ける必要はありません。ただし、人間ドックの結果を会社に提出する必要があります。
Q3)健康診断の料金相場はどれくらいでしょうか?
A.一般健康診断の一人当たりの料金は1万~1万5000円くらいが相場です。実施項目やクリニックにより費用が前後するので、事前に相談するのがおすすめです。特殊健康診断の場合は項目や診断内容により費用が大きく異なるため、実施予定のクリニックに相談してみてください。
Q4)二次健康診断や再検査などの健康診断結果の保管は必須ですか?
A.二次健康診断や再検査などの結果の保管は義務ではありません。しかし、継続して社員の健康状態を把握しておくことは健康維持のために重要なことなので推奨されています。
まとめ
いかがでしたか? 企業での健康診断は義務であることが分かり、実施する方法や流れを把握できたかと思います。
最後に、この記事の内容をまとめると次の点がポイントとなります。
- 労働者を対象に健康診断を実施することは、企業の義務として定められている
- 健康診断をしなかった場合、労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金が科せられる可能性がある
- コロナ禍では厚生労働省の指示に従いながら、柔軟な対応が求められる
- 健康診断の種類は大きく分けて2つ
- 一般健康診断:入社時の健康診断や定期健康診断など労働者の健康状態を把握し、場合によっては改善するよう働きかけたり労働環境を見直したりすることで、生活習慣病や重大な疾患を未然に防ぐことを目的としている
- 特殊健康診断:じん肺健康診断や歯科検診など有害なものを取り扱う業種を対象とした特別な健康診断
- 健康診断の流れは次の4段階に沿って実施する
- 健康診断を実施する方法を決める
- 期日までに健康診断を実施する
- 健康診断の結果を通知、健康診断の結果は保管する
- 再受診や二次健康診断の推奨、場合によっては労働環境を見直す
- 健康診断をスムーズに行うポイントは次の3つ
- 産業医の設置や地域の保健センターとの連携など、普段から健康診断のフォローがしやすい状態にする
- 健康診断の流れを決めておいて効率よく進行できるようにする
- 労働者の健康を促進するような取り組みを検討する
この記事をもとに、業種や企業の規模に応じた適切な健康診断を実施できるようになることを願っています。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年8月7日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
執筆者:日本情報マート
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