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従業員の健康増進は「歯」から 企業向け歯科検診とは?

社員を大切にしたい 2021年4月26日

「口の健康」が仕事のパフォーマンスに影響する?

口の健康状態は、体全体の健康に大きな影響を与え、仕事のパフォーマンスにも直結するといわれます。例えば、成人の約7割がかかっているといわれる歯周病は、糖尿病や心疾患のリスクを高めることが分かっています(注)。

最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大で来院を控えたり、リモートワークの影響で間食が増えたり、変な姿勢で食事をしてかみ合わせが悪くなったりするために、歯周病が悪化するケースが増えています。

企業にとって、従業員の口の健康対策は、喫緊の課題の1つといえるでしょう。そのためには、歯周病のリスクや予防法を社内に周知したり、企業向け歯科検診を実施したりするのが効果的です。

本記事では、案外知られていない歯周病のリスクを解説した上で、企業向け歯科検診など、従業員の口の健康を整えるための方法とポイントを紹介します。また、コロナ禍で対面での歯科検診に抵抗があるという従業員向けに、オンラインでの歯科検診の現状などもお伝えします。

(注)厚生労働省「歯科口腔保健に関する最近の動向

歯周病は、自分では気付きにくい?

歯周病は、歯周病菌などの細菌感染が原因で起こる感染症で、「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」と呼ばれるほど、進行に気付きにくい病気です。早期発見できれば簡単な治療で済みますが、歯肉が腫れる、歯がぐらぐらする、かむと痛みが伴うといった症状が出てから受診すると、治療は大変になります。

歯周病は、自分では気付きくく、症状が出た頃には進行しているということを、まずは念頭に置いておきましょう。

歯周病が他の病気を引き起こす?

歯周病と深い関係がある病気の1つが糖尿病です。糖尿病になると、体の免疫機能が低下して細菌に感染しやすくなり、歯周組織の炎症が進んで歯周病が悪化します。そのため、歯周病は糖尿病の合併症として認識されています。

反対に、歯周病を治療すると、糖尿病患者の血糖値のコントロールが改善することから、歯周病と糖尿病には双方向的な関連があるといわれます(注)。

(注)厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連

また、歯周病は、日本人の死因第2位である心疾患や、第3位である脳卒中といった「循環器病」とも深い関係があるといわれます。国立循環器病研究センターのウェブサイトによると、歯周病にかかっている人はそうでない人に比べ、1.5~2.8倍も循環器病を発症しやすいことが分かっています(注)。

(注)国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス「歯周病と循環器病

この他、骨粗しょう症やアルツハイマー型認知症、女性に限ると低体重出産や早産など、さまざまな病気との関連性も研究されています。歯周病は口だけでなく、体全体に大きく関わる病気だということが分かります。

企業ができる従業員の口の健康対策は?

ここからは、企業ができる従業員の口の健康対策を紹介します。ここまで解説したような歯周病のリスクを周知したり、予防歯科の啓発ポスター・冊子などを配布したりといった啓蒙活動ももちろん重要ですが、まずは、歯科検診を受けてもらうことです。

前述したように、歯周病は自分では気付きにくいものです。歯科検診で早期発見してもらったり、発症リスクを診断してもらったりするのが一番です。歯科医から適切なアドバイスや治療を受けると、歯磨き習慣の見直しや、丁寧な歯磨きの動機付けになります。

歯科検診の受診時期は、3カ月~半年に1回が良いといわれますが、人によって歯周病のかかりやすさや症状の進行スピードは異なるため、かかりつけの歯医者さんに相談して、定期検診の間隔を決めることが重要です。

企業向け歯科検診のメリットは?

定期的な歯科検診の重要性を啓発しても、従業員全員が受診するようにはならないでしょう。そこで最近では、定期健康診断のように、従業員全員に指定の歯科医院で受診してもらったり、歯科医師や歯科衛生士が企業を訪問して検診を行ったりする、企業向け歯科検診を導入するケースがあります。

検診の内容は歯科医院によって異なりますが、従業員1人につき数分程度かけて問診と診察を行います。オプションとして、口腔(こうくう)衛生指導、ブラッシング指導、専用機器と専門衛生士による歯石除去、口臭測定、X線診断などを行う歯科医院もあります。

企業向け歯科検診を導入するメリットとして、次のようなものが考えられます。

  • 全身疾患のリスク低減やそれに伴う休職等の防止
  • 体調不良を未然に防ぐことによる従業員の生産性向上
  • 営業職などでは身だしなみの一環として、歯周病等を原因とする口臭を予防
  • 虫歯や歯周病などの早期発見・治療による健保組合の医療費負担軽減
  • 従業員の健康増進に取り組む企業としてのイメージアップ
  • 福利厚生の充実による従業員満足度の向上、離職防止

なお、通常の企業の場合、法令上、歯科検診の実施義務はありません。そのため、従業員に歯科検診を受診させるには、就業規則等に定めを設けるか、従業員から同意を得る必要があります。

企業向け歯科検診の感染症対策は大丈夫?

歯科医院では、感染症対策として、ソーシャルディスタンスに配慮した人数制限や、パーテーション等の設置、検温・消毒・換気といった「3密」対策を実施しています。また、院内に大きな空気浄化装置を設置したり、患者のマスクを外して口腔内を診察する際には、空気吸引器を近づけて飛沫を吸引したりするケースもあります。

訪問型の企業向け歯科検診でも、1日の受診人数を減らして受診日を分けたり、パーテーションやサーキュレーターを持参したりして対策を施してくれる歯科医院も増えています。

従業員には、このように感染症対策が徹底されていることを伝え、受診を促しましょう。なお、訪問型の企業向け歯科検診を実施している医院へのヒアリングによると、「2020年の夏までは歯科検診を見送りたいという企業が多かったものの、ここ最近は、導入したいという企業が増えてきた。リモートワークを導入している従業員については、そのときだけ出社してもらったり、オンラインでの歯科検診を実施したりしている」とのことです(2021年3月5日時点)。

オンラインでの歯科検診とは?

2020年5月、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会にて、初診からスマートフォンやパソコンを使ってのオンライン診療を、歯科にも認めることが了承されました。コロナ禍において、歯科医院での患者の滞在時間を短くしたり、来院を控える患者に対する来院のきっかけづくりにしたりといった目的で、導入する歯科医院が増えています。

企業向け歯科検診にオンライン検診を取り入れている歯科医院へのヒアリングによると、「企業向け歯科検診に来たくない従業員に対して、対面での歯科検診の入り口・きっかけづくりとして実施している」とのことです(2021年3月9日時点)。

ただし、「オンライン検診では、歯周病の有無や虫歯の進行度合いを断定したり、治療方法を提示したりといった『診断』はできない」とのことです。

「お口の状況は、画面越しでは不確定な部分も多く、医師が触ることもできないため、明確な診断を下すことは難しい。オンラインでの歯科検診では、事前にお口の状況に関するアンケートを採った上で、『あなたのお口のリスクはこうですよ』というのを導き出し、アドバイスをする。その上で、対面での歯科検診をお勧めする」

また、企業向け歯科検診において、対面とオンラインを組み合わせているケースもあります。対面での歯科検診の結果から、個別のアドバイスや指導が必要な従業員をピックアップし、オンラインツールを使って1人につき10分程度、時間を指定してその人に合ったブラッシング指導を行うといったものです。

企業向け歯科検診のサービス内容は、実施している医院によって異なるので、一度問い合わせてみましょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年3月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

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