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中途採用者の離職を防ぐ健康管理の秘訣は意外なところにあった?

社員を大切にしたい 2021年5月6日

「期待の中途採用者が体調不良に……」 ある経営者の相談事例

「半年前に入社した中途採用の社員が、ここのところ体調が悪いらしく休みがちです。経験も豊富なので、わが社での活躍を期待しているのですが…」

産業医として、月に1度訪問している中小企業の経営者から、こんな相談を受けました。

中途採用を行う中小企業の多くが、中途採用者の定着に課題を感じています。中小企業庁によると、中途採用者の採用後3年間の離職率は約3割に及びます。即戦力として期待しますが、中途採用者特有の悩みや課題をフォローしないと、体調不良につながることもあります。

この中途採用者は、30代後半で、入社半年後くらいから突発的な遅刻や休みが続きました。そこで、経営者にお願いして、中途採用者と面談をしました。そのときに聞いた状況は次のようなものです。

  • 入社して、2カ月くらいから、頭痛が生じてきた
  • その後、睡眠状態が悪化。熟睡感が得られず、朝、起きられないことも増えてきて会社を休まなければならなくなった

このような症状が始まったきっかけとして、次のようなことを打ち明けてくれました。

  • 業務自体には自信があったので経験から業務を進めたが、社内の決裁でトラブルを起こしてしまい、すっかり自信がなくなった
  • 同様の業務をするときだけではなく、それ以外の仕事に取りかかろうとすると不安で仕方なく、業務が前に進まなくなってしまう

悩みや課題を抱えていても、転職直後は緊張感もあり、業務についていくことができます。しかし、疲労が蓄積し、徐々に体調がコントロールできなくなります。

この中途採用者には体調管理のために受診してもらった上で、残業を避けて休養に努めてもらいました。その結果、数カ月後には体調を取り戻すことができたので良かったです。ただ、中途採用者が体調不良に陥った期間の損失は、企業にとって大きいものです。

では、どうしたらこのような事態を防げたでしょうか。以降で解説していきます。

中途採用者の離職防止のために企業ができることは?

同業種でも企業によって仕事の進め方はさまざまです。中途採用者は、このルールに戸惑い、過去の経験とのギャップを感じます。経営者や管理職は、このギャップが、入社直後の中途採用者にとって大きな悩みになることを理解する必要があります。

この点、新入社員であれば丁寧な研修でカバーできる部分も大きいですが、中途採用者の場合は簡単な説明だけで、すぐに現場に出てもらうケースが少なくありません。中途採用者には経験があり、即戦力になると考えられているからです。

確かに、新入社員のように手間がかかる中途採用者では困ります。とはいえ、中途採用者が体調不良になったり、早期離職してしまったりしたら企業にとって大きな痛手です。そこで重要になるのが、後述するワークフローの明確化なのです。

ワークフローを明確化して説明できるようにする

今回の相談事例でもそうですが、企業は中途採用者を即戦力と期待します。しかし、企業ごとに異なるルールや壁にぶつかり、実力を発揮できずに悩んでしまいます。そこで、まずは業務のワークフローを明確にして、中途採用者の入社時に説明ができるようにしましょう。

それでも、最初のうち、中途採用者は細かいルールで悩むでしょう。そこで、業務に慣れるまでは、管理職や同僚が相談に乗れるようにしましょう。企業としては「細かいことでも相談してほしい!」と思っていても、中途採用者は「こんなことを相談してもいいのかな?」と遠慮することがよくあります。そこで、定期的なミーティングを設定するなどして、良い意味で強制的にコミュニケーションが取れるようにしましょう。

中途採用者の健康管理をきめ細かく行うのは難しくても、職場環境を整えることで未然に防げる問題があります。そうした取り組みは、社員が健康的に働き、結果的に企業の生産性を高める「健康経営」にもつながります。

最後に別の視点から補足をします。中途採用者は他社のワークフローを知っており、その経験は自社の生産性向上につながるかもしれません。中途採用者に、これまでの経験を話してもらう機会を積極的に設けるのもよいでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年1月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
佐藤 乃理子 産業医・労働衛生コンサルタント

佐藤先生

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究に当たった。2010年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、2013年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。2020年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。

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