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産業医の上手な活用方法とは? 主な業務・相談事例を分かりやすく紹介

社員を大切にしたい 2021年2月16日

産業医を従業員の健康管理に活かす

「テレワーク下での従業員の体調管理が難しい」「休職者が復職したらどうサポートすればよいのか」など、多くの企業では従業員の健康管理に課題を感じています。どの課題から手を付ければよいのか? と悩む経営者も多いのではないでしょうか。

そのようなときに、相談に乗り、解決策を提案してくれるのが産業医です。産業医は50人以上の事業所には選任する義務があり、50人未満の事業所でも、医師などの専門職に健康管理を行わせるように努めることが法令で求められています。

とはいえ、産業医と関わりを持ったことがあるという経営者は多くないでしょう。産業医の業務内容や、実際に何をしてくれるのかを知らず、上手く活用できていないのが現状です。

この記事では、経営者が知っておきたい産業医の6つの業務を分かりやすく紹介します。その上で、実際にどのような助言・対応をしてくれるのか、次の2つの相談事例を簡単に紹介します。どちらも、筆者が産業医として相談を受ける中で、ここ最近増えていると実感する事例です。

  • テレワークでストレスを抱える従業員へのストレスの軽減方法はあるか?
  • 休職者が復職した際に、どのように対応をしたらいいか?

この記事を読めば、産業医にどこまで相談してよいのかを理解でき、産業医を従業員の健康管理に上手く活用できるようになるでしょう。

経営者アンケートでは約42%の企業が「健康課題あり」

全国の経営者300人にアンケートを行ったところ、42.3%が従業員の健康管理に何らかの課題を感じていました。内訳を見ると多岐にわたりますが、実は、これらの課題は全て、産業医に相談することができます。

一方で、独自アンケートによると、産業医などと関わったことがある経営者は約19%にとどまります。約78%は関わりを持ったことがない、そもそもどんな業種なのかよく知らないという回答でした。

産業医とは

産業医は労働安全衛生法の中で、50人以上の従業員がいる事業所には選任する義務があります。業種にもよりますが、50~1000人程度の事業所であれば、産業医を選任し、月に1回から数回訪問してもらいます。いわゆる「嘱託産業医」がこれにあたります。これ以上大きな事業所になると「専属産業医」が必要になります。

また、法令では50人未満の事業所でも、従業員の健康管理のため、医学的知識を有する医師等の専門職に健康管理を行わせるように努めることが求められています。
産業医の仕事は事業者の従業員への健康に関する「安全配慮義務の履行」を手助けするものです。法的位置づけもあり、専門的立場から助言や勧告を実施する場合もあります。その助言や勧告により、従業員が健康を害することなく、生き生きと働けるよう環境の整備を事業者とともに実行するのが産業医です。事業者が形成したい事業所のイメージを産業医に伝え、従業員とも協力していくことでより良い職場環境の形成が可能です。

また、産業医の選任義務がないような規模(従業員50人未満)の事業所では、地域産業保健センターや労働衛生コンサルタント(保健衛生)、産業保健師など、他の専門職の活用も一案でしょう。

実際に筆者が嘱託産業医として、ある事業所を訪問した時の業務内容が、次の6つです。嘱託産業医が事業所を訪問する時間は1回1~3時間程度が平均的でしょう。

  • 衛生委員会への参加
  • 職場巡視
  • 過重労働面談
  • 健康診断結果等による面談
  • 復職者の面談
  • メンタルヘルスケア(ストレスチェックも含む)

企業側として、産業医の訪問時間などに制限がある場合は、法令やその事業所の課題などをふまえ、優先順位をつけ対応します。

それぞれの業務を、簡単に見ていきましょう。

産業医の6つの主な業務

1)衛生委員会への参加

50人以上の従業員がいる全ての事業所には、「衛生委員会」を設置し、月に1回開催することが義務付けられています。業務を遂行することで従業員が健康を害することがないよう、また、より健康増進できる職場環境を整えていくため、事業者と従業員が話し合い、実行をする会議です。

産業医は衛生委員会に出席し、医学の専門的立場から、季節ごとの健康管理や職場環境改善に関して意見を伝えます。

なお、特定の業種(建設業、運送業、製造業など)によっては、50人以上もしくは100人以上の事業所で「安全委員会」の設置が義務付けられています。安全委員会では、従業員の危険防止や労災対策が話し合われます。安全委員会と衛生委員会の両方を設置しなければならない事業所は、両者を統合した「安全衛生委員会」とすることができます。

2)職場巡視

産業医による職場巡視は、法令で1カ月に1回以上実施するように定められています。ただし、事業者が衛生管理者による週1回の定期巡視などの情報を産業医に提供する場合に限り、2カ月に1回以上の実施となります。

産業医は職場巡視の結果を衛生委員会で報告します。改善が必要であれば、その方法等について委員会内で議論をします。

3)過重労働面談

事業者は、月に80時間を超える残業をした従業員がいたら、産業医へその情報を知らせることが法令で義務付けられています。産業医はその情報をもとに面談勧奨を実施し、従業員から希望があれば面談を実施します。

4)健康診断結果等による面談

年に1度(業種により年2回)は受診する健康診断は事業者が実施しなければならないこととして法律に定められています。産業医は個々の従業員の健康診断の結果を判定し、今、治療が必要なのかどうか、就労が可能なのかどうかを判断します。

特に治療が必要な人や治療をしていても治療状況が思わしくない人などと面談し、就労と治療が思うように進んでいるか、就労により体調が悪化していないかなどを判断し、必要に応じて事業者にその結果を伝えます。報告内容は面談した本人の同意の上です。

5)復職者の面談

メンタルヘルスや身体疾患で体調を崩し、一時的に休職をした人が職場に復帰する際には、職場環境の中で就労が可能かどうか、また、復帰後は就労により健康を害していないかを含めて面談します。

産業医は面談の結果をもとに、所属長や人事担当者の方と相談しながら、本人の復職を支援します。

6)メンタルヘルスケア(ストレスチェックも含む)

50人以上の事業所には、年に1度、ストレスチェックの実施が義務付けられています。産業医はこのストレスチェックの実施者となります。その結果、「高ストレス者」と判定された人が希望した場合、面談を実施します。

産業医は面談結果を踏まえ、面談者への配慮の必要性や職場改善に関する意見などを事業者に伝えます。

それ以外にも、希望者からメンタルヘルスの相談を受けたり、メンタルヘルスに関する企業向けのセミナーを開催したりしています。

相談事例①:テレワークでストレスを抱える従業員へのストレスの軽減方法はあるか?

実際に、産業医がどのような助言・対応をするのかを紹介します。

最近、訪問する企業で多く相談が寄せられるのが、テレワーク下で従業員がストレスを抱えてしまい、集中力が低下したり、効率が落ちたりしているというものです。

出社して仕事をすることが当たり前だった状況から、急に在宅でのテレワークになり、なんとか対応してきた従業員も多いでしょう。徐々に自分自身にマッチしない、なかなか慣れることができないといった人もいるようです。

そうした環境下で、少しでもストレスを軽減して業務をしてもらうために、従業員や管理職の方に次のような助言を行います。

・始業前、終業後、仕事との時間を区切るための儀式のようなものをしてみる
朝食をとった直後にそのままパソコンのスイッチを入れる…といったことをしていないでしょうか? プライベートと仕事時間の切り替えがうまくいかない可能性があります。

そこで、始業開始の数分前になったら、あえていったん玄関を出て、少し歩いてから家に戻り仕事を開始する。あるいは、きちんとスーツなどに着替えて仕事をする、コーヒーを飲むなど、時間を切り替える意識をしてみるといいかもしれません。特に、家をいったん出てから仕事を開始する習慣は、運動不足の解消にもなり、身体的健康の維持につながります。

・オンライン会議の組み方を工夫する
特に管理職の方から伺う悩みですが、スケジュールが空いていると次々にオンライン会議が組まれ、自身の作業は時間外にすることになっているケースがあるようです。部下からの相談も十分に聞く必要がある一方で、自身の作業時間の減少がつらいということも耳にします。

オンラインでの会議以外にメールやチャット機能、様々なコミュニケーション方法がオンライン上にはあります。それぞれのツールを業務内容や緊急度、重要性等により活用方法を企業の状況や業務状況に合わせ検討するのがよいでしょう。

また、オンライン会議が可能な時間、作業に集中したい時間などをあらかじめ決めておくことも、自身や周囲とのコミュニケーションを円滑にするために重要です。

業務の間に時間的余裕を作ることは、精神的な疲労を予防することにもつながります。このような対策を実施すると、時間的余裕を意識的につながることで、メンタル不調のケアにつながるものと思います。

相談事例②:休職者が復職した際に、どのように対応したらいいか?

先述の産業医の業務内容でも触れましたが、メンタルヘルスや身体の疾患などで休職していた人が復職する際には、一定の配慮が必要になります。事業者もしくは管理職は、その配慮を踏まえ、どのような業務をしてもらうかなどを検討することになります。

産業医は主治医からの診断書と本人の状態、また職場の状況を鑑み、本人の業務時間などにおいて望ましい配慮の提案をします。職場はそれに合わせ、業務内容を検討します。疾患にもよりますが、復職からの一定期間を経て通常業務ができるようになることが望ましいでしょう。

そのため、復職から通常業務へ戻るまでの期間をあらかじめ相談し、それを目標に復職支援プランを作成して、本人、管理職、産業医の共通認識として進めていくことが肝要です。その目標に従い、就業配慮を継続すべきかなどを適宜相談していくとよいでしょう。

復職直後は特に、通院の継続が必要な場合がほとんどです。就業時間内に通院が必要な場合も多く、その点も確認しておかなければなりません。

産業医は本人の健康状態をサポートし、「仕事ができる状態である」という観点から本人と話し、事業者ができる就業配慮と調和していきます。就業配慮については様々な方法があります。それぞれの事業所にマッチした内容で検討する必要があるので、就業時間や業務内容など事業所として配慮できる内容を予め産業医などに詳しく伝えることが重要です。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年1月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者:佐藤乃理子 産業医・労働衛生コンサルタント

佐藤先生

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究に当たった。2010年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、2013年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。2015年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。2020年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルの在り方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。

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