この記事のタグ: 健康管理 健康経営®

「健康経営」を中小企業の経営者目線で考えてみる

社員を大切にしたい 2021年4月26日

「健康経営をしているか」と問われるとモヤモヤするのはなぜ?

最初に、「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

この記事にアクセスしてくださりありがとうございます。「健康経営」に関心を持っていただいているということは、読者の中に経営者や役職が高い方、人事担当者の方もいらっしゃると思います。

そこで、さっそくお尋ねします。

「御社は、【健康経営】に取り組んでいらっしゃいますか?」

いかがでしょうか。健康経営と聞かれると、「ん~、どうかな~」と、はっきり答えられないかもしれません。

それでは、もう1つお尋ねします。

「御社は、【従業員の健康管理】に注意していますか?」

こちらの質問には、皆さんが「はい!」とお答えになるのではないでしょうか。従業員の健康に関心を持たない経営者はいません。実際、毎年の定期健康診断から始まり、有給休暇の取得促進、ノー残業デーなどさまざまな取り組みをしていることでしょう。

そして、これら2つの回答のギャップこそが、経営者が感じている健康経営に対するモヤモヤの正体だと思います。実は、定期健康診断や有給休暇の取得促進、ノー残業デーなどは、全て健康経営の一環です。それなのに、「当社は健康経営に取り組んでいる!」と明確に言い切れないのは、健康経営に次のような側面があるからでしょう。

  • さまざまな定義がある
  • 国や行政の取り組みが数多くあり、関係性が分からない
  • 「これをやればよい」という取り組みが決まっていない(分からない)
  • 分かりやすい数値として効果が表れにくい

結論としては、多くの企業が既に健康経営に取り組んでいます。足りないところがあるとすれば「戦略性」と「計画性」であり、これを満たせば健康経営の取り組みはより本格的になるでしょう。以降では、そのために実践したほうがよいことをご提案します。

健康経営を本格化させるのは「戦略性」と「計画性」

「健康経営とは?」と聞かれると、なかなか答えるのが難しいものです。結局は経営者なりに健康経営の定義を持てばよいと思いますが、ここでは参考として一般的な定義を幾つか挙げてみます。

1.NPO法人健康経営研究会

健康経営とは、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを意味しています。(後略)

■NPO法人 健康経営研究会■
http://kenkokeiei.jp/whats

2.経済産業省

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。(後略)

■経済産業省 健康経営の推進■
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html

3.東京商工会議所

健康経営とは、従業員等の健康管理や健康増進の取り組みを「投資」と捉え、経営的な視点で考えて、戦略的に実行する新たな経営手法です。(後略)

■東京商工会議所 健康経営とは■
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/01/

これらは日本では代表的といえる健康経営の定義です。全て途中までしか紹介していませんが、続きの文章には、健康経営に取り組む理由や、期待される効果などが書かれています。ただし、健康経営に取り組む理由については冒頭で紹介した通り、改めて確認するまでもないと思います。なぜなら、健康経営を従業員の健康管理に置き換えた場合、「これに取り組まない理由はない」からです。

ここで考えたいのは、上の3つの定義全てに含まれている「経営的」や「戦略的」といったワードです。従業員の健康を考えるのは当然のこととして、「経営的」「戦略的」に健康経営を捉えて、より本格的に取り組む意義はどこにあるのでしょうか。

「福利厚生」の視点に注目して「計画性」を持たせる

「経営的」「戦略的」に取り組むということは、健康経営を事業計画の中に盛り込み、確実に遂行することに他なりません。また、事業計画に盛り込むのであれば、当然、効果も見込みます。ただ、ここが本当に難しいところです。

一般的に言われる健康経営の効果には次のようなものがあります。

  • 従業員が心身ともに健康だからこそ実現できる生産性の向上
  • 同じく、新たなチャレンジの創出
  • 従業員を大切にする企業の姿勢を内外に示すことによるイメージアップ
  • 健康経営に取り組む企業を魅力的に感じる求職者の獲得(人材採用)
  • 上記の結果として、企業業績や株価の向上

これらは全て素晴らしい効果です。ただし、これらがすぐに結果として表れるものばかりではないのも事実です。「健康経営の効果が分からない」という声があるのは、すぐに分かりやすい数値として認識しにくいからでしょう。「そもそも、効果をどういう数値で把握するのが妥当なのだろう?」と思っている方もいるかもしれません。これは「従業員満足度」(ES:Employee Satisfaction)に似ています。経営者なら、従業員に満足して働いてもらいたいと思い、実際にさまざまな取り組みもしますが、効果をすぐに実感できるとは限らないですし、指標自体をこじつけに感じてしまう面もあるということです。

もともと経営者は従業員を大切にしたいという思いを持っており、改めて意識することなく、既に健康経営に取り組んでいます。本格化させるには事業計画に盛り込むことが理想ですが、そうすると数値的な効果を見なければなりませんし、実務的な負担も生じます。中小企業にとって、この実務負担は重いものです。

そこで、足元の取り組みとして、

福利厚生の視点で、今の健康経営に少しだけ計画性を持たせること

をお勧めします。例えば、コロナ禍によってリモートワーク(テレワーク)が広まった影響で、仕事環境による従業員の健康問題がフォーカスされるようになりました。多くの企業では、こうした問題をモグラたたき的に解消しています。これはまさに健康経営の取り組みなのですが、「もう少し計画的に進める」ことが、「経営的・戦略的に健康経営を行う」ためのポイントです。例えば、「今年度の新入社員は○人で、全員リモートワークを認めるので、これまでの問題を踏まえて計画的に環境整備を進める」というような具合です。その際、法定外福利厚生として、スポーツクラブやサウナの利用費用を助成したり、日中に散歩やジョギングをする「中抜け」を認める制度を整えたりすることで、独自の健康経営プログラムが出来上がっていきます。

具体的な取り組みの参考になるように、「健康経営ハンドブック2018」に紹介されている取り組みの例を紹介します。

  1. 従業員が定期健康診断を100%受診する
  2. 定期健康診断の結果、「要精密検査」などになった従業員に受診勧奨を行う
  3. 50人未満の事業場においても、ストレスチェックを実施する
  4. 健康増進・過重労働防止等に向けて、具体的な目標を設定する
  5. 管理職または一般従業員に健康教育の機会を提供する
  6. 適切な働き方の実現に向けた取り組みを行う
  7. 職場・従業員間のコミュニケーション促進に向けた取り組みを行う
  8. 病気の治療と仕事の両立を支援する取り組みを行う
  9. 保健指導を実施する、または保険者による特定保健指導の実施機会を提供する
  10. 食生活の改善に向けた取り組みを行う
  11. 職場における運動機会を提供する
  12. 感染症予防に向けた取り組みを行う
  13. 長時間労働者への対応に関する取り組みを行う
  14. メンタル不調者への対応に関する取り組みを行う

■経済産業省 健康経営ハンドブック2018■
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoukeiei_handbook2018.pdf

自社で取り組む際に健康経営で参考にしたい動き

この章では、行政の取り組みや民間企業のサービスなどを、ウェブサイトから抜粋する形で紹介します。なお、以下では紹介していませんが、各自治体も地域の企業の健康経営をサポートしていますので、最寄りの自治体の取り組みなどもご確認ください。

1)健康経営銘柄

優れた健康経営を実践している企業を、東京証券取引所の上場企業33業種から、経済産業省と東京証券取引所が共同で各業種につき原則1社ずつ選定するものです。中小企業とは直接関係のないものですが、健康経営銘柄の株価をチェックしたり、選定された企業の取り組みを参考にしたりすることは役に立つでしょう。

■経済産業省 健康経営銘柄■
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_meigara.html

2)健康経営優良法人認定制度(ホワイト500、ブライト500)

健康経営に取り組む企業等の「見える化」をさらに進めるため、上場企業に限らず、未上場の企業や、医療法人等の法人を「健康経営優良法人」として認定する制度です。大企業を対象にしたものと、中小企業を対象にしたものがあります。また取り組み上位の企業は、大企業は「ホワイト500」、中小企業は「ブライト500」と呼ばれます。

■経済産業省 健康経営優良法人認定制度■
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html

3)健康経営アドバイザー

健康経営の必要性を伝え、実施へのきっかけを作る人材を育成するための研修プログラムです。経済産業省からの委託を受けて2016年に誕生し、これまでに延べ2万人以上が受講しています。2017年からは「e-learning」もスタートしたりしています。自社の健康経営の取り組みを本格化させる際は、従業員に健康経営アドバイザーの認定を受けてもらうのもよいかもしれません。

■東京商工会議所 健康経営アドバイザーとは■
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/03/

4)大同生命「KENCO SUPPORT PROGRAM」

大同生命が行っているのは、企業の「健康診断の受診促進の支援」、経営者・従業員個々の「生活習慣病等の発症リスク分析」、継続的な健康増進の取り組みを促す「健康促進ソリューション」「インセンティブ」の提供など、健康経営に必要なPDCAサイクルの実践を一貫してサポートするウェブサービスです。「KENCO SUPPORT PROGRAM」の全体像は次の通りです。

■大同生命「KENCO SUPPORT PROGRAM」■
https://www.daido-life.co.jp/knowledge/healthfund/program.html

頑張る経営者の応援サイト「健康経営」に関する参考コンテンツ

■健康経営優良法人認定制度~制度の認定基準や申請の流れ~■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300057/

■中小企業が健康経営の効果を高める2つのポイントとは?■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300044/

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年3月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
代表取締役 松田泰敏/日本情報マート

中小企業の頼れる情報源として、経営者の意思決定をサポートするコンテンツを配信。 「開業収支」「業界動向」「朝礼スピーチ」など2000本を超えるコンテンツを有するほか、年間200件以上の市場調査も行っている。現在、50を超える金融機関に情報提供を行っている。

関連記事