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改めて確認! コロナ禍で企業が実施すべき従業員の健康管理と感染予防対策

社員を大切にしたい 2021年10月27日

WHO(世界保健機関)による新型コロナウイルスのパンデミック宣言から、1年半以上がたちました。感染予防の意識が広がり、世界各地でワクチン接種が進められるなど、私たちを取り巻く環境も変化しています。
職場における感染予防対策についての知見も、学会や政府機関などから不定期に更新され、発表されています。そうした中、改めて自社の感染予防対策を見直し、従業員の健康管理を考えてみましょう。産業医の立場から、情報をまとめ、分かりやすくポイントを解説します。

基本となる6つの対策

まずは、一人ひとりが働く上で押さえておきたい、6つの感染予防対策を改めて紹介します。

  • 密閉・密集・密接にならない働き方
  • マスク着用
  • こまめな手洗い
  • 健康管理
  • 職場でのこまめな消毒
  • 職場における外部からのウイルス侵入予防

それぞれ見ていきましょう。

1)密閉・密集・密接にならない働き方

感染対策を行う上で3密の回避は重要です。区切られたスペースの中、複数人数で作業などをしなければならない場合、十分に距離を取ること、換気を十分に行う、飛沫が飛びやすい大きな声を出さないなど、あらかじめ確認するようにするとよいでしょう。3密の回避のためのリモートワークの推進も大切な観点です。

2)マスク着用

マスクの着用はだいぶ日常生活に溶け込んできています。マスクは飛沫の拡散を防止するとともに、吸い込みを防止するという意義もあります。そのため、複数人で作業する場合には必ずマスクを着用するようにしましょう。
着用するマスクは、飛沫の拡散を予防する上でも不織布を使用したマスクが理想的です。職場環境によって使えるマスクが限定される場合もありますが、できるだけ飛沫量が少なくなる素材のものを選ぶとよいでしょう。
また、せっかくマスクをしているのに、鼻を出したり、顎にマスクをつけたりしている光景を目にします。感染予防を考える上では口、鼻をしっかり覆うことが飛沫の噴き出し、吸い込みの防止になるので注意しましょう。
なお、季節によってはマスク着用による熱中症も懸念されます。十分なソーシャルディスタンスを保てるときはマスクを外すことも重要です。

3)こまめな手洗い

手洗いも感染対策の中では重要です。外出から帰った後、食事前、トイレに行った後など、せっけんを使用し手洗いをするだけで、感染の予防につながります。徹底しましょう。

4)健康管理

ご自身の健康状態を管理することも重要です。いつもと変わりがないか、発熱はないかなど、それを把握しておくことは大切です。報道でもあるように、多くの方がどこで感染したか分からない状況です。体調の確認とともに、その日に誰とどのくらい会ったかなどを把握しておくと、感染をしたときに連絡を取り、相互に対策が取りやすくなります。
また、体調がすぐれないときには外出を避ける、万が一を考え、仕事の予定も余裕をもって対応できるようなスケジュールにするとよいでしょう。

5)職場でのこまめな消毒

共有スペースにおける消毒は意識的に行いたいものです。塩素系の漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を薄めたものや、75%~90%以上のアルコールが手軽に行える方法でしょう。
会議室の机や椅子、ドアノブ、エレベーターのスイッチ、コピー機、コーヒーメーカーやポッドのスイッチなど、共有しているものは多くあります。会議室などの消毒は、利用前後にルールを決めて実施するようにしましょう。
また、ドアノブやエレベーターのスイッチ、階段の手すりなどに関しても、時間を決めて清掃をするなどの対策しておくとよいでしょう。

6)職場における外部からのウイルス侵入予防

対面での打ち合わせはなくすことが原則になります。しかし、どうしても必要な場合は、来客時の応接室や取引先との打ち合わせ場所は、可能な限り固定した上で、間仕切りの設置、出入り口の手指消毒の設置が基本です。その上で、来訪前に来客や取引先の方の体調や、相手企業としての感染対策を確認しておきましょう。
誰が来訪したかというのを企業として把握できる体制・システムを整備しておき、感染者が発生した場合には、取引先と相互に連携し、感染拡大を防ぐようにすることも大事です。

従業員向けの感染予防策

企業として、従業員の感染リスクを減らすための基本的な対策をいくつか紹介します。

  • ハイリスク者への就業上の配慮
  • 感染者、濃厚接触者となった場合の仕事復帰の基準を決めて周知
  • 事務所やオフィスのソーシャルディスタンスの確保
  • 食堂・休憩室・更衣室・喫煙室の整備
  • ドアを開放するなど換気の徹底
  • フリーアドレスを導入している場合は行動履歴を記録

それぞれ解説していきます。

1)ハイリスク者への就業上の配慮

新型コロナウイルス感染症に対して、重症化のリスク因子を持つ人を「ハイリスク者」と呼びます。このハイリスク者に対しては、感染予防のために就業上の配慮を行う必要があります。
産業衛生学会・日本渡航医学会の発表した「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(2021.5.28更新)」によると、重症化のリスク因子と考えられるのは次の通りです。

【重症化のリスク因子】

  • 65歳以上の高齢者
  • 悪性腫瘍
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 慢性腎臓病
  • 2型糖尿病
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 肥満(BMI30以上)
  • 喫煙
  • 固形臓器移植後の免疫不全

(評価中の要注意な基礎疾患など)

  • ステロイドや生物学的製剤の使用
  • HIV感染症(特にCD4<200/μL)
  • 妊婦

企業は、健康診断の結果を基にハイリスク者を把握することになりますが、入手できる情報には限りがあるため、従業員から申し出ができる環境を整えておくことが重要です。プライバシーに配慮し、職場での感染予防対策に限って利用されることを、あらかじめ伝えておきましょう。
その上で、ハイリスク者には次のような就業上の配慮を行います。

  • 通勤時の感染リスクを低減するための配慮(時差出勤や自家用車通勤など)を行う
  • 執務場所での感染リスク低減のため、在宅勤務や自宅待機措置を行う
  • 通院中の従業員に対しては、受診継続への配慮とフォローアップを行う
  • 希望による産業医や保健師との面接機会(オンライン可)を確保する
  • 不特定多数の者と接触する業務は回避させる
  • 換気の良い場所(空調や窓の近く)で業務を行わせる
  • 流行が拡大している地域への出張(国内、海外とも)は控えさせる
  • 母性健康管理措置による休暇取得支援助成金を活用し有給休暇制度を整備する

休暇取得支援助成金は、新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師や助産師の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性従業員に対し、有給の休暇(年次有給休暇を覗く)を取得させた企業に対して助成金が支給されるものです。

(参考)厚生労働省「休暇取得支援助成金

2)感染者、濃厚接触者となった場合の仕事復帰の基準を決めて周知

従業員や、従業員の同居家族の中で罹患者が発生したとき、企業や周辺地域で感染が拡大しないためにも、感染者、濃厚接触者に該当した場合の出社の基準などを決めておきましょう。
職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(2021.5.28更新)」では、次のような出社基準の目安を設けています。

3)事務所やオフィスのソーシャルディスタンスの確保

執務中は人との間隔は2メートル以上に保ち、マスクを着用することを必須とします。距離の確保が困難な場所では、アクリル板を設置するなどします。
また、執務できるエリア・フロアを限定したり、事務所やオフィスへの入り口と出口を分けたりするなど、人の動線を固定化・限定化することも、接触機会を減らし、万が一感染者が出た場合の接触者のトレースにも有効です。
また、オンライン会議を積極的に活用するなど、対面の機会を減らすなど業務の中でできることを社員間で話し合い、実践するとよいでしょう。

4)食堂・休憩室・更衣室・喫煙室の整備

社員食堂は座席数を削減するなどします。食事をする際には、必ずマスクを外す必要があります。せっかくの休憩のタイミングではありますが、周囲との会話を極力避け、黙って食事をすることが推奨されます。
また、食事をする前には必ず、手洗いや手指消毒をするようにしましょう。
休憩室や更衣室、喫煙室では居場所・環境が変わることで、つい気持ちが緩み、マスクを外して談笑などをしてしまいがちです。休憩ができる場を確保することは大事ですが、極力、会話を避けるよう促しておきましょう。
また、喫煙室も、必ずマスクを外す場面があります。喫煙室を閉鎖するか、皆で禁煙にチャレンジするなど、利用しない方向で従業員の理解を得ます。利用する場合でも、1回に利用できる人数や時間を決めたり、開放空間へ移動させたりといったことも検討しましょう。

5)ドアを開放するなど換気の徹底

事務所やオフィスの温度や湿度を適切に維持しながら、窓の開放による自然換気が有効です。換気は30分に1回以上行い、数分間ほど窓を全開にすることが望ましいとされます。
空気の流れを作るために、複数の窓があれば2方向の壁の窓を開放し、窓が1つの場合はドアを開けておきます。

6)フリーアドレスを導入している場合は行動履歴を記録

個人専用のデスクがなく、自由に着席場所を選んで仕事をする「フリーアドレス」を導入している場合、人と人との間隔は確保しやすいものの、感染者が発生した際には接触者のトレースが難しくなる恐れがあります。そのため、従業員に対して、使用したデスクや立ち寄った場所を記録したり、共用のデスクや椅子、電話機などを使用前後に各自で消毒したりすることを促しましょう。

感染の疑いがある従業員に企業が対応すべきこと

出社前に熱や咳があったり、職場で仕事中に体調が悪くなったりした従業員に対しては、「出社させない」「帰宅させる」といった対応が必要になります。
その上で、従業員には、「かかりつけ医・最寄りの医療機関」もしくは「自治体が設置する新型コロナウイルス受診相談窓口等」に相談し、新型コロナウイルスの検査を受けるように勧めましょう。
ただし、検査結果が陰性で、医師により新型コロナウイルス感染症が否定された場合でも、「偽陰性」の可能性もあります。「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(2021.5.28更新)」によると、症状の消失から少なくとも72時間が経過している状態を確認して、職場復帰させることが望ましいとされます。

なお、新型コロナウイルスの検査を受けていない(医療機関を受診していない、受診したが検査を受けてない)場合、職場復帰には次の条件を全て満たす必要があります。

従業員の感染が発見された場合に必要なこと

1)保健所との連携

事業所内で感染者が発生した場合には、管轄の保健所の指示を受けた上で対応することが重要です。ただ、保健所が逼迫し、指示がなかなか降りてこない場合もあるので、あらかじめ次のようなルールを決めておくとよいでしょう。

  • 保健所との連絡対応者となる担当者をあらかじめ決めておく
  • フロアや作業場の見取り図(座席の配置など)、職場内外における接触者(感染者の発症前2日からの、会議同席者、ランチや会食などを共にした者、電車や車などに長時間同乗した者、その際の着席位置やマスク着用状況など)の情報を準備しておく

2)事務所やオフィスでの一時的な業務停止および消毒

事務所やオフィスで複数人の感染者が発見された場合、一時的に閉鎖する必要性があります。その上で、保健所の指示に従い、消毒を実施することになります。
保健所の指示がなかなか降りてこない場合には、速やかに感染者が利用した場所、最後に利用してから3日以内の場所を消毒することが望ましいでしょう。消毒の範囲としては、本人が利用した場所の半径2メートルの区域が目安です。

3)濃厚接触者のリストアップ、健康観察

従業員が濃厚接触者になった場合、事業者は従業員の氏名や連絡先、職場座席表、行動履歴、会議や会食の同席者などを保健所に提供します。
また、保健所の指示がなかなか降りてこない場合があるので、事業者の責任で濃厚接触者に相当する従業員を特定し、自宅待機をさせる必要があります。
職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(2021.5.28更新)」によると、事業所(注)における濃厚接触者の定義は次の通りです。

(注)医療機関・高齢者施設等は除きます。

  • 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
  • 手で触れることができる距離(目安は1メートル)で、必要な感染予防策なしで、患者(確定例)と15分以上の接触があった者

その上で、全ての濃厚接触者に検査(初期スクリーニング)が行われます。検査結果が陰性だった場合でも、前述したように、14日間の健康観察が指示されます

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年8月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者:佐藤乃理子 産業医・労働衛生コンサルタント

佐藤先生

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究に当たった。2010年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、2013年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。2015年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。2020年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルの在り方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の代表取締役を務める。

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