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【産業医監修】ラインケアとは? 目的と必要性、メリットと組織の取り組み方を解説

社員を大切にしたい 2021年10月5日

ラインケアとは?

ラインケアとは、

チームメンバーと日常的に接する管理監督者(職場の管理職)が、心の健康に関して職場環境の改善に取り組んだり、チームメンバーの相談対応を実施したりすること

です。
必要であれば、産業医など専門家につなげたり、ストレスの原因を取り除く対策に着手したりすることもあります。

厚生労働省は、2006年に策定(2015年改正)した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中で、事業者に対して、労働者のメンタルヘルスケアを目的とした「心の健康づくり計画」を作成・実施することを求めています。
この計画を実施するためには、「4つのケア」が重要とされ、中でも職場の環境調整を実行するためのラインケアは、大きな役割を担うと位置付けられています。

厚生労働省が重視する「4つのケア」

厚生労働省は、次の4つのケアが適切に実施されるよう、事業場内の関係者が相互に連携することが、職場のメンタルヘルスケアに効果的としています。

  1. セルフケア
  2. ラインケア
  3. 事業場内産業保健スタッフによるケア
  4. 事業場外資源によるケア

それぞれ解説します。

1)セルフケア

労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減、あるいはそれに対応することです。
年に1度実施されるストレスチェックの結果から、自身のストレスの状況を把握し、事業場内の産業保健スタッフや事業場外資源による支援を受けることが推奨されています。
事業者は、労働者がこのようなセルフケアが行えるように、教育研修や情報提供などの支援をすることが重要です。
また、管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者はセルフケアの対象として、管理監督者も含める必要があります。

2)ラインケア

ラインケアは、経営者や管理監督者が中心となり、職場の環境の整備を行ったり、職場のスタッフの相談を受けたりすることです。
事業者は、労働者のメンタル不調が疑われた場合には、事業場内の産業保健スタッフにサポートを依頼できる体制にすることが重要です。

3)事業場内産業保健スタッフによるケア

産業医や産業保健師など、事業場内に所属する医療専門職や衛生管理者、産業カウンセラー、メンタルヘルス推進担当者などにより実施されるケアのことです。
事業場内産業保健スタッフには、従業員自身や管理監督者からの相談を受け付けるだけではなく、セルフケア、ラインケアを実行できるようにセミナーを開催するなどして、従業員へ情報提供を行うことなども求められます。

4)事業場外資源によるケア

事業場外資源とは、医療機関(精神科医や心理カウンセラーなど)やEAP(社員支援プログラム)などを指します。
セルフケアの一環としての保健指導やラインケアのセミナーの開催などをしてくれます。

ラインケア実施のための準備

ラインケアで職場環境の改善を実施していくためには、経営者と管理監督者が協力し、次の5つのステップで実行していくことが効果的といわれます。

  1. 職場環境の評価
  2. 職場環境のための組織づくり
  3. 改善計画の立案
  4. 対策の実施
  5. 改善の効果評価

それぞれ解説します。

1)職場環境の評価

業種により職場環境はさまざまであるため、どういった環境が正しいとは一概に言えません。そこで、評価をする際の指標として「ストレスチェックの集団分析」が役立ちます。
これは、ストレスチェックの結果を職場や部署単位で分析することで、ストレスを感じる労働者が多い部署を明らかにし、業務内容や労働時間などと併せて評価する手法です。
ストレスチェック制度において、ストレスチェックの集団分析と、これを活用した職場環境改善は努力義務となっています。集団分析は、職場環境の改善を実行した後の指標にもなるので、ぜひ取り組んでみましょう。

■厚生労働省「これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引~」■
https://www.mhlw.go.jp/content/000680306.pdf

2)職場環境のための組織づくり

職場環境改善の推進のためには、職場全体の協力が不可欠です。経営者はそのリーダーシップを取ることが重要です。
そこで、従業員に向けて、これからメンタルヘルス対策のための職場環境改善を実行すること、そのための提案を従業員から受け入れることなどを宣言しましょう。
その上で、総務や人事担当者が中心となり、産業保健スタッフの協力を得ながら実行組織を整備します。

3)改善計画の立案

「心の健康づくり計画」を立案します。その際に盛り込む事項としては、前述したように経営者がメンタルヘルスケアを推進していくことを表明し、体制を整備すること以外に、次のようなものです。

  • 事業場における問題点の把握およびメンタルヘルスケアの実施に関すること
  • メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保および事業場外資源の活用に関すること
  • 従業員の健康情報の保護に関すること
  • 「心の健康づくり計画」の実施状況の評価および計画の見直しに関すること
  • その他従業員の心の健康づくりに必要な措置に関すること

なお、「心の健康づくり計画」の策定のために必要な個人情報の保護の規定などは、安全衛生委員会で検討する必要があります。

4)対策の実施

「心の健康づくり計画」を実施し、進捗状況を確認します。

5)改善の効果評価

再度、現状調査を行い、改善点を確認し、必要に応じて見直します。

進捗状況は、職場の安全衛生委員会で共有し、従業員も情報にアクセスできるようにするとよいでしょう。効果評価の際に安全衛生委員会や労働者から、職場改善のアイデアが出てくることが期待できます。

ラインケアの具体的な取り組み

では、実際に管理監督者がラインケアを実施していくに当たり、具体的にどのような点に気を付け、どのような取り組みをしていくべきなのかを見ていきましょう。

1)メンタル不調の兆候発見

従業員のメンタル不調の兆候は、次のような「以前と違う」部分を発見するようにします。

  • 当日、突然の遅刻や早退、欠勤が増える
  • 業務量に比べて、時間外労働が多い(業務効率が低下している)
  • 服装が乱れてきた、不潔になった

いずれも、「以前と比較して」上記のようなことが見られる場合は、メンタル不調を伴っているケースがあるので、管理監督者は気を付けてその従業員を見守る必要があります。

2)医療が必要なメンタルヘルス不調の見極め

上記のようなことが認められた場合、管理監督者は従業員に「業務に影響が出ていること」を伝える必要があります。
一方で、病気であるか否かを判断することは、管理監督者の役割ではないため、「体調不良がある場合には受診をしてほしい」などと伝えるようにします。
産業医や産業保健スタッフが事業場内にいる場合には、当該従業員と面談を実施してもらいます。産業医や産業保健スタッフに、「就労が可能な健康状態であるかどうか」を判断してもらい、必要に応じて受診を促してもらいます。

3)部下からの相談への対応

日ごろから管理監督者は、部下と日常的な相談に対応できるように努めなければなりません。相談しやすいような環境を整えましょう。
長時間労働が続いている部下、大きなプロジェクトを任せている部下などには積極的に声をかけ、心理的負担が重くなっていないかを確認する必要があります。
部下が話すときには「話を聞く(傾聴)」を心掛け、仕事の繁忙の見通しなどを伝えます。先の見通しが立つことで、ストレスが軽減されることも期待できます。

4)職場環境の改善を通じたストレス軽減

職場環境(照明、温度、湿度など)の改善により、ストレスを軽減することができます。

■オフィス内の安全衛生は大丈夫? チェックポイントを学ぼう■
https://www.ganbarusite-daido.jp/report/personnel/bp300030/

また、仕事の要求度に合わせて裁量を与えることで、ストレスが軽減できるともいわれています。新しいプロジェクトを任せる際には、報告のルールを決め、ある程度のやり方は担当者に任せるなど、裁量を大きくしていくことも効果的といえます。

5)一時休職した部下の職場復帰への支援

休職をした部下に対して、「きちんと仕事をしてほしい」との思いから、その扱いに抵抗を感じる管理監督者もいるかもしれません。しかし、しばらく休んでいた人に今までの業務の質、量を求めることは困難です。
復職後、一定の期間は業務量や業務時間にある程度の配慮を認め、仕事に慣れる期間を設けることも必要です。本人の健康面については主治医や産業医に確認をしてもらい、徐々に通常業務に戻れるよう検討していくことが重要です。

ここまで紹介したラインケアの取り組みを、いきなり管理監督者に実行してもらうのは難しいかもしれません。そこで、企業としてラインケア研修を取り入れるのも一策です。

管理監督者は、部下の業務の管理と並行して、メンタルヘルスの管理も求められます。心身に不安があると思われる部下に気を取られ、業務全体へ影響が出てしまうこともあるでしょう。また、管理監督者自身が、メンタルヘルス不調になることもあり得ます。

そうした場合は、部下の健康面のサポートは専門家に任せることで、管理監督者の負担を軽減することが期待できます。事業場内の産業保健スタッフや外部のEAPなどを活用し、健康面のサポートができるようにするとよいでしょう。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年9月28日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

執筆者
佐藤 乃理子 産業医・労働衛生コンサルタント

佐藤先生

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究に当たった。2010年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、2013年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。2020年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の代表取締役を務める。

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